相対する男
7日後、第7隊に届いたのは砂漠都市モラモラのエリオ信者の討伐または捕縛であった。
「ミリミリ副隊長がいるのに俺の出番ありますか? 隊長」
茶髪の彼も第7隊所属の魔導士ヌリオ。熟練魔法は『殺気探知』つまり、これから暴力を行う人間を特定できる。
「安心しろ、ミリミリの千里眼とは違い、お前の魔法は事件を未然に防げる。今回の人の多い都市での任務に最適だ」
「流石隊長! 俺の良い所をちゃんと分かってる!」
すりすりとメルの腕に抱きつくヌリオ。冗談をベラベラ吐く不純な男だ。
「そういう所も良い所だよお前は」
と、話しているとヌリオの顔が固まる。突如として、野生動物に遭遇した時のようだった。
「とんでもない......とんでもない殺気です! ここから北に300mぐらい先です!」
早速現れた、少し遠いが俺の大炎魔法なら空中飛行ですぐ到着できる。
「任せろ、そいつの詳細を教えてくれヌリ」
(途端に世界が白くなる、これは前も経験した。衝撃で脳が混乱している状況だ)
(なんの衝撃だ、一体俺らに何が、ヌリオは無事か、アイツは身体強化魔法をほとんど熟練していない)
メルは目が覚める。
(爆発だ、この前の信者による自爆か!? 街中にいた俺たちは市民と一緒に巻き込まれたのか...)
「ヌリオ......ヌリオ!!
「大丈夫です隊長、足折れただけっすよ」
「今すぐ治癒魔法を」
ヌリオはメルの足を掴み、指を北へ向けた。
「俺よりもアイツを! あの殺気のデカさ、奴が爆発させました!」
(奴が爆発......まさか)
「遠隔爆発魔法...いや違う、魔道具による遠隔爆発か...」
(何故ヌリオの殺気探知に先ほどの爆発が探知できなかったのか、それは魔道具による遠隔の爆破だから、爆発系魔道具を自爆した本人さえ持ってたなんて知らなかったからだ。だから殺気は探知できなかった。逆に遠隔で爆破を起動した奴が、そいつの殺気がヌリオの探知に引っかかったんだ)
「信者にしろ、一般人にしろ、やり方が外道すぎるぞ! エリオ信者!」
街は突如として混沌へ、そして爆発の嵐に巻き込まれた。人々は泣き叫び震え怪我を抑えて悶え苦しむ。
「俺にはそろそろウメさんが来る! 治癒魔法はウメさんがするから! 早くぶっ飛ばしてください隊長!」
「ああ、生き残れよヌリオ...!『フレイア』!」
空から街を見下ろすとよりその悲惨さを理解できる、これが英雄の目的...だとはメルは到底思えない。
「ふざけるな...やはり奴らはアイツと同じ人殺しだ」
何かがメルの顔を掠めた。ポタポタと血が垂れる。何かが地上から飛んできたのだ。その飛んでくる何かを避けつつメルは目的地に辿り着く。ヌリオの情報通りの男を1人見つけた。
英雄エリオルと同じ、純白の鎧を纏っている黒髪の若者だ。
「お前だな。見た目でわかるぞ、人殺し」
「知ってるよ、君エリオル•テルデールの弟だろ」
「だからどうした。俺はアイツを身内とは思わん。お前のその腐った信仰心もすぐに潰す」
男からは闘争心が見えた。メルの言葉に不快感を覚えたのではなく、むしろ彼とエリオルの血縁関係に感動していた。
「僕にとっては最高だ、エリオル•テルデールと戦えるようなものだ」
距離をを少しずつ縮める。
「戦いじゃない、処刑だ」
「英雄を見せてくれよ! 処刑人!」
両者の魔法、大炎魔法と大氷魔法がぶつかる時、お互いの剣からは水蒸気が溢れ出した。




