第656話 あれ。別に俺じゃなくても良い話じゃん。天才か。
朝である。
固い畳の上で寝ていた俺は横を見ると近藤が仰向けで倒れている。
まぁまぁ浴衣がはだけちゃって……リンゴが2つと……もっと大事なもんみえてるじゃーねか。
「子供かっていうの……」
軽く浴衣を治してやる。
と、同時に襖が開いた。
「青龍様おは……あっ申し訳ございません!! ごゆっくりどうぞ」
襖が閉まった。
まて。『ごゆっくり』とか何か勘違いしてるぞ。
何でこの状態かってのは昨夜、近藤がトイレに行くのに俺の腰ひもを持ったまま行くから、引っ張られた俺はそりゃもうあちこちぶつけ、寝るに寝れなく大喧嘩になり、最終的に綱引きで俺が勝ったのだ。
「んあ……ああ、沖田くーん迎え酒の用意を頼む」
「…………俺だって言うの。起きろこの酒女」
「……おっと? ああ、青龍家にいたんだったね。で、青龍様お酒を」
「俺に言うな。それよりも」
世話人黒子が来て、何か勘違いしてると軽く事情を説明する。
近藤は大きく笑いだした。
「なるほど。なるほど。この私と君がつがいとして見られたわけだ。小判1000枚と毎日酒を飲めるなら考えてもいいよ」
「俺が払うのかよ!?」
「だってそうだろ……君に対しては好意はあるが愛情はないんだし、顔はまぁ見なければ平気と思う」
酷い話だ。
そこまでして近藤を抱きたくない。というか2人で精一杯だし、これからも好きになる事は無いと思う。俺も近藤の事は好意はあっても愛はないし。
「それより、いい加減に腰紐とってくれない? 容疑者じゃないんだから」
「だって逃げるだろ」
「逃げない」
「まっ君が滝を復活させ青龍との契約を見せれば納得さ」
襖が少しだけ開いた。
黙って見ていると、世話人黒子がゆっくりとさらに開けた。
「あの。朝餉のご用意が……できました」
「どうも。勘違いしてるだろうけど」
「性の付くものなんじゃろうな。いやーこやつは中々寝かしてくれなくての」
「ちょ!? 何言うの?」
「は、はい」
朝餉の場所に連れていかれた。
場所は道場かな? 膳が2つ。
俺と今度が座ると、世話人黒子は何もない場所で座る。
「いや。食いにくいって……何となくわかるけど、君のは?」
「あ、後で食べますゆえ」
「…………今持って来い。ええっと青龍の候補からの命令」
「しかし」
「命令」
「は。はい」
黒子が道場から出て行くと、にまにました近藤と視線が合う。
「ほう。この色男」
「陰キャだよ。腹を空かせてそうな横で食うのもな……で。何となくの事情はわかったけど。クウガ連れて来てくれない?」
「…………前にも言っていた漢かの?」
「そう。魔法も長けてるし、あれならちょっと修行したら俺よりもすごい水竜呼べるよ」
近藤は味噌汁を飲みながら俺を見て来た。
「お主の事だから信用はおけるが、連れてくるまでになると何ヶ月かかるか。それまでどうするつもりじゃ?」
「……確かにそうか『転移の門』ないの?」
「あーあの神隠しの扉じゃの、城のは破棄だし。私だって大陸に行くのに船で行ったんだ」
道場の扉が開くと、申し訳なさそうに黒子画戻って来た。
俺は隣の板を叩くとそこに座る。
「もう1人先に食ってるけど、いただきます」
「あっはい。い、頂きます」
「頂いてるよ」
俺の食べ方をじっと見てくるので、振り向くと目をそらされる。
何?
「よ、色男」
「ち、違います!」
秒で否定された。
「あ。いえ青龍様は凄いかっこいいです」
「よかったねぇ愛人増えるよ」
「ふえねーよ!? 君達は俺の家庭をどうしたいわけ!?」
「え。青龍様はご結婚を!? では青龍家からお嫁様を貰い次代の青龍様候補を見つけ技の伝承を……」
してる。
届だしてない事実婚って奴なんだろうけどしてる。
めっちゃしてる。
「この国ではあまり喜ばれない重婚だよ重婚」
「良いだろ別に……ああ、そうだ……黒子に聞きたいんだけど。別に水竜たん……いや青龍を呼び出せれば誰でも良いんだろ?」
「はい! …………いえ……ええっと召喚した青龍様に認められれば……」
「もう一つ。青龍家に仕えてる人達って青龍の加護は受けてる?」
「はい!! 滝がまだある頃、青龍家につかえる人間はそこで青龍の加護を受けます」
酒を探していた近藤が俺を見て来た。
いや。俺の膳にも酒はないよ? 朝だよ君。
「君ぃ、加護とは?」
「適正……例えば火属性が強い奴に水属性の魔法が覚えれないように……いや正確には覚えれるだけど威力が弱かったりで、俺の魔法も水属性(強)があるから何とかなるわけで……黒子、水の魔法は出せる?」
「だ、出せるわけありません」
ふむふむ。
「で……滝ってダンジョンなの?」
「青龍の間です」
「いや。だからダンジョ──」
「青龍の間です」
「異国ではそう言うかもなぁ……が別にボスがいるとは事前に聞いてはいない。なぁ黒子よ」
「はい。滝裏には青龍の祠がありました……が先代様がお亡くなりの後、突然に消えました……」
ああ。だから滝にこだわるのか。
ボスは居ない……って事は別空間って事か、しかも消えた。
空間を維持できなくなった何かか起こったって事になる。
「しかし、君さぁ……細かい話にこだわるねぇ」
元ゲーマーに対して言ってはいけない言葉を。
「基本中の基本でしょ!? そこらの村人が「北東に祠があるぜよ」とか何で知ってるの? って情報知ってたりするでしょうが!」
──
────
朝餉を終えて関係者を庭先に集める。
人数が多くて道場内に入れなかったから。
簡易メガホンに口を当て大きな声で喋りかけた。
「あー……ええっと、青龍候補に選ばれたクロウベルです。一番後ろの人聞こえたら手を。そうそう……聞こえてるね。正直に言うと……俺は青龍家がどうなろうか知らん!!」
周りがざわざわする。
横にいた近藤が「君ぃ! 話が違うしツケが返せなくなる!!」と必死っぽいけど俺は知らん!
「ってかツルハシ1本で滝を戻せと言われても出来んわ!! ってなわけで……第1回!! 未来の青龍は君だ選手権!! はーパチパチほら拍手!!」
まばらな拍手が大きな拍手になる。
そしてそれも小さくなって静かになった。
「はい、どうも。本当は教師役のメルナが居ればよかったんだけど……ぶっちゃけ、俺よりも青龍に気に入られれる人間がいればいいんだ。って事。ぱっとみ50人ぐらいいるんだし1人ぐらい未来の青龍になれるんじゃないか? って事。まぁまず水をイメージ。大きな水じゃなくていい……雨粒、何だったらもっと小さくてもいい。空気中に水があるのは常識、その水をイメージ。とにかくイメージ。はい! 全員でやってみて。手のひらに出す感じで。別に汗と見間違たっていいから」
説明を終えた俺はネッシー型水竜たんを出す。
周りがどよめき、何人かはひれ伏した。
「最終的にこうなります」
背後から「ならんじゃろ」と文句をいう近藤の言葉は聞き流す。
なるんだよ! 俺がなったし!!
しばらくすると、8割ぐらいの一般黒子達が空気中に水滴ぐらいの水を作った。
凄いな俺なんて3日ぐらいかかったぞ。
「あわわ! 青龍様!?」
「ん? うおお!」
呼ばれたので振り向くと、世話人の黒子の手から水球が出ている。
何とまぁ……原石いるじゃん。
俺が見ていると、世話人黒子が意識を無くして倒れる。
他にも倒れた人数が反すうを越えた。
「はい、終了! 魔力切れ。続きは明日、解散!!」
まっこんなものだろう。
「ってなわけで……近藤……その」
「言い出せないって事は夜の事かい?」
「ちげーよ。本当にそうだったらどうすんだよ!?」
「国を救った英雄だよ。本気なら断れないじゃないか」
そこは断れ。
「手紙。ええっと冒険者ギルドあるんだろ?」
「ああ。傭兵宿かい? あるけど……そのクウガとやらを呼ぶにしても時間はかかるだろうね」
「いやさ。最初そう思ったんだけど……もっと面白い事出来ないかなって……聖都にいるメルナ宛に手紙を出してくれる?」
「いいけど、君……話聞いていたかい? 何ヶ月も」
森の中に爆音が聞こえた、音は滝があった方角から聞こえ木々が騒めき鳥が飛び始める。さすがだな。
「俺はちょっと行くけど……」
「当然私もいくよ」
「黒子も行きます」




