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負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい  作者: えん/えんとつ畑@雑記


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第661話 乗り切った!! 今夜はご馳走だよ九朗くん

 木製のふたをカンカンと叩く音が聞こえた。

 ここに来て体内感覚で一週間と言う所。

 洞窟内で朝昼がわかるのか? と言うとちゃんと時計があった。


 歴史詳しくないけど江戸時代にも時計はあっただろうし、そもそもヒノクニにも時計ぐらいはあるわな。



「ご飯よー」



 カナデ母さん。かっこ少女バージョンの声で起こされたので、布団から這い出るる。もう1回ごはんだってー。と声が聞こえるので欠伸をしながら居間へと入った。

 畳張りの道場のような場所は、現在畳の一部が剝がされていて、囲炉裏となっている。



「ん、おはよ」

「おじさん……起されない人って人間として駄目だよね。黒子ちゃんなんて手伝いまでしてくれるのに」

「うい」



 俺も起きようと頑張った。

 が、深夜まで壊れたタイムマシンの時計とにらめっこしているから眠いのだ。

 あーねむ。



「美味しそうな匂いだね。母さん」

「…………」

「…………」



 やっちまった!!

 思わず呼んでしまった、眠気が一気に覚めた。



「九朗おじさんさ……ええっと……何て言うんだっけ……気持ち悪いの略した言葉で……ああ! そうそう。キモイよ……九朗おじさんと何歳離れてると思ってるの。信用してるから居住スペースにいていいよ。って言うのに1人で外で過ごす? 大体さぁ──」



 長い!

 どうして母親の小言は長いのか!!

 正式にはまだ母親にはなってないけど。



「ちょっと! 九朗おじさん聞いて……げっほ」

「っ! だ、大丈夫か」



 咳をしだすので慌てて近寄ろうとすると、木製の鍋のふたでガードされた。



「だから怖いって。軽い喘息なだけだし。黒子ちゃんと用意しちゃって」

「クロウ様おはようございます。本日も美味しそうな朝ご飯です」

「うい」



 乾燥野菜を煮込んだ味噌ベースの鍋。

 さらに、米まであり。ザ! 和食と言う感じだ。

 食べ終わると食器の片づけ。


 軽装に着替えたカナデは「行ってきます」と生活スペースから出て行った。

 水竜の祠の点検らしく、異常があればそれを解決する。という試練らしい。


 俺達の事も試練の一つと考えているらしく、それはそれで都合がいい。



「げふ」



 朝から大量に食わされてゲップが出る。

 黒子が俺を見てくる、あれか? 幻滅したって奴?

 そもそも俺は『様』を付けられるような事もしてないしな。


 指先をくるくるっと回し水竜を出してみる。

 ネッシー型の水竜は畳の上で現れると長い首をぐるっと回して──。



「クロウ様。あの……黒子はむずかしい事はわかりませんが。カナデ様がこの青龍様を見たら大変なのでは?」

「んあ?」



 あー…………。



「まっ大丈夫だって今出て行ったばっかりだって言うの。この一週間見てるけど1度出て行ったら数時間は帰って来ない、それにほら直ぐに消せば問題も──」

「たっだいまーいやー護符わすれ──」

「…………」

「…………」



 俺とカナデがお互いに無言になる。

 俺はカナデを見て、カナデは俺と水竜を見てる。



「…………あれ。忘れものか?」

「…………そうそう。青龍の護符を忘れて」



 カナデは自分の寝泊まりしてる部屋に入った。

 俺は速攻で水竜たんを仕舞わないといけない、ええっと。ええっと……何時もどうやって解除していたんだっけ。


 背後で障子が力強く開いた。

 近くにいた黒子がビクってなるほどに力強い。



「見なかった事に出来るわけないよね!!」

「そこは見逃してくれない!?」



 やばい。怒ってる。

 こういう時の母さん。じゃなくてカナデはネチネチと話が長くなる。



「やっとわかったわ! 黒子ちゃんが青龍様って言うのは九朗おじさんの事だったんだね。と、言う事は九朗おじさんは私の試練相手って事でしょ!?」



 怒ってるわけじゃない?



「ちげーよ」

「違うの!?」

「クロウ様。あの……そのほうが都合が良かったのでは」

「はっ!?」



 思わず黒子を見た。

 否定したけど、そのほうが話がスムーズになるのは確かに。



「ええっと。そう」

「駄目ですよね。おじさん! そこに正座」

「いや、あの」

「正座」

「悪気はなかった」

「せ、い、ざ」



 はい。

 正座します。

 ええっと座布団は……あっ駄目ですよね。

 畳に正座って足がとても痛くなるんだけど……解りました。我慢します。


 俺が囲炉裏の前で正座すると、カナデが反対側。

 黒子は斜め横にちゃっかり座布団の上に座ってる。



「九朗おじさんが水竜の神様とかじゃないなら、本気で何者なのよね? 一週間、飲んで食うだけを見ていたけど、特に害も無く接しているから守る対象なのかな。って我慢していたけど」



 我慢してたの!?

 言ってくれよ、そこは。



「いやあの。聞いて」

「聞いてますよね?」

「うい」

「返事は『はい』ですよね」

「は、はい」



 怒ってるやん。



「はぁ……俺はそのカナデを巻き込みたくない。と思って」

「自分にいい言葉は使わない」

「あっはい」

「謝罪はごめんなさいよね」



 っ! 俺は土下座をする。



「まことに申し訳ございません!!」

「…………はぁ……やだなぁ。大の大人が私みたいな可愛い女の子に土下座とか、可愛そうになってくるよね──ごほっ」

「っ! ほ、ほらあんまり怒ると喘息がっ!!」

「近い近い近い、九朗おじさん近いって。心配は嬉しいけど近いから離れて」



 あっはい。



「そのさ。色々言えないというか信じて貰えるかどうか……その《《何百年も先の未来》》から来た」

「え。クロウさ──もご!?」



 すぐに黒子の手を引っ張って口を押える。

 余計な事は言わないの。



「黒子、ほら戻ったら何でも好きな物買ってあげるから」

「本当ですか!? 黒子、超絶対無敵戦隊ショーグンDXのからくりロボが欲しいです!!」

「買うから、買うから黙って」



 黒子はにこにこ顔になる。



「未来か……で。この場所に何の用に?」

「疑わない?」

「水竜陣を見たし、あれですよね。未来の青龍家当主様とか?」

「いや?」



 カナデの表情が眉をひそめる。

 その表情を黒子が見て口を開く。



「カナデ様ってクロウ様と表情が似てますね」

「余計な事言わないでくれる!?」

「こんなおじさんと似てるとかいやよ!?」

「ご、ごめんなさい……」



 しまった泣きそうだ。



「ほ、ほら泣かない」

「そうよ、泣かない泣かない。黒子ちゃんは可愛いわよー」



 2人で機嫌を取ると黒子の表情が何とか戻った。

 ふう……泣かせたいわけじゃない。



「その何百年も先の未来では青龍家は途絶えて、他の3家によってイジメられてる。でだ……才能の塊である、この子を次期青龍家当主に育てるのに、水竜の祠に来たらこの時代に来たってわけ。納得出来る?」



 出来る。というかしてくれ。



「難しいけど、するしかないのよね?」

「頼む」

「………………じゃぁ貴方は?」

「ちょっと魔法が使えるだけの一般人」



 うわ。

 カナデ母さんがめっちゃブサイクな表情で俺を黙って見ている。



「ん。私の試練は黒子ちゃんを育てる事なのかもね。わかった……時間が許す限り教える」

「たのまぁ……じゃっそう言う事で。あの足が痺れて……座布団に」

「良いと思ってるの?」



 圧が凄い。



「いえ……反省してます」

「はぁ……良いわよ。別に正座しろって言っても座布団使うなって言ってないよね。話せない事もわかったし」




 乗り切った!!

 乗り切った!! 乗り切った!! 乗り切った!!


 今夜はすき焼きだ。

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