↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティアイ -転生平民魔術師の王城勤務-  作者: 栗木下
10:収穫祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

319/345

319:三日目 警備用闇人間

「さて、今日はワタシとヘルムス様が担当者ですね」

「ええ、その通りです。何も無いとは思いますが、何かあってもいいようには備えておきましょう」

 収穫祭三日目になった。

 今日のワタシとヘルムス様は王城内警備の責任者である。

 基本的には、兵士、騎士と言った、警備担当の者に任せるのだけれど、彼らでは対処できないような何かが起きた場合には、ワタシたちの出番になる。


「ところでミーメ嬢。昨晩は大丈夫でしたか? 城内の休息用の部屋を使ったのは初めてのはずですが」

「何も問題ありませんでした。侍女の方々がしっかりと整えてくれたので、もしかしたら家よりもぐっすりと眠れたかもしれないくらいです」

「それは良かったです」

 だからこそと言うべきか。

 実はヘルムス様とワタシは、昨晩、王城の中に用意された休息用の部屋で眠り、朝一から対処できるようにしていた。

 王城内には元から何部屋か夜間警備の責任者用の部屋があるので、そこを利用させてもらった形である。

 勿論、夕食や朝食も王城が用意してくれて……非常に美味しかった。

 なので、調子と言う意味では、本当に普段よりも良いくらいかもしれない。


「しかし、今日が終われば収穫祭も終わりですか……。あっという間でしたね」

「そうですね。でもヘルムス様。明日は明日で、片付けと言う意味で収穫祭なんですよ。なので、平民たちは明日も忙しくしていると思います」

「ああ。屋台にしろ、仮設の舞台にしろ、明日中には片さないといけませんか。なら、そうなるのも当然ですね。王城や貴族の家なら、予め担当を決めて、任せるだけですが」

 さて、今現在のヘルムス様とワタシだが、特に人が多くやってくるであろうエリア……画廊や研究発表の場を開門前に見回っている。

 前日中に怪しげな物が仕込まれていないかを念のために確認している形である。

 ただ、『闇』にも『魔力』にも引っ掛かる物はないので、何も無さそうだが。


「ああそうだ。これだけは一応しておきましょうか。潜め、闇人間」

 画廊に飾られているハンドレードの絵の前に来たワタシは、絵に右手をかざし、魔術を仕込む。


「ミーメ嬢。何をしたのですか?」

「この絵は特に人気だと聞いていますから。絵と壁の間にある闇に闇人間を仕込んでおきました。これで絵に触れる間際まで接近した何かがあれば、闇人間が現れて、自動で防いでくれます。一度だけですが」

「ほう。それは興味深いですね」

 ハンドレードの絵は、出来る限り多くの人が見れるように、そして、面倒事が起こらないようにと、腕を伸ばしても絵には触れないくらいの距離でロープ柵が敷かれている。

 闇人間はそのロープ柵を何かが乗り越えて、そのままでは絵に当たる、あるいは触れると言う時にだけ現れると、その身を挺して絵を守るようになっている。

 絵を盗むにしろ、イタズラを仕掛けるにしろ、その手の行動は突発的に起きるからこそ防ぎづらいのであって、最初の一撃さえ凌げれば、後は警備の人たちがどうとでもしてくれる事だろう。


 ちなみに、この闇人間は魔力や魔術にも反応するようにしてあるし、隠蔽を見破る力も持たせてあるので、天竜クラスのどうにもならないのが仕掛けてこない限りは、対処できるはずである。


「しかしミーメ嬢。そのような魔術があるのなら、他の美術品にも仕掛けておいた方が良いのでは? それと、昨日と一昨日には使わなかった理由も一応お願いします」

「前者は魔力の消費量的に難しいですね。魔力の一部を常に取られているような物なので。後者については、今日がワタシの責任だからこそです。こんな魔術を勝手に仕込むわけにはいきませんし、細かい移動や調節の時には解除しないといけませんが、遠くに居たら、その手の対応は出来ませんから」

「御尤もですね」

 ヘルムス様が周りの人たちに聞かせるように質問をしてくれたので、ワタシはそれに答える。

 細かい事ではあるけれど、こう言う細かい部分をしっかりとしておくことで、何か問題が起きた時に味方になってくれる人を増やせるのだとか。

 こう言う事に気づいて助けてくれるのだから、本当にヘルムス様には感謝しかない。


「では、ワタシたちは実験室の方に居ますので、何かあったら、連絡の人を寄越してください」

「かしこまりました。『闇軍の魔女』様」

 と言うわけで、開門前にしておくべき事はこれで完了。

 ワタシたちは、今日一日、何も無ければ籠もっている予定の部屋へと向かう。


「……」

「おや」

 その道中、トレガレー公爵家の連絡員っぽい方が、ヘルムス様に何か書類のような物を手渡し、去っていく。

 緊急の話なのか、ヘルムス様にしては珍しく、直ぐにその場で確認を始めていき……。


「ミーメ嬢」

「どうかしましたか? ヘルムス様」

 ワタシにも声をかけてきた。


「私たちが関わる可能性は低いですが、昨日の件で緊急の報告が二件ありました。一つは聖アンザンシ教会でミーメ嬢が見かけた貴族と思しき夫婦の乗った馬車について。どうやら、乗っていたのは現イトメント男爵とその妻だったようです。どうやら旅行中との事です」

「なるほど」

「まあ、こちらだけなら大した情報ではありませんね。精々がグレンストア公爵に情報を届けて、極めて軽い借りを作るくらいでしょう」

 なるほど、ワタシが発端になった件だから、ワタシも聞かせてもらえるのか。

 しかし、イトメント男爵の件は……それ単体だと、確かにどうでもいいかも。

 将来、排されると決まっている男爵なのだし。


「もう一つ、こちらの方がミーメ嬢にとっては重要かもしれません。昨日、貴族院でミーメ嬢が見かけたと思しき女子生徒、ロクリエ嬢が行方不明の様です」

「行方不明?」

「はい。グレンストア公爵家の王都屋敷に帰って来た形跡がなく、親しい友人たちや美術の教師たちも行方を知らず、なんなら、昨日目撃したのはミーメ嬢だけだったようです」

「……」

 うーん、どう反応した物か……。

 ロクリエ嬢の姿が認識できないのは、そう言う魔術を使っているから。

 第二属性に目覚めているのなら、ワタシ以外に感知出来ないのも分からなくもない。

 とりあえず、ヘルムス様の言う通り、一つ目の情報より重要なのは確かではある。


「無事なのかが不安になりますね。一つ目の情報と合わせると、両親が来たことで、何か思いつめたのかもしれないとか考えてしまいますので」

「同感です。ただ、私たちが何かできるかと言われれば……」

「何も出来る事はありませんね。精々が、王城にロクリエさんが現れた時、声をかけて事情を尋ねると共に落ち着かせる事くらいでしょうか」

「そうなるでしょう。結局はグレンストア公爵家、イトメント男爵家、貴族院の三者の話であり、私たちはロクリエ嬢との面識すら無い訳ですから。声をかけたところで、アチラも困惑するだけかもしれません」

 だが、出来る事は無い。

 そもそも、ワタシたちはこれから王城警備の責任者として、一日王城に詰めていないといけない訳だし。

 探しに行くとか、以ての外である。


「さて着きましたね」

「そうですね」

 そうこうしている内に実験室に到着。

 部屋の前には、既に室内への取次をするための侍女の人たちが、自分たちの待機スペースを作っていた。

 今日、実験室の中でやる事は、中断自体はそう難しくないのだが、秘匿はしっかりとしないといけないため、このように、部屋の中に働きかけていい人を限る措置になったのだ。


「では、ワタシたちは中に居ますので、何かあったら呼んでください。基本的には暇だと思いますが、どうかお願いしますね」

「かしこまりました。『闇軍の魔女』様、『船の魔術師』様」

「それではミーメ嬢」

「はい、ヘルムス様」

 では、ワタシは婚姻指輪の為の宝石を作るとしよう。

念のために。

ハンドレードの絵=ロクリエの絵 です。


余談ですが、ミーメは仮にこの絵が偽物だと分かっていても、本気で守ります。

それぐらいには出来が良く、価値があると認識していますので。

まあ、だからこそ、ロクリエにとっては、壊したくて仕方が無いのですが。


10/12誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう取り潰し決まってるのか、帰らなくていいって公爵、なんか仕組んだか?
 贋作もクローンも同類だしな同じに見える別個体を認識してしまえば別物にしかならんし、描かれた場所を匿名で知らせるだけで偽物か同じ技術を持った人間が描いたになりそうなものだけど。
>天竜クラスのどうにもならないのが仕掛けてこない限りは、対処できるはずである。 天竜「む、吾輩の鱗が使われておるな。では署名代わりに肉球スタンプでも押しておいてやろう」 >王城にロクリエさんが現れ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。