第673話 某ゾンビ研究所で働く人は道を覚えるのが大変そう
「ふむ。だいぶ小降りになってきたようじゃな?」
「メルナの胸が? まだまだ大きいけど」
「外の嵐と雨の事じゃ大ボケが!!」
いよいよ語尾に『なのじゃ』もつけてくれない。
本人曰く語尾は自然と出るようになってはいるらしいけど、たまに無い時もあるとかなんとか。前に真面目な話の時はつけないようにしてたからな。
さて。スミレが魔物スイカ侍と出て行ってから半日。
まだ帰って来ない、俺は体の縞模様が濃くならないように自然体で過ごす。
「くっそ、反撃が出来ないからと思ってなのじゃ」
「メル姉さん押さえて、クロー兄さんに魔力を当てるとスイカ現象が早くなる。本当はボクも付いて行けば」
ノラは半日ずっとこんな感じ。
せわしない。
俺はもう待つだけだ、結果的に間に合わなかったらスイカ人間になるだけで……恨みはするが受け入れる。
なんだったらあのスイカバーもう1本食べたいぐらいだもん。マジで美味かった。
ログハウスの扉がゆっくりと開いた。
スミレ以外全員いるので帰って来たのはスミレか敵か。
「ただいま……」
「まぁスミレよな。おかえり」
「おかえりスミレ君」
「スミレお兄ちゃん、おっかー」
タオルを渡されたスミレは濡れた体を服、サクラは先ほどからぐるぐると辺りを回っている。
「お兄ちゃんスイカ侍がいないよ?」
「え。ああ……ジョンはオレをかばって……死んだ」
ジョン? 犬に名前を付けるタイプか。
「それよりもメル母さん。これでどうかな……」
テーブルにスイカの種をバラバラと、いやスイカじゃない? 後は赤い染みが付いた本が数冊。
「どれ……古代文字じゃな」
「あっじゃぁ私も読めるよ」
「一応ボクも読める」
「サクラ読めません!!」
メルナが、じっとサクラを見ては溜息をつく。
わかるよ、教えていたもんな。覚えてないんだろうきっと。
女性陣が本を調べてる間にスミレの落ち込みが酷い。
メルナに『話せなのじゃ』と言われ、淡々と話しだす。
何かの研究所だった場所。
ウィルスで人間を魔物に変えていた感じの手記。
所長の死んだ息子にウィルスを打ち込んだ事。
その打ち込んだのが『ござる』と喋った事。
研究所なのに、いちいち複雑なギミックが無いと奥に行けない事。
地下で出たボスと戦い、スイカ侍が死んだ事。
全部喋り終わると、サクラが大きな声で泣きだした。
「うえええええええん。スイカ侍さん!! かわいそうだよ!! 夏が終わったら一口食べようと思っていたのに!!」
「こわっ……」
「…………変な所を似なくていいなのじゃ……まっ大体答えはわかったのなのじゃ。ボスの白い種。これを食べればスイカ侍の魔力と反発して消えるだろうなのじゃ」
さすがメルナである。
3冊しかない本でよくぞここまで。
種の餞別はノラがしてくれて、白い種を口に入れる、無味だ。
歯の間にひっかかる。
「しかしまぁ……人間をスイカ侍にするって怖くない?」
「だから人間は怖いのなのじゃ。人の事を魔女だなんだと言うくせにやってる事が陰湿すぎるなのじゃ」
激おこメルナである。
「どうせなら、不死身の魔物にすればいいのにな。スイカじゃ弱いでしょ、例えばキメラとかあれって複合魔物だから人間と混ぜやすそうだし、頭を潰して人間の脳を入れみると適合するかもだし」
「…………」
「…………」
「…………」
あれ? 場がシーンとなった。
「まずった?」
「クロウ君ちょっと怖いよ」
「クロー兄さん試さないでね」
「しないよ!? 可能性を考えるならそっちのほうがって……思って」
「ドン引きなのじゃ。まぁわからんでもないのじゃが捕まえるのが大変じゃろ」
「たしかに」
突然ログハウスの扉が強打された。
サクラなどはびくっとなってすぐに開けようと。
「まてサクラなのじゃ。この島に人間は他に居ないはずじゃ」
「見落としとか?」
なおも強打される扉。
開けるでござるよ。とスイカ侍の声が聞こえて来た。
一斉にスミレを見ると、スミレの顔色が血の気の無い。
「そんな訳はない! スイカ侍はオレをかばって木っ端みじんに!」
「じゃぁ魔物だな。幻覚系の攻撃か何かだ」
ソファーから立ちあがりアンジュの剣を構える。
メルナが扉を開けてくれた。
そこには赤い液体が滴るスイカ侍がっ──。
──
────
「と、まぁホラー映画やホラー漫画ではこれでエンディングってわけだったんだけど」
「映画とは何でござるか?」
サクラが座っていて、そのサクラの膝に上に抱えられるのがスイカ侍。
返り血? 返り果汁? 赤い染みは洗ったら取れた。
サクラの隣では不貞腐れてるスミレが座ってる。
「ごめんね、パパったら家族のだれにも解らない事言う時あるの」
「それは、某が悪かったでござるな。痴呆は病気ゆえ」
「ボケてないわ!! せめて博識だろそこは!!」
少し遠くにいたメルナにも聞こえていたのだろう「痴呆のほうじゃな」とツッコミが聞こえた。
ノラも聞こえたらしく「クロー兄さんは故意だから」って。
「そもそも、某は元々魔物であるゆえ……そのジョンと言う丁稚や所長と言うのも知らないでござるよ……最初の言ったでござるよ。この島には泳いで来たとござるよ」
確かに言っていた。
自爆に見えたけど、自爆技はちゃんと再生する。との事。
それを知らないスミレは1人落ち込んで帰って来たわけだ。
「それよりもこの見事なスイカソード! さすがは真打でござるな。今思えば、あの女性はスイカソードを打った。とは言って無かったでござるし。拾った可能性も。某、浪人であろうが約束は守る口でござるよ……西の入江に某を追いかけて来た船が沈んであるでござるよ」
「約束?」
「スミレ殿に刀の礼を約束をしたでござる。魔物には価値はないでござるが、船には宝石などがあったでござるよ。では拙者はこの辺で失礼候」
言うだけ言うとゴロゴロと回って出て行った。
ふむ。
「え、いやっ! 黙っていたわけじゃなくて……死んだと思っていたから!」
「うわ。スミレお兄ちゃん独り占め?」




