第16話 【結④】
〇
斬り、刺し、抉り、裂いた。
断ち、払い、穿ち、削いだ。
叩き、殴り、打ち、折った。
蹴り、拉ぎ、捻り、割った。
それでも、無限に敵は湧いてくる。
ずるり、と。
足を、倒した敵の溢れる体液が掬った。滑る。
ああ……。もう少し、ナイファンチを練り上げておけばよかった。
思考の向こうで、泥濘に足を取られながら多勢と戦う格闘術の型を思い出し、そんな思いがよぎる。
――隙をつくように掴みかかる敵を、魔力で強化した肉体で、逆に握り潰しながら。
焼き、焦がし、溶かし、爆ぜさせた。
吹き、巻き、飛ばし、撃ち抜いた。
崩し、落とし、潰し、突き上げた。
流し、蝕み、攫い、凍てつかせた。
それでも、視界の端から奥から、敵が出る。
全身を四方八方から、複数の動く死体に絡めとられる。
人の四肢だけでなく、蛇の胴体か、なにか長く太い物も巻き付いている。
だが。
「――『炎熱の突進』!」
アタシの全身。四肢も胴体も含めて、高熱の火炎が身体を包む。
そのままの勢いで、駆けるより速く、死体のまとまった集団へ突っ込む。
まあどこを向いても敵、敵、敵なのだが、その中でもなるべく密度の高い場所へ。
ぶつかり、周囲が爆炎で消し飛んだ後、一瞬遅れて、アタシは立ちあがる。
――体にまとわりつく、炭化した敵を振り払いながら。
はぁはぁ、と荒い息をつく。
ショートソードはとうに折れ、今握っているのは、敵から奪った錆びたロングソードだ。それも何本目かはわからない。
敵の身体を叩き切った。
その片腕が、ごろん、と目の前に落ちたのをこれ幸いと拾い上げる。
――力ある言葉とともに、それを投げ槍に見立て、突き立てるように投げる。
「――『古代都市の投擲』!」
投げられた腕は、そのまま、3体の敵をまとめて串刺しにした。
本来は杖や槍、整った長柄の武装を投げて貫通力を増す呪文だが、死体にも使えるとは、今日まで知らなかった。
左腕は今、思う様に動かない。無理すれば、かかげるくらいはできるけれど。
乱戦の中、肩口を、四つ足の獣であろう死体に嚙みつかれた。
振りほどいたものの、傷口から毒液のようなものが侵食してきたため、自ら焼いた。
脇腹も同様。臓腑まではいっていないが、敵に掴まれた箇所が、毒性か酸性の何かに浸食されたため、焼いた箇所が抉れている。
……治癒魔法を、もっと素早く使えないと、実戦レベルでは使い物にならない。
今更ながらに後悔する。
「聖女の『復活』より従軍看護婦の『快癒』、というのはこういう意味か……」
実家の口伝を呟く。
経験と実践に裏打ちされたものに、ローゼンヴァルトでは重きを置く。
身を以ってそれを知らされるとは、つくづく先人の知恵と言うものは。
足を半ば引きずるようにして、大聖堂の前に設置した石壁の前に戻る。足も何度か同様に焼いていて、機動力はほとんど死んでいる。
――だが、ここを守ればいいのだ。半ばもたれかかるようにして、身体を石壁に預けた。
「ぐあっ!」
死角から、頭部に衝撃。
カラスかなにか、中型の鳥の死骸が襲って来ていた。堅い感触の攻撃は、足か、くちばしだろう。
後ろにも何羽か、同種のそれが見える。
「――『つららの蹂躙』!」
唱えるのに合わせて、空中から無数の円錐状に尖った氷柱が現れ、鳥の死骸たちを突き刺した。
死骸たちの速度は、飛ぶのがおそらくは生前の姿よりずっと遅い。飛ぶのにも何らかの魔法的な作用があるのだろう。
物理的な作用だけでは、とても飛んでいられない見た目と速度だった。
夜明けから始まった戦闘だったが、今や太陽は、谷の中から見上げても、アタシの斜め前上方に高くあった。それだけの時間が経っていた。
無限と思われた死体や死骸も、いつしか勢いがずっと減っている。
攻撃もまばらとなっている。
『返り鳥』の力も、そろそろ打ち止めと言ったところか。
フェルナー?
時々思い出したように、手に持った高価そうな杖から、基礎的な魔法を何度も掘越しに飛ばしてきていた。
目の端で捉えた瞬間、片手間で相殺できる程度の、問題にならないレベルだったので、放置している。
高価な杖を使ってもあのレベルとは、『完全なる秩序』の支部長のレベルも知れたものだ。契約の器の大きさだけ見て、他の実力はどうでもいいらしい。
「――『雷熱の疾走』!」
もう何度目かわからないほど唱えた雷撃で、地上の敵をまとめて薙ぎ払う。
乱戦を幾度も終えて、さすがに疲労が限界だ。
はぁはぁ、と何度も荒い息をつく。
守り切った。――と思っても良いレベルの数の敵しか残っていない。
周り、すぐに寄ってこれる位置には敵がいないことを確認し、――ほんの一瞬、目を閉じ、休息する。
「――『再生』」
自己治癒魔法をかける。気休めだ。焼いた大きな傷をふさぐには時間が足りないし、小さな傷が回復していくだけだ。
だが、フェルナーと『返り鳥』が最後の一押しをかけてくるなら、この後だろう。
少しでも戦闘力を取り戻さねば。
目を閉じても、正面に感じる、昇りきったまぶしい太陽。それを背にフェルナーが攻撃をかけてくるならば……。
暗い視界の中、思考の奥へ一瞬よぎる違和感。
――正面?
先ほどまで太陽の位置は斜め前だった。そんな早く、時間が経つわけがない。
違和感に、嫌な胸騒ぎを覚えながら、ゆっくりと目を開ける。
「……どうして」
目の前の光景に、思わず、疑問が口をついた。
「……どうして、あなたがそこにいるの?」
黄金竜が、上空にいた。
〇
――会いたいと願わなかった日はない。
――いてくれれば、と思わなかった夕はない。
――夢に見なかった夜はない。
――呼びかければ応えるのでは、と宝石を見つめなかった朝はない。
失って、二度と会えないと思ったもの。
それでも会いたいと思ったもの。
生前の姿ではない。
鱗は1枚も無かった。
あの誇り高い黄金の装いどころか、皮膚さえも無く、赤黒く濡れた肉がむき出しのまま、竜の形を辛うじて保っていた。目も無く、黒くくぼんで落ちた眼窩。
まるで、あの日、無惨なひき肉にされたものを、無理に竜の姿としたかのような醜い姿。
一瞬、強く風が吹いた。
「ギャオオオォォォオオオン!!!」
苦しそうに、生前にはほとんど聞かなかった声で、悲鳴のように竜が鳴く。むき出しの神経に触る風が痛いとでも言うように。
だが、その全身を包むオーラだけは違う。
生前と変わらぬ、見まがうことなき輝く黄金。
――黄金竜だ。そう思うしかなかった。
「魂の友なのだろう? こうして引き会わせてやったのだ。感謝するのだな」
黄金竜のすぐそばに、『返り鳥』とともに浮かびながら、フェルナーが言う。
その気色悪い声が、かろうじてアタシの理性をつなぎとめた。
そこにいるのはアタシの黄金竜ではない。
シンは言っていたではないか。『返り鳥』の力で帰ってきた存在。それはただ生前を模しただけのもの。
歪んで、もうそれではないと。
黄金竜の隣に浮かぶフェルナー、それに心を乱されながら、必死に思考を組み立てる。
竜とともに戦う騎士が出てくる英雄譚。幼い頃は大好きだった。
将来は黄金竜とともに、輝く戦場へ。そんな未来を夢見た日もある。
だが、現実は。
「……どうして、そんな男とともにあるの?」
呟くように言い、そうではないと必死に打ち消す。
目の前が、迷って出たかつての友の醜態ならば、アタシが介錯するのが筋ではないか。
乱れる心で魔力を集め、力ある言葉とともに解き放ち、魔法とする。
「――『裂光の焔』!」
アタシの前方の空間から、高熱の光線が、真っ直ぐ黄金竜へ伸びる。
――命はもう無い。そう言い聞かせるように放った魔法が、その胸へ届く寸前。
何も無いはずの赤黒い肉の上に、黄金の鱗が一瞬で浮かび上がった。
ぱきん、と。
甲高い硬質な音を立て、魔法は弾かれる。
実体ではない。だが、間違いなくそれは、生前に同じ黄金竜の護りだった。
息を呑む。
確かめるように、石壁に体を預けたまま、アタシは呪文を連打する。
「――『つららの蹂躙』!」
氷柱も。
「――『風撃の槍斧』!」
風刃も。
「――『雷光の閃炎』!」
雷炎も。
アタシの放つ全てが黄金竜へ届く直前に、幻の鱗が浮かび、弾かれる。
どこへ撃っても……このまま魔法攻撃を飛ばし続ければ、そのまま鱗が全身を覆って、元の黄金竜に戻るのではないかと、錯覚さえ覚える。
そう、錯覚なのだ。わかっていても、それにすがりたくなっている。
「グラファリエル……グラファリエルだ……」
呪文の合間、確かめるように呟く。
違う。もうかつての黄金竜ではない。
分かっているのに、アタシの身体と声が、次の呪文を紡ぎ出す。
「――『青空の顎』!」
何度も浮かび上がる鱗に、しがみつくように、あらゆる種類の呪文を唱え――そのことごとくが弾かれた。
と。
「サキ!!!」
もたれる、石壁の後ろから、くぐもった声が聞こえる。
「いるか!? そこにいるか?! 戻ったぞ! サキ!」
シンの声だ。報告を終えて、今、壁の向こうに。
――待たせやがって。
その声に、大声で返事をする。
「いる! 私はここだ! ……だ、だが」
なんと説明する。目の前にいる黄金竜を。
少しだけ、ほっとした声がする。
「そうか! ……よかった! この石壁を除けろ! すぐ助ける!」
「……ダメだ。来るな」
目の前の黄金竜は、正直、黄金竜と呼んではいけないくらいの醜い姿だ。見せたくない。これ以上誰にも見られたくない。
つまり、アタシの理性は、あれは黄金竜であり、黄金竜ではないと認識している。あの醜い姿は黄金竜であってはならないと。
震える声で、アタシは言った。
「グラファリエルが……グラファリエルがいるんだ」
「黄金竜が!? バカな! いるわけがないだろう!」
「でも……グラファリエルなんだ」
呆然と、上空にあるそれを見ながら、アタシは言う。
「言っただろう! そこに何がいるとしても、『返り鳥』の力でそう見えているだけだ! 歪んで、もうお前の竜ではないと! いいから、この壁を除けろ! オレがなんとかする!」
「ダメだ……。そこにいるんだ。在るんだよ」
そこに不完全とはいえ肉体がある。『返り鳥』の力では不完全かもしれない。だが、もっと高位の契約存在ならどうなのか? アタシの知らないものがどこかにあるかもしれない。
呟くように言った。
「……もう、失いたくない」
契約の力で黄金竜は失われた。それは、アタシの現在の力として。現在持つ最も強い力として。ならば、アタシがもっと力をつければどうなのか? この場にある黄金竜をそのまま保ち、アタシがもっと力をつければ、他の力が奪われ、黄金竜はそのままかもしれない。
「そこにいるのは、もう、お前を認識すらしない、まがい物だ! これを退かせ!」
シンの叫びが聞こえる。
認識。そうだ。試すように魔法で撃っていたが、アタシは呼びかけすらしていないじゃないか。
大声で空に向かって叫ぶ。
「グラファリエル! アタシだよ! サキだよ! わからないの!?」
それに応えるように。
「アオオオオオォォォォンンンン……」
黄金竜が吠えた。遠吠えのように。
「――届いた!? そうだよ、アタシなんだ……こっちへ……」
呼びかけるアタシの目に映ったのは。
吠えたままの大顎の周りに集まる光。集まる力。
ブレスを放つ前動作。
一瞬、無いはずの目と、黒くくぼんで落ちた眼窩がこちらを見た気がした。
カッ――!!
瞬間、竜の顎が光ったまま、その光がブレスとなって、アタシの全身と石壁を破壊せんと発射され――。
「くっ――『言霊破壊』!」
アタシが、反射で唱えた、飛び道具への障壁呪文が、ブレスのエネルギー体とぶつかり。
――万全なら、どんな魔法も飛び道具も防ぐはずの障壁は、あっさり割れるように砕かれた。
そのまま、黄金竜のブレスは、正面からまともに、アタシと後ろの石壁を、衝撃の中に叩きこんだ。
〇
「――――サキ! サキ!」
声が……聞こえる。
目を開けると、がれきの中、倒れたアタシを、シンが抱きかかえるようにしていた。
一瞬だが、意識が飛び、寝ていたらしい。
辺りを見る。砕かれた石壁。意識が飛んだのだから、そりゃそうだ。
『言霊破壊』は、本来、相手が使うであろう矢や魔法等の遠隔攻撃を想定し、それに合わせて詠唱を組み立てる。
他に攻撃役がいて、騎兵等で同時に突っ込む時などに初めて有効に使える魔法なので、使えたとして今は何の意味も無いし、そもそも無詠唱では効果が薄い。
生前の黄金竜のブレスなら、石壁のがれきどころか塵1つ残っていないだろう。威力がかなり落ちていたから、アタシはなんとか生きている。
やはりあれは黄金竜であって、黄金竜ではない。
「……づっ!」
呻く。革めいた上下は、ブスブスと音を立て、焦げている。
顔面も痛いし熱い。髪も焦げ、あちこち火傷のようになっているだろうか。
「サキ! 目を覚ましたか! よく耐えてくれた!」
泣きそうな顔で叫ぶシンの顔がうるさい。
と。
上空から声が降ってきた。
「――シン。戻ってきたか。……時間切れと言うわけだな」
力無い視界の中、上空の黄金竜の傍に、『返り鳥』とフェルナー。
ただ、呆然とアタシはそれを見つめる。
「こうなった以上、組織に私の居場所はない。力を集めるには便利な場所だった。惜しいが……潮時か」
「お前、逃げるつもりか!」
上空へ向けてシンが叫んだ。
「逃げる? ……いずれ再起の時を待つだけだ。だが――」
フェルナーの隣で、『返り鳥』の赤い輝きが増す。
主に応えるかのように。
「この支部は、廃棄してから行く。少しだけ腹も立っている――」
フェルナーがそう言うと、『返り鳥』の力を反映してか、こちらを向いた黄金竜が、再度大顎に力の光を溜めだした。
少しの間の後、――こちらへ向けてそれが放たれる。
「くっ!」
シンはアタシを抱き上げると、ブレスのエネルギー体を避け、跳んだ。
――ドドオオォォン!
着弾したブレスが、広場の地面に大穴をあけ、石つぶてや岩が飛んでくる。
シンは、アタシを抱き抱えるようにして、大きな背中でそれを全て受け止めた。
「ヴェルザキーナの身体は惜しいが……始末してから去るとしよう」
巻き上げられた砂煙の中、上から降ってくるフェルナーの独り言が、やけにはっきりと聞こえる。
その傍で、黄金竜が、もう何度目かの大顎に力の光を溜めだしている。
「くそ、位置が高すぎる。サキ、あれをなんとかする魔法はないのか?」
「――ある」
力無い声で、抱きかかえられながら、呟くように応える。
的が上空なのは好都合だ。建造物や人を気にせず、大きな魔法を打ち込めるのだから。
先ほどまでアタシが打ち込んでいた魔法は、上級ではあっても、竜を滅するには、不適切な魔法だった。
――全ては、アタシが黄金竜の姿を元に戻したいと、戻るのではないかと願ったため。
「……だが」
消したくない。失いたくない。
ともに戦場を駆ける未来を半ば夢見た竜。その夢もいつかその中に含んで鍛えた魔法。
その魔法を友である黄金竜に撃ち込むのか?
と。
――思考を中断させる衝撃と破壊音。ブレスがまた広場に大穴をあけた。
シンに守られながらも、その空気と地面を伝わる振動が、アタシの身体をまた骨まで震わせる。
「頼む! やってくれ! でないと……ここは終わりだ」
アタシを抱えて、走り、跳びながら、ブレスを必死に避けるシン。
その言葉はおそらく事実だ。
見れば、大聖堂を守っていた石壁だけではなく、大聖堂の壁や入り口も、ブレスの余波で大穴が開いている。
生前ほどの力ではないとはいえ、黄金竜をこのまま放置すれば……結果は目に見えている。
疲労と激痛が、アタシの思考を鈍らせる。
それでも、決断までの時間はない。
「あ……ああ……」
「お前の魂のともがら、その名残に、これ以上、誇りを汚させるつもりか!」
シンの一喝が、迷うアタシを無理やり駆り立て……。
――アタシは習い覚えた呪文を、何も決めきれず、迷いとともに詠唱した。
――そらの彼方に、其れは在る
星の彼方へ我は行く
此方と彼方を結びし道を
其方もいつか来るそこへ
誰もが還りある場所へ
全てが不変とあるもとへ
原理としては、墓地で使った浄化の魔法とほぼ同じ。
ただし、それが薄くすべての属性を重ねるのに対して、こちらはすべての属性を最大出力で重ねる。
精神世界だけでなく、物質をも浄化するように。
「――『創世の評決』」
瞬間、アタシの迷い、狙い定まらぬままに狙った場所。
黄金竜を中心に、周辺の空へ、球状に透明な闇が広がった。見えるがもうそこは周囲からは断絶された空間。
大きさにして、大聖堂よりもさらに一回りは広い空間。効果範囲はかなり絞って、それでもなお黄金竜を包むには十分すぎる。
地上で打つと、山脈を消し飛ばし、周りの大地をその中心へと巻き込みながら、周囲に甚大な影響をもたらし、大きな湖へと変えるそれ。
黄金竜の声も、フェルナーの声ももう聞こえない。
「……ありがとう」
行かないで。さよなら。消えないで。ごめんね。でもありがとう。またね。
それらの言葉全てを含むその挨拶に応えるように、一瞬、黄金竜が笑った気がして。
――透明な闇は、閉じるように、中心へ返り、そこにあった全てを空間ごと、無かったことにして、消滅した。
一瞬、上空へ、透明な闇が閉じた場所へひっぱられるような風と感覚が襲う。
そこにあったはずのものが空気ごと消え、そこへ閉じる空気が流れ込む。
びょう、と風が吹き、でもそれだけ。
「あ……あ……」
何もなくなった空を見つめたまま、意味を持たないアタシの声が、静寂の広場に響く。
『そらの彼方に、其れは在る』と始まる詠唱のくせに、もうその場には何もない。
見れば、広場にまだいくつか残っていたほかの死体たちも、『返り鳥』やその主とのつながりを断たれ、 さらさらと風に吹き散らされる灰のように消えていった。
「終わった……のか……?」
確かめるように、信じられないといった風で、呆然とシンが呟いた。
「う……あ……あああああああああ!!!…………あああぁぁぁぁ……!」
喪失と、混乱の中、アタシは慟哭し……。
――火傷の頬に流れる涙が、ズキズキ傷んだところまでは覚えている。
〇
エピローグ的な17話を追加して、第1章を起承転結で終わります。




