手伝いたい副隊長
『隊長はどこか焦っている』
ミリミリは思っていた。彼女自身、メル隊長に不満感は無い。しかし彼はずっと精神を削っている気がする。
メルが戻ってくる事を確認すると、彼女は自分の不安そうな顔を直していつも通りに接した。
「すまないミリミリ、エリオ信者を捕えられず自害させてしまった」
「大丈夫ですよ隊長、けれどエリオ信者の工作によってこの街は召喚獣ばかりです」
彼は手を強く握り、呼吸を乱す。そしてすぐに手を広げて炎を噴出し再び空を舞う。
「召喚獣なら、手加減なしでいけるな」
その日、第7隊は主要都市バルギルの異教徒反乱を沈めた。
エリオ信者、彼らは英雄を信仰し、その目的を代わりに果たそうとしている。その目的は不明、捕えて尋問をすれば自害を選択する異常な教徒。その精神性に
誰かしらの洗脳ではないかと言われているが真実は闇の中だ。
「それを解くのが俺たち第7隊の命令だ」
「だから隊長は第7隊を希望したんですよね」
魔導士団第7隊支部、要塞ジェリアス。そこを彼らは活動拠点としている。
月光が注ぐ隊長室でミリミリは問う。
「隊長は、英雄の反乱の理由はなんだと思いますか? 英雄はどうして英雄を辞めてまで村を焼き滅ぼしたのか」
メルはより鋭い目つきで彼女を見つめる、彼女の目は単なる冷やかしではなく、真実を知るために覚悟を持つ目だった。
「お前なら話してもいいかもな」
内心大喜びな思いを抑えて、真剣に質問をする。何故、英雄は主要都市ではなく小さな村を消したのか。
「あの村は、というより村長だ。奴が鍵を持っていたんだ」
「鍵..?」
幼少期のズキズキする記憶を掘り起こし、エリオルが鍵を村長から奪い取っていたことを思い出す。
「ただの殺戮じゃない。アイツの行動には正義があったんだ。それが正しい行動かどうかは分からない。俺はそれが知りたい」
彼の人生には『納得』が欲しかった。納得できる理由、原因、流れ。それがもしエリオルにあるなら、教えて欲しかった。
彼は第1隊の副隊長により処刑された。処刑といってもそれは魔法による殺し合いの末であった。
魔力を限界まで使い、魔法の限界硬直に到達したエリオル。副隊長により捕えられたのち、舌を噛み切って自害した。
「隊長、私は英雄エリオルに魔物から街を救われました。母や父も無事で、私も彼に感謝し憧れていた」
メルは安心したと同時に心を閉ざす。
「お前も英雄が大好きなんだな。良いことだよ憧れは」
「でも第7隊への入隊理由は違います」
「そうか、いったいなんだ?」
「隊長が困っていたからです」
は、という声が響く。月光はメルの影を広げるが、ミリミリの顔をより明るくする。
「昔の隊長はいつも苦しそうでした。どれだけ魔法を極めても、褒められても、いつも考え事をしてた。でもエリオ信者討伐が目的の第7隊が出来てから、生き生きとしてた。理由は悲しいかもしれないけれど、隊長は真実を知るために頑張ってる」
「...確かに俺は真実を知りたい、でもお前が手伝わなくても」
「困った人を助けるのが魔導士だからですよ、隊長」
純粋な声だった。
雲が消えて、月明かりがメルを照らす。
「そうか、助けてくれてありがとうな」




