第675話 ノンビリした無人島の休日
近くの川で魔物の体液。主に果汁なんだろうけど体を洗うとさっぱりした感じになった。メルナの気分がよさそうに小さい滝から落ちる水で洗い流していた。
「いやぁ、近くに滝があってよかったですね」
「まったくなのじゃ。それにいい魔導書が手に入ったなのじゃしの」
「いや、俺が言いたいのは体がさっぱりして……怒りに任せてそのまま研究所いくとか」
謎の研究所を1時間ほど探索した俺らを出迎えてくれたスイカ侍はこの場所を教えてくれたのだ。
「トラップ類はスミレが解除した後なのじゃしな。別にいいじゃろ……細かい事をいちいちウルサイ奴なのじゃ。ハゲるなのじゃ」
「ハゲませんけど!!」
何て事を言うんだ。
俺の言葉なんて聞かずに、メルナは滝つぼ周辺に潜りこみはじめてる。
「まったくもう……まぁでも海も良いけど森の中にこんな綺麗な滝があるならこっちでもいいな。涼しいし」
俺も潜って水中でメルナを探す。
そのまま追いかけて手を握ると、怪訝な顔をしながらも手を握り返してくれた。
──
────
「おかえりなさい先生、クロウ君」
「うい」
「帰ったのじゃ。『転移の門』も確認したのじゃが魔力が不安定じゃの、何もなければ数日で戻るじゃろ」
「まっ俺達には別に時間なんて関係ないもんな」
それでいいのか? と思うけど。定職じゃないし冒険者崩れとはこの事だ。
「クロー兄さん達は自由すぎるからね。そんな事言わないで教師にでもなればいいのに、クロー兄さんがいれば大歓迎だよ」
「やだよ。メルナじゃあるまいし。それにクウガがいるだろ、俺よりも出来た人間だ」
「校長ねぇ……ボクは信頼はしてるけど信用はしてないけどね」
相変わらずクウガへの評価が低い。
まぁそれもこれも、俺がノラをクウガと無理やりくっつけようとしたのが原因らしいけど。
「…………言うてワラワも生徒は選ぶなのじゃ。あの学園で何度か臨時教師として教えたのじゃが話を聞いてるのは3割程度じゃったな」
あーやっぱりそんなもんか。
「メルナの場合。尻と乳がでかすぎるから生徒が集中しないもんな。その点ノラが先生の時なんて全員真面目に聞いてるだろ」
「さすがクロー兄さん。そうそう、ボクは胸もお尻も大きく無いからね生徒は全員話を聞くしか──うん。クロ―兄さん刺していいかな」
腹の横に激痛が走ってる。
みるとちゃんと魔石の短剣が刺さってる状態だ。
「刺してから言うんじゃない、刺してから」
「まだ魔石セットしてないから物理だけだよ。いいよね再生されるんだから」
「よくはない……」
いつの間にかメルナもアリシアも玄関前にいなく部屋でくつろいでいる。
俺が苦悶の表情を浮かべるとやっと短剣を抜いてくれた。
傷が修復されていくまで必死で抑えるとやっと回復した。
「ほら行くよ」
「うい……」
犬のように連れていかれる。
やっとソファーに座ると珈琲をだされてやっと一息だ。
「スミレやサクラは? まだ沈没船か?」
「海で泳いでるよ。沈没船には……ううん、沈没船そのものが何もなかったって……残念だったねー宝石でもあれば2人のお小遣いにするのに」
いやはや、小遣いにしては価値高すぎだろ。
沈没船に関しては何百年? 何千年? 前だったらそうだろうな。
深い所だったら埋まっているし、浅い所だったら流されてるだろう。
潜水艦とかそう言う船じゃないと中々に期待は出来ないだろうし、俺も以前沈没船に入った時は人間がとても入り込めない海底だったもんな。人魚族の力が無いと無理。
「まっと言う訳で帰るにはまだかかるからゆっくりしようか」
音楽をかけながらノラとボードゲームを開始する。
ぶっちゃけチェスであり、その間にアリシアが食事の用意をしてメルナは先ほど押収した研究室の本などを読んでいる。
扉がゆっくり開くとサクラとスミレが帰って来た。
「パパただいま!」
「ただいま」
「うい」
サクラが走ってくる。俺に抱き着いて来るので強引にはがす。
「…………いやあのさ」
「何パパ?」
「俺は別にいいけど、サクラ何歳になったっけ?」
「16才?」
「親父。オレ達は1年間過去にいたからその17才ぐらいとは思う」
「うーん。クウガ校長がくれた薬で記憶が曖昧なんだよ」
なるほど。
本来の歴史から派生したので帳尻を合わせるのに考えた策だ。
忘れ草。天才錬金術師ナナが特別に調合した薬で禁止品の中の禁止品。
ゲーム中では悲しい過去を持った女性に対して使うイベントアイテム。
戻って来た2人に飲ませた。と言っていた。
こわ。
「とにかく。サクラも女の子なんだし誰にでも抱きつくなって話で」
「家族と友達しかしてないよ?」
「………………じゃぁいいのか?」
「ドアホウ論破されてどうするのじゃ」
顔を持あげずに本を読んでるメルナが呆れた声を出す。
「サクラよ。ドアホウはサクラに女を感じてるのじゃ」
「感じてないからね!?」
「女? サクラ女の子だよ?」
よかった。サクラは何にもわかってない。
「慕ってくれるのはいいけど、俺なんてパパと呼ばれるだけの事してないからな。完全に育児放棄だよ」
大きくなってからも世間一般の常識が教えきれてない気がしてクウガに託したんだし。俺よりもクウガのほうがパパである。
しかし!!
本当に常識教えたのか? 結構ぶっとんでるぞ。
帰ったらちょっと聞いてみるか、いや……逆に怒られそうではある。
「ロウよ。あまり考えこむななのじゃ。ワラワやアリシアでは世間と違うからなのじゃ。交流関係もそうなのじゃ、ワラワ達と一緒に永遠に暮らしてみろなのじゃ。魔女や聖女の子として要らぬ尾ひれが大きくなるなのじゃ。事実は消えなくとも、大きくする事もあるまいなのじゃ。小僧ならまぁ大丈夫じゃろ……」
メルナ……結構いい事を言うけど、目線はまだ本を読んだままだ。
そう言う時ぐらい本を閉じようよ。
後、俺の考えを先読みしないで。
「クロウ君、珈琲のお代わりもってきたよー。しょうがないよクロウ君はバラバラになって死んでいたんだし」
しょうがないのか?
パタンと本の閉じる音が聞こえた、思わずメルナの方を見る。
今何かに気づいた。と言うような顔だ。
「何?」
「ロウよ……バラバラの8年間の記憶はあるのじゃ?」
「あるわけがない。目が醒めたら8年たちましたけど……何が問題が?」
「まっそうか。いや死んだ人間の魂は冥界に行くはずなんじゃけどそこの記憶が無いという事は魂はさまよっていた。と……となれば、どこに……ふむ。魂の問題となるとやはり人間ではない──そもそも──」
あっだめだメルナが魔女モードに入った。
ブツブツと仮説を唱えては否定し始めてる。
メルナの趣味みたいな物だし放置するに限る。
「スミレ。明日は釣りしないか?」
「……親父に出来るのかよ」
「これでも河川敷の釣りキチとよばれて──」
「また親父のよくわからない話が……」




