第665話 義父速攻で帰る。早くない!?
「あの……お義父さん何の様で」
ルシオラは信じられないものを見るかのように見てくる。
事実を言っただけで、そんな驚かれる事もないだろうに。
横に座っているメルナが居心地が悪そうだ。
席の順番と言えば。
レイア。ルシオラ。メルナ。
テーブルを挟んで、クウガ、アリシア、俺である。
「良かったわねルーちん! お義父さんよお義父さん!! きっと嬉しいのよ」
なるほど。ではもっと呼ばなければ。
「お義父さん。お義父さん。おとう──ぐっ!? がはっ!? 今のは魔法……?」
魔力の塊に吹っ飛ばされて俺は壁にめり込んでいる。
ルシオラは表情をかえずに手だけを俺に向け……あれ、殺意飛んでくるんだけど。まぁいいや、次の台詞言うか。
「すごい、魔法として認識できない……」
体中の魔力を使って再生(強)が発動してる所だ。
アリシアが急いで駆け寄って来て俺を壁から引っ張ってくれてる。
「ドアホウが普段言わない台詞って事は、どうせどこかの何かのパクった台詞なのじゃろ……ルシオラよ。もっと力入れて魔力を撃ったほうがいいなのじゃ」
「はぁっメルナ!?」
何て言う裏切り。
ルシオラが頷く前にめり込んだ壁から這い出る。
「余裕はないけど、そこで余裕を見せるってのが男でしょ。ルシオラって呼んだほうが良かったのなら、口で言ってくれない!?」
「ごめんねー。ルーちん照れてるだけだから。照れ隠しよ」
無言の表情でわかりにくい。
本当か? 腹話術の人形のほうが表情あるぞ。
やっと席まで戻るとソファーに座り直した。
「あの。危険そうですし、僕は帰っても良いですか?」
「まぁこれだけしょんぼりのメルナも珍しいから見て行けば?」
「後が怖いんですけど……ええっと、初めまして。冒険者で学園を営んでいるクウガです」
ルシオラはクウガをちらっと見ると、手を取る事もなく俺に視線を合わせる。
笑顔で握手を求めていたクウガは暫くそのままで固まり、手を引っ込めた。
「ごめんねークウガちゃん。ルーちんって他人に興味があまりないのよ……何かを言われたらやる。みたいな人で」
「そうですか……いえ。では興味ある人間になれるように精進します」
「あら。素晴らしいわ」
クウガのこういう所が凄いよな。
俺だったら、じゃぁ別にいいよ。ってなるし。
「それよりも、この時代に来るとは、人間界は魔族が出てきて大パニックだろうな」
一応未来に来る事は知ってた。
その力で俺は過去から未来に帰って来れたし。
「そもそも魔族と魔物の境界線って何? 喋るから魔族? 喋る魔物なんて沢山いるわよ……それこそ。お義母さん的には人間ほうが魔族なんじゃない? って思う事もあるわよ」
それを真面目に言われると、俺とて学者でもないからな。
「難しい話は置いて前に言ったでしょ? やっと実験が終わるって。数百年前に突然滅んだ魔族。実は友好的な一部の魔族はデーモンキャッスルと一緒に未来に飛ばしました。もちろん、皆のお義母さんレイアママとその仲間達が!」
サラっと凄い事を。
「そのための時間系の魔法を扱っていたんだもの。実験の結果迷宮にボスになっちゃったんだけど……今回は挨拶と相談ね。ほらルーちん。頭下げて」
操り人形のようにルシオラは頭を下げて元の位置に戻る。
人形のようで怖い。
「で、メルナは逃げようとしていたと」
「当り前じゃろ! 生まれた時から会った事もないのに突然父親だ。と来ても面倒なだけなのじゃ」
ルシオラは無表情のままだ。
「ルシオラさん可哀想……あっ私もクロウベル君の2号さんです。アリシアっていいます。私にとってもお義父さんになるのかな?」
「あの。アリシア。別に1号とか2号とかヒーロー戦隊じゃないんだから無いからね?」
「あの。僕帰っても良いですよね」
「まぁ折角だからいてくれ」
メルナが暴れた時に戦力は多いほうが良い。
「一応いうのなのじゃが、ワラワは暴れないのじゃ」
「何も言ってませんけど」
「ふん」
舌打ちして足を組み直す。
スリットの入ったワンピースタイプで、ついつい中を覗きたくなる。
我慢だ我慢。
「で……今さら父親面して何の様なのじゃ……」
「まぁ可愛い娘の反抗期かしら。私の住んでいる時の迷宮にね、デーモンキャッスルを融合させたの……でね。自給自足は出来るのよ? でも一部の魔族は外に興味もあるじゃない? それの相談をしに来たのよ」
「一度滅んだなのじゃ、もう1回滅んでしまえなのじゃ……そもそも危ないじゃろ」
「あら、城にいるのは争いを避けた集まりよ」
懐かしいなぁ。
オークメイジのオクヤマさんとか元気なのかな。
飯をくれたゴブリンなどもまだ生きてるって事か。
「じゃっ。出番だ! クウガ頼んだ」
「ぶはっ! 珈琲が器官に……な、なんで僕なんですか!?」
「いや……クウガと言ったらもう隠し玉。いや俺にとっては親戚みたいなものだろ。俺が唯一信頼してる男だ」
一瞬固まったクウガはまんざらでも顔をしだす。
「本当に口が上手いですよね……一度はクロウベルさんを殺した男ですよ……そこまで言われると。少しは考えたくなるじゃないですか……ええっと魔族ってのは皆人間タイプなのですか?」
「いいえ。ゴブリンの形やオークの形。魔物その物の形も多いわね。細かい見た目は変装とか義体を組み込ませれば少しは変えれるけど……亜人に近いわ」
少しクウガは考えて答えを言う。
「で、あればソニア学園のステリア魔導師と連絡してみます。彼は亜人と人との関係も考えていますし、教師枠で亜人を入れてはどうか? という話も出ているんです」
へぇ……色々問題が起きそうだけど、先の事を考えていて偉いな。
俺なんて今日の暇をどう過ごそうか毎日必死なのに。
「人間界に顔が広い人がいて助かるわ。じゃっ、その案を皆に伝えるのにルーちんを引っ張って帰るわね」
「もう二度と来るななのじゃ」
「え、もう帰るんですか!?」
2人奥さんの違いである。
「私は平気なんだけど、迷宮にデーモンキャッスルを食べさせたじゃない? 私があまり遠くに行くと全部迷宮になっちゃうのよ。生きたままダンジョンに食われるって奴ね。知らない? 悲劇の勇者ガタリオンの話」
知らん。
けど、クウガを見たらしゃべり出した。
「有名な奴おとぎ話ですね。邪竜を倒しに迷宮に潜ったガタリオンは邪竜に会う前に迷宮に食われ今でも敵を探しさまよっている。という話です」
「私やルーちんみたいに強い個体は別よ。でも迷宮に食べれちゃうと自我も壊れていくのよね……城にいる皆が自我が残っていればいいけど」
「早く帰ってくれない!?」
レイアが立ち上がると、ルシオラも立ち上がる。
一応玄関まで見送ると庭先の空間に穴をあけて本当に帰って行った。
「あっメルナ。どこかに行くって言ってらっしゃい……何年後に帰ってくる予定で」
「冗談に決まってるじゃろ! まったく……本当に出てくなのじゃ」
「辞めて」
俺が短く言うと、メルナも何も言わなくなった。
「本当になんだったん」
「顔みたかったんじゃないかな……メル先生のお義父さん良い人そうでしたよね」
娘が逃げるのに重力魔法飛ばしてくる奴がいい人とはいったい。
「それよりもじゃ。ステリア魔術師とはなんじゃ? ロウよ、故意に秘密にしていたなのじゃ?」
「やべ」
「…………」
怒っている時の顔だ。
いつもなら尻を叩かれたり尻に棒を突っ込まれそうになったりで終わるお仕置きじゃなくて、本気で怒ってる時の顔。
「ええっと……俺もよくわからん。かの英雄と同じ名前だったけど……ほら、本人ですか? って聞く事できないじゃん。後、俺の事を初対面っぽかったし」
「…………気に食わぬがまぁいいなのじゃ。魂の生まれ変わり。と言うのがあるからなのじゃ」
アンジェリカの事だろうな。
「あの、一応聞きますけど……そのステリアが過去のステリアと魂が同じだったら、俺を捨ててその男とくっつきます?」
「…………そのつもりと言ったらどうするのじゃ?」
「いや。応援しようかな。って」
ほら。クウガに取られるのは嫌だし。他の男に取られるのも嫌だけど……メルナってほら、昔ステリアの事が好きだったって話あったし。本気で思うなら俺も身を引いたほうがいいのかなって……親切心で言ったんだけど……その杖は何かな? ねぇアリシアどう思うって居ねえ!? クウガもアリシアも俺から離れている。
「いや、無言で杖を向け……あの! 俺が死んだら困──」
俺の意識はそこで途切れ……その前にアリシアに「そう言う所だよ?」って声が聞こえた。




