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逃げ惑う者

というわけで。

「やって来たのはいいんだが」

既に敵の本拠地に居るようなものなので、気を引き締めて大きく一歩を踏み出した。

中には明かりがあった。それでも薄暗い長い廊下を一人で歩く。似たような場所は幾つか知ってはいるが、あの当時は確か・・・・・。

「参加者の方ですか?」

「ええ」

「では、二階にどうぞ。右端の部屋です」

「・・・どうも」

階段を上がってから、下をさり気なく見る。見えるのは階段と近くの建物の一部。それと、馬車ぐらいだった。


「時間になりましたので、話を始めさせて頂きます」

台の前に立っている講師役がそんな前置きをした。どうやら本題に移るらしい。

眼鏡を掛けていてどこか中性的に思える顔立ちの人だ。これでスーツでも着ていたなら会社員に見えたかも知れない。

「この場所が発見されたのは薔薇の女王の時代であったとされています。当時はまだ神は居らず、ここもそれほど重要視されてはいませんでした。しかし、それも神が来るまでのことであり─────。」


ざっくりとまとめてみると、まず薔薇の女王と呼ばれる人物のいた時代があった。その時代にある日、アリスと呼ばれるものが後からやって来た。そしてその彼女のおかげで人々は様々なことに気付かされた、と。こんなところか?

そこからはこの世界の歴史とは関係のなさそうな突拍子もない話になっていった。ほとんどが後からの創作だと思えるような内容ばかりだった。


話は夜まで続いた。外はすっかり暗くなってしまった。

「よければ泊まっていきますか?」

最初からそのつもりだっただろうに、申し訳なさそうに言わないで欲しい。

「いえ、この後も予定がありますので」

だからこちらも作り笑顔で対応した。

ここまで長居するつもりはなかったんだけどな。今後の予定や晩御飯に誘われても先客がいるからとのらりくらりとかわし続けてやっと人が離れた。

「・・・。とりあえず、移動するか」

廊下を素早く移動し、宿泊者達の荷物の置かれた部屋に入る。


別に何かを取りに来たわけではない。この部屋の中を通らなければ外に出ることが出来ないだけだ。

部屋の中には荷物以外、これといった物は置かれていない。机などの最低限の物しかないようだ。

「人は居ない、か?」

周囲に人の気配はなさそうだ。

出入り口付近にも見張りすらいない。これは油断からなのか、それともわざとなのか。そう考えた自分自身に苦笑する。

「まずはここを出よう」


罠らしい物もなくあっさりと外に出られた。

外に出たのはいいが、街にあの手の輩が居ないとは言えない。念の為に人混みに紛れてから安全そうな店に足を運んだ。そこで出会ったのは、なんと。


「あらやだ。久しぶりじゃない?」

オネエなあの人(?)だった。マッチョなリザードマンなので何というか、何度会ってもギャップが凄い。

「すみません。ちょっと匿ってもらえませんか」

「何があったの?」

「あはは。その、面倒事に巻き込まれまして」

「彼は一緒じゃないのね」

こちらを見て何かに納得した様子で頷かれる。

「こっちよ」

手を引かれてバックヤードに連れ込まれた。

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