第670話 恐怖、スイカ人間、現る!! の巻
「ただいま」
「ただいまパパ―!」
俺が謎のスイカバーを食ったので、あるはずのないスイカバーを探しに行った可哀想な子供組が嵐の中から帰って来た。
タオルでふきながらスミレは俺を不貞腐れた顔で見てくる。
ばれた!?
「何時までも寝ていいよな……こっちは嵐の中探し物だっていうのに」
普通の不満だった。
「こら! スミレ君」
「そうじゃ、もっと言ってやれなのじゃ」
母親2人に注意されるスミレはもっと不貞腐れる。
「ごめんって」
「見つからなかったです。昨日ノラお姉ちゃんに渡した奴だよね。ノラお姉ちゃんは同じ場所に置いて来た。って言うんだけどなかったよ」
ちらっとノラを見ると、アイコンタクトで返事を返す。
なるほど、今回はノラは知らぬ存ぜぬで通すつもりらしい。
「おお。幼き子達よ某の武器のために申し訳ない」
「ふむ、申し訳ないと思ったら自分で探したら?」
そのまま出て行ってくれると助かる。
馴染んじゃってるけど、魔物だぞ?
「なんと魔族の主人よ。某のようなか弱いスイカ侍は外の魔力風で飛ばされてしまうのだ」
飛ばされてくれ。
もう一度心の中で言うけど魔物だよ?
「1、人間に話しかけて退治されると思わないのか? 2、スイカバー……じゃなくてスイカソード。それが無いとどう困るのか? 3、どうやってこの島に? この島に生息してるのか?」
思った事を聞いてみる。
その頃には子供達2人もタオルで体を拭き終わっている所。
「某は別に戦はこのまんでござるよ。いや……魔物であるのは理解してでござる……人間は旨そうな魔力を持っているでござる。某の刀は特注品でござって、美しきおなごからもらったでござる。持ってるだけで空腹が癒され人間を襲う事もないでござる」
ほう。
「参の答えござるか? すこし前に武器を持った人間の船から逃げて来たでござる。ここは1つ某と和平を願ったのでござるか、誰か食うか言うのでほざいていたので、船底に穴をあけ泳いだでござる」
「え? 何て」
「魔族の主人殿はお耳が遠いらしいでござる……少し──」
「いや聞こえていたんだけど。そこじゃなくて……船底に穴開けたってその船は?」
「海に沈んだでござる」
簡単に言ってくれる。
俺の思ってるスイカ侍は南国地方に出る魔物でそんなに強くない。
人間のほうが強いし船に穴を開けるなんてもってのほかだ。
そもそも知能ないだろうし。
亜種かレア種か……倒すとやっぱドロップ品はスイカバーかな? あれは旨かった……アイスのようで生に近かったし。
でも、もう無いんだよな。謎の女から貰ったって神の贈り物的な?
「よし! その女からもう1回貰ったら?」
「なんと!? 探してもないのにでござるか!?」
「…………探しても出無いと思うし。そもそも無くすなよ」
「某の話を聞いてほしいでござる。平和な無人島生活でスイカの楽園を作ろうと日々島にいると、突然魔力があふれ出たでござる。某、剣のおなごが来たと思って急いで森の中に言ったのでござるかいなく……落としたでござる。戻って来た時には人の後……こうして恥を忍んで聞き込みに来てるでござるよ」
もっともな意見だ。
だが、無い物はない食っちまったし。
「スイカ侍と言ったなのじゃ。もしも、そのスイカバー……いやスイカソードを食べた人間がいたらどうするなのじゃ?」
「ナイス質問!」
「某は別に気にしないでござるか、刀をくれたおなごによると、人間が食べると1ヶ月後には足軽スイカになるで候」
…………
……………………ほわ? え。食べたよ?
「クロー兄さん!! 早く吐き出して」
「わ。わかったっ!!」
俺はゴミ箱に顔を突っ込んで口の中に手を突っ込んで吐き出す。
も。唾液しかでないし汚い。
消化された後だ。
「おーまいが!!」
「親父……その食ったの?」
「パパだけずるい!!」
ずるくはない。
話を聞き終えたあと、メルナの溜息と、比較的冷静のようなアリシアがクロウ君……また……とか。
別に俺だって食いたくて食ったわけじゃ……いえ、食いたくて食いました。
「魔族の主人よ……食べたでござろうでござるか?」
「ござる。ござる。うっさいわ!! 食ったよ。ええ食いました!! すみませんでしたね!! 美味そうで!!! お前だって侍なんだから少しは平服しろや!!!」
「某は現在浪人ゆえ主人は居ないでござる」
このクソスイカ!!
あれか? 俺がスイカ人間になるとだ、街に帰った時に阿鼻叫喚。ヒーロー物でタイトルに『スイカ人間の恐怖』とか出る奴かこれ。最後にはヒーロー……この世界ではクウガが俺を倒して、御涙頂戴して一件落着。
「なってたまるか! 解毒剤は!?」
クソスイカ侍とメルナを交互に見る。
「『転移の門』で家に帰れれば魔導書を調べるのなのじゃが……こう嵐じゃと。それと嵐が終わった後も魔力の流れですぐに帰れるわけじゃないしの」
「メル姉さんの言う通りだね。ボクが調べた所によると『転移の門』もなぜ密閉した場所に多いかというと外部の魔力と反応されにくい場所がいいみたい。ここに来る『転移の門』は朽ち果てた部屋にあったからあの壁だって古代遺跡の一つだよ」
野良が補足してくれたけど、そんな講釈は今は要らん。
お腹が痛くなってきた来がする。
「道に落ちてる剣を食うとは思わず持ってないでござる」
「クロウ君! 腕!」
「ん? ああああああああああああ」
うっすらであるが腕に縞模様の黒い線が見える。
スイカのアレそっくりだ。
「ロウ! 動く出ない!!」
「うい」
メルナの言う通りとまると、俺の視界が白に染まった。
攻撃魔法を受けたアレである。
──
────
「…………あのメルナ?」
「魔族の主人よ。見事な自爆スイカでござるか、再生されるとは別の技でござるか?」
足元のスイカは放置。
メルナは渋い顔のままだ。
「ふむ。肉体を焼失させ再生させたのなのじゃが……」
腕を見ると黒い線がさっきよりも濃く。
「パパ……足軽スイカさんになったら、美味しく食べるね」
「いや、食べないで!?」
「某も先ほど同じ目にあいそうになったでござる。おなごが言っていたのでござるが、魔力を使うと反発して呪いが強くなる。と言っていたでござるよ」
「早く言ってくれない!?」
それまで黙っていたスミレが小さく手をあげる。
「何だスミレ?」
「そこのスイカ侍は森に行ったって、剣をくれた女性に会うのに言ったって事はそこを調べたどうかな。それに持ってない……って言っていたから『無い』って事はまだ確定じゃないかも」
「おぉぉぉ」
感動して言葉が出ない。
キャラが弱い、彼女持ちで不自由ない息子だから黙ってるだけと思ったけどちゃんと周りの話を聞いて考えていたらしい。




