第657話 困ったときは話の分かる大魔女に頼みましょう
謎の爆発音から滝に向かう、他の者達には俺達が向かうから来ないように。と伝えての移動だ。
途中の分かれ道。
俺は良いけど、世話人の黒子がふらっふらである。
「あー…………」
「だ、大丈夫です青龍様。黒子はまだいけま……す」
いけてない。
このままではふらついて崖から落ちるまである。
「魔力切れだな。俺が見た感じヒノクニの人間って魔力無いよな」
「君が規格外なだけ…………妖怪だよね」
「青龍様は妖怪なんですか!?」
「に、人間だい!!」
「君ぃなぜに言いよどむんだい?」
本人が人間と思っても実際は妖怪や魔物でした。って話よく知ってるから。
再生(強)が付いている分。本当に人間なのかマジでわからなくなる時がある。
今度2人に相談でもしてみるか、いや鼻で笑われそうだ。
「とにかく。ほら」
「きゃ!」
黒子が俺の手を反射的に叩く。
「あっ…………も、申し訳ございません! 世話人として一生の不覚です。近藤様。どうぞ黒子を斬ってください」
黒子は絶望した顔になり正座になった。
短刀が握られていて切腹の構えだ。
「まずい!! 近藤っ!」
「いつも思うけど、一応私が年上でなぜに呼び捨てなのだろう。と……わかっておる。切腹には介錯がいるんじゃろ? 何腹をかっさばいて痛いじゃろうが一瞬で終わる。この私に首落としはまかせ──ぼぐうううう!!」
思いっきり近藤の腹を蹴った。
相手が女性とか年上とか今の時代に配慮しないと、と思う間もなくだ。
だってもう刀を握っているんだもん。
「ちげーよ!? 止めろって話。はい短刀は俺が握ったから」
「せ。青龍様。血が!!」
「馬鹿。無理に引き抜こうとすると余計に切れる! 短刀から手を離す!!」
「は、はい!」
黒子が手を離したので、血だらけの短刀をすぐにしまい込んだ。
滅茶苦茶に痛い。
浅い傷のほうが痛み大きいような……あっ再生した。
「な、何度も申し訳ございません! 悪いのは黒子だけでございます!! どうが一族の皆には罪を」
「どんだけ極悪当主候補だよ。いや俺が嫌だったら近藤に背負ってもらって」
「え、あの……嫌。と、いう訳では……その」
言いにくい程嫌なんだろう。
風呂も入ったし匂いもまだ……くんくん。大丈夫と信じたい。
「加齢臭じゃな。さて私が背負うとするかの。そこの本気で落ち込んでる青龍様よ、さっさと爆発音を確かめにいくぞい」
「うい…………」
分かれ道まで来た。
この間に俺の命令はなるべく守って貰いたいけど、出来ないから切腹などは辞めてくれ。と黒子に散々お願いする。
顔を隠したままなのに、なぜでしょう? と訴えかけているような気がするけど。
「とにかく、人死だけは避けたいの」
「ほう……」
近藤が意味ありげに呟く。
「言いたい事はわかるよ、あんたは局長だしそういう場面もあるだろうけど。理由は面倒だし、意味がないからな」
「やっさっしいのう青龍様は」
「はぁ……殺すよ?」
「君ぃ! ちょっと煽ったからってそれはないだろ!?」
馬鹿な会話をしてると、水竜の元滝が見えて来た。
その滝つぼ部分に黒い穴が開いているのが見え足を止める。
「そ、そんな……水竜様の滝つぼに大穴が開いています!」
「開いてるねぇ。おっと君! 1人で向かうとか危ないよ……これでも元神選組局長近藤。まだ腕は衰えてないさね」
「まぁまぁ。俺の思惑通りなら迷宮だったって事か」
1人元滝つぼに降りて穴まで行くと光が中に入らずに闇その物だ。
直系は3メートルぐらいかな? 大型トラックぐらい簡単に入れそう。
「ふむ。ちゃんとダンジョンだ。 青龍の祠もこんな感じだったんだろ?」
「はっ……そうです! もしかして青龍の祠が復活したのかもです!!」
「じゃっ確かめて見よっか」
「はい!」
多分違うけど。ここで黒子に『違う』と言っても結局は入る事になるし。
警戒心MAXの近藤が先にダンジョンに入った。
「これは……」
「空気が甘い感じがします! 青龍様。以前の青龍の祠と違います! ここは帰りましょう!!」
確かに甘ったるい感じがする。
つい最近感じた甘ったるさだ。
奥から人影が歩いて来ると、突然俺に襲い掛かって来た。
近藤が俺の前にでて刀を振るう。
流れるような、でも力強い刀の光だけが目に映る。
「ちぃ! 外したっ! 構えろ!!」
いとも簡単に受け流されるとピンクの影は俺に抱き着いて来た。
そのままくるっと横に反転して出入口に放り投げると見えない壁に当たったかのように空中でぶつかり床に落ちた。
「いっ痛いわ! 皆のお義母さんレイアママに何て事するの!?」
「…………本当に迷宮から出れ無いんだ」
「当り前よ!? 迷宮を広げない限り無理なんだから……こうしてここに要るだけでも奇跡なのに。あら……真虎徹をふるう人は久しぶりね、こっちの可愛い子はだれかしら? レイアママに紹介してくれる?」
「ええっと。酒乱のおばさんに、酒すら知らない子供……」
神選組元局長近藤。と青龍家につかえる黒子衆の1人で黒子。
「君ぃ!?」
「あっわるい心の声と反対の声が」
「君ねぇ……それよりも初対面なはず。サトリの一種か……」
サトリ。
俺ぐらいゲームマニアじゃないと解らない敵の名前だ。
妖怪の一種で人の心を読む事が出来る敵。
姿は様々で人型であったり男であったり、女という説もある。
倒し方は心を無にすれば勝てる……と言うか、無に出来るのか謎。
「申し訳ありません青龍様、お酒は飲もうと思えば飲めます」
「そうなの? ごめん」
「レイアママ。そう言う正直な所が好きよ……ええっと……ここはヒノクニよね? 凄い無理して繋げたのよ? 正直2日が限界ね」
「さすがレイア」
「もっと頼っていいのよ!? 可愛いくーちんのたのみだもの」
「いや。借りを返してもらうだけでいいから」
話が置いてけぼりな近藤と、黒子は既にレイアに捕まっていて必死に逃げようとしてる。が、逃げられない。
「じゃぁ詳しい話は向こうで」
レイアと連れていかれる黒子が離れるので後をついて行く、近藤が警戒しながらこそこそと話しかけて来た。
「君、あの子供と顔見知りのようだが……何者なのだ?」
まぁそれもそうか。
怪しさ120%だもんな。若作りの妖怪に見えなくもない。
「え。自称皆のお義母さん。正式にはメルナの母親で俺の義母になる大魔女」
「あの英雄のか」
少しは納得したらしい。
迷宮の中に障子が出て来た、近藤が穴を開けようとすると指が弾かれて悶絶している。
「あの……ここはダンジョンよ? 見た目通りの障子のわけないわよ?」
「母上殿よ。そう言う事は先に言うべき」
「世界の常識かと思っていたわ!?」
「あーヒノクニは迷宮ダンジョン少ないもんな」
ゲームでは迷宮ダンジョンは2個しかない。
1個はオロチ戦の迷宮ダンジョン。
後はクリア後に入れる素材取りの場所。
障子をあけると全面畳張りの部屋。
近藤が床を触って嬉しそうな顔をしだす。
「おお。また新しい畳だ……ごろごろすると気持ちいいだろうなぁ……ちら」
「いいわよ。靴はそっちにおいてね」
「本当か! ではお言葉に甘えて。ほれ黒子も一緒にするのだ」
「え? あっあの!?」
近藤は黒子をひっぱり新しい畳の上をごろごろしだす。
猫かお前らは。
「あら。くーちんはしないの?」
「子供じゃあるまいしさ」
「隣の部屋も畳よ?」
「………………ちょっとだけ様子見に行くから誰も入れないでくれる?」
「はいはい」
──
────
障子を開けて皆の所に戻る。
座布団の上で顔を隠した黒子が俺の方を向いて来た。
「青龍様! 敵はいませんでしたか!?」
「え? ああ……いなかった! そこ近藤、ニヤニヤしないでくれる!? もう隅から隅まで安全確認したんだから」
「はーい……じゃぁお茶にしましょうか」




