第666話 時空歪んでない? いや、そう言う事ですか。
「今日も今日とて暇である」
「そこの中年ロクデナシの弟子よ。そう暇なら壁でも直したらどうなのじゃ?」
「…………俺っていつになったら弟子を卒業できるんですかね?」
俺が中年ならメルナやアリシアはどうなんだ。って話であるが、そこは突っ込まない。実際におじさんだしな。
「…………弟子卒業ってのは師が認める場合が定番じゃの。ワラワが認めた部分ないじゃろ、そもそも弟子と正式に認めた事もないのじゃ」
その顔は冗談を言っている顔じゃなくて本気の顔だ。
数秒前に俺の事を弟子って言ったのにもかかわらず。
あと本気で言われると結構傷つく。
「あるでしょ1つぐらい!」
「ああ……ド変態な事だけじゃな。その才能をもう少し別の所に──」
「はいはい。俺が悪かったですって。で……壊れた壁か」
小言モードになったので話を打ち切る。
現在家の何は人型の穴が開いた壁穴が複数。
それ以外にも重力攻撃によってひび割れたり……俺がメルナを襲って吹き飛ばされて壊れた場所など。
やる気がでない、何時ものロープではなく珍しくブラトップを着ているメルナの方を向いた。
いやはや、そこに山があるから登るんだ。というぐらいに谷間を強調してる。
暑くないのかな、あせもにならないようにパフパフしてあげたい。
俺は何て優しいんだ。
「聞いておるのじゃ?」
「まったく」
「じゃろな……視線がワラワの胸に来てるのじゃ」
「実際は聞いてますよ。でも俺が壁直すの下手ですし……クウガでも呼んできます」
「続けて呼ぶのも悪いじゃろ」
どうやら、俺と同じで直させるのは悪くないらしい。
そのクウガであるが、レイアとの打ち合わせ終えその足で帝国に行きます。って帰ったからな。忙しい男で、もう少し人生に余裕を持たせたほうが、あっ……ちゃんとスケール眼鏡は持って行った。
「先生、クロウ君が暇なほうが世界は安全です! お昼は何にしましょうか」
「俺は災害が何か……? 任せるよ」
台所のほうからアリシアはテーブルにアイス珈琲を2つ。後はライムを絞って作ったジュースをそれぞれの場所に置く。
この苦みの味が旨いんだ。
「ふむ、アリシアの35才の誕生日として寿司でも──」
「ぶううううううううううううううううう! げっほげほ」
「ロウよ、汚いなのじゃ」
「ああ、すみません……じゃなくて! 35才!? え、誰かっ!?」
アリシアは小さく手をあげた。
そんな訳はない! 俺と同じ年齢だ。
「こないだ30才の誕生日を皆で祝って、知らない間に、1年ぐらいたっていて時空が歪んでなければ一気に進まないって」
「ロウよ、お主がちょいちょいレイアの所に行ったり、過去に飛んだり。ワラワ達全員でレイアの所に行ったり。《《ワラワが結界内の調整をミスって》》外部と時間軸の流れを間違えてしまったりと、外の世界ではそうなっているのじゃ」
はい、実際時空歪んでいました。
「ってか最大の原因はメルナなのかい! そういえば、思いっきり『不味った』って顔で夕食食べてる時ありましたね!! あの時は問題ないって」
「実際問題もあるまい…………肉体年齢はそのままなのじゃ、周りが数年ずれただけじゃし、これでも努力はしたのじゃ。いやぁ100年もずれてなくて良かったのじゃ」
「クロウ君、肉体的には数年の誤差はあるみたいよ。先生の話で言うと、1週間に1回買い物に出ていたでしょ? それが外では3週間ぶり。みたいな感じだって。学園にいる2人からお小遣いの催促が多いなって思っていた時に気づくべきだったね」
「もしかして今も?」
「今は大丈夫なのじゃ」
安心は出来ないが、メルナが言うなら信じるしかない。
俺の事を災害とか言う人いるけど、一番は周りだからね。
特に魔女。
数年前まではメルナが何でそこまで忌み嫌われてるのが謎だったけど、結構やらかしが多い。詳しくは聞いてないけど、そのやらかしで街が滅んだ。とかも。
えぐい。
聞いていて楽しい話じゃないから詳細まで聞かないけどさ。
「…………海でも行きません?」
「クロウ君唐突だよ」
「唐突に思ったから」
テーブルを拭きながら思った事を口にする。
「ほら。俺やメルナ、アリシア、ノラとは思いでが沢山あるけど。スミレやサクラには少ないなぁって……ここは家族で海にでも」
「海と言うとスータンの街かのう……人が多そうじゃ」
「うーん……私は家にいるね」
消極的な2人。
1人は人込みが面倒なんだろう、わかる。俺も人が沢山いる場所に泳ぎに行きたくない。
「メルナはわかるとして、アリシアのほうがわからん……泳げなかったっけ?」
「え。泳げるよ。その……もう水着が恥ずかしいというか、うん。はずかしいよ」
「すっけすけの『神の踊り子の服』とか着るのに!?」
「き、着た事ないよ!? え。クロウ君にその話した事ないよね!?」
あっやべ。
『神の踊り子の服』見た目が透け透けの布面積が少ない防具装備です。
胸の部分とかうっすらと透けるし、なんだったら下半身も危ない。
ゲームでは好感度を上げたら着てくれる。
でも、街の人達の反応も普通な感じなんだよね、その辺もこだわって欲しかった。
「ええっと……クウガから聞いた」
「北の迷宮に行く時にあった装備品で、絶対に着ないよ? っていくら装備が強くても、恥ずかしくて着れないよ。クウガ君がクロウ君に着たって話したの? 今度問い詰めるね」
話を聞いておくね。じゃなくて、問い詰めるね。に怒りを感じる。
ごめん、クウガ……守れなかったよ。
「そ、その。俺や家族だけなら水着でもいいだろ?」
「うーん」
「普段もっと恥ずかしい場所──」
「クロウ君?」
「あっはい。ごめんなさい」
静かに怒りだしたので訂正しなくては。
近くにいたメルナが、懲りない奴なのじゃ。と呆れた声を。
懲りる懲りないの話じゃないし、俺のポリシーだし。
「そんなポリシー捨ててしまえなのじゃ」
「何も言ってないよ!?」
「ふむ、どうせそう思ったのじゃろう、と推測したなのじゃ」
「辞めてくれない!? で、アリシアどうかな」
「人が少なければ……うーん。そうだよね、スミレ君やサクラちゃんにも……」
「そう家族って大事だろ」
ちなみに、アリシアは家族という言葉に弱い。
生い立ちが不幸な分、家族の絆を大事にするタイプなのだ。
「そこに付け込む大悪党なのじゃ」
「っ!? あの、メルナ。だから何も言ってませんけど!?」
「大方、アリシアに家族と言うキーワードを聞かせて断りにくくしてるのかと思ったのじゃ。ワラワの勘違いじゃな。すまなかったなのじゃ」
何一つ悪びれてない棒読みの声である。
「うん。いいよ……クロウ君の策略に嵌るよ。たまには家族だけで行くのもいいよね」




