第655話 青龍家の血筋情報
飯が終われば風呂である。
旧青龍家。あちこち傷んではいるみたいであるが立派な作りで、近藤が言うにはヒノキ風呂との事。
贅沢な。
襖がゆっくり開くと世話人黒子が頭を下げている。
衣装が衣装なので誰もいないのに襖があいたのかと思って内心はびっくりだ。
「お風呂の準備が出来ました」
「ああ、どうも」
俺が立ち上がると、黒子も緊張したような声で「お背中を御流しします」と言って来る。
「別に背中ぐらい自分で洗える」
「…………で、ではその御足を」
「足だって手届くけど?」
「お手はどうでしょう……?」
「いや。全部自分で──」
「ああ、そこの黒子君。この青龍君は意味が解ってないんだ」
まだちびちび飲んでいる近藤が話しかけて来た。
意味って。
「風呂に入るだけだろ?」
「君も破廉恥なくせに鈍いねぇ。若い女の子がお風呂で背中を流す。もちろん汗だけじゃないだろ?」
酒が入っている徳利の先を手で前後に撫でまわし始めた。
あーー! そう言う事!?
お大臣じゃないからわからんわ!!
「ってか。え? じゃぁ女の子!?」
「黒子は黒子です。性別はありません」
いやあるだろ。
「君は『じゃぁ』って……こんな可愛らしい子を何だと思っていたんだい」
「声からして7、3で男の子かなぁって」
「君ねぇ。まっ黒子君そう言う事だ……この男は幼き子よりも年増が好きなんだ」
「わかりました。黒子の1人であるチヨ婆様を呼んでまいります」
「まてまてまてまて!!」
目の前で襖が閉まる直前に駆け寄って手で押さえる。
名前からしてもうアウト!!
背後で近藤の忍び笑いと「あーおもしろいな」と小さい声が聞こえてくる。
黒子は顔を布で隠しているので表情はわからないが、不思議そうな感じで俺を見て要るような気配が。
「若すぎましか?」
「チヨ婆って何歳?」
「100歳から上は数えてない。と」
「本物の妖怪じゃねえか!! あのねぇ……風呂は1人で入る」
「え!? では警護は」
「要らない!」
あー警護もかねてるのね。
いや。世話人黒子もチヨ婆さんも警護出来ないだろ、1人は介護だよ介護。
「しかし。決まりで……」
「しつこい」
「まぁまぁ黒子君。君もチヨ婆さんとやらも何かあれば盾にもなるまい。ここは私が警護しよう。これでも元局長さ」
「いや。あんたもいらん……」
「じゃぁ黒子君。チヨ婆さんを呼んで来てくれた前」
「はい!!」
襖が力強くしまろうとする。
俺は片手で押さえているんだけど、反対側では世話人黒子が全身を使って閉めようと。
「わかった! わかったから!! ええっと近藤に任せるから。チヨ婆は要らない!!」
「…………わかりました。ではその手配をしてきます」
襖を閉める力がなくなり世話人黒子は土下座するように頭を下げて下がっていった。
「おい。近藤……いや、近藤さんさぁ……」
「今さら女の裸見て興奮もするまい?」
「………………そりゃコントロールはってそう言う問題じゃなくて、あんたは」
どうなんだって話だ。
「私も今さらだ。集団生活で男隊士と湯浴びをした事もよくあるのさ」
ならいいのか?
「さて、さっそく行こうじゃないか。いやー風呂なんて何ヶ月ぶりかなー」
「ん? どういう意味だ。ってか座ってる俺の服を引っ張るなって歩くから」
「風呂を沸かす薪が買えなくてね、安心したまえ水浴びはしてるよ?」
「だったら先に入れ。俺は後から──」
「警護にならんだろ? ヒック」
そもそも酒飲んで風呂に入るな! 溺れるぞ!!
あっでも俺と一緒なら大丈夫なのか、どっちか倒れても助ければいいもんな。
じゃなくて!!
脱衣所に放り込まれると衣服をはぎ取られる。
「おっはっはっはっは。それそれそれ」
「きゃー辞めてー! 自分で脱げるっての!!」
「ほう。中々ご立派な」
「覗くなよ!?」
かぽーん。
以下省略。
風呂上がり浴衣に着替え部屋に戻ってくる。
中々の風呂だった。
檜風呂ににごり湯、俺の家は露天であるけど檜ではないし、中々の広さで大人4人ぐらいは入れそうなぐらい大きいのも良かった。
俺と近藤が入るには贅沢過ぎる。
あれよ? 1人だったら最悪はたらいでもいい派だよ?
「青龍様。お布団のご用意が整っています」
「…………1人で寝たいから余計な事しないでね」
「は、はい!」
静かになった部屋で、近藤が添い寝しようか? と提案してくるけど、お断りだ。でも逃げないように腰に縄はつけられた。
「あのね……俺が逃げるように見える?」
「見える」
「間髪入れずに言うなっての」
仕方がない。
縄ぐらいは我慢する、部屋の中央に布団がありペロッとめくると妖怪がいた。
全身は黒装束、顔は皺だらけ。俺を見ては入れ歯が飛んだ。
「うおおおおおおおおおお!?」
ガラっと襖があくと世話人黒子だ。
「も、申し訳ありません。チヨ婆様……探したのにもうここにいたんですね。青龍様は夜伽は要らないって」
「ふぉっふぉっふぉ。残念だわい。しかし今度の青龍様はイケメンじゃのう……まるでカナデ様みたいなのじゃ」
「いいから、青龍様が困っている」
へぇ。
「ええっと、チヨ婆さん。俺がカナデと似てるの? こういう時って爺さんと似てるって言わない?」
「先代青龍様とカナデ様は血は繋がっておらぬのでな」
初耳である。
てっきり先祖代々の血が繋がっているのかと。
ああ。そうか……普通に考えれば先祖代々の血が重要なら他から嫁を取るか。
「え。じゃぁなんで途絶えたんだ? 普通に養子でも」
「今回の青龍様は中々に頭が回るようじゃの。青龍様の籠があっても、青龍に好かれる人物が居なくての」
「じゃぁ俺クラスになれば別に誰でもいいってわけ?」
「そのようなお人がいるかどうか……では失礼」
チヨ婆は、俺が寝る予定の布団にぬくもりを置いて帰った。
「では。青龍様失礼します」
「あ。うん。おやすみ。ああそうだ、朝まで人払いしてくれる? ぐっすり寝たいし」
「わかりました」
1人になった部屋でぐるっと考える。
青龍家は現在、青龍の使い手を探してる。
俺が丁度該当された。
が!
別に俺じゃなくてもいいらしい。
「クウガでも呼ぶか……いや! この布団湿っているんだけど!!! ねぇちょっと寝たくないんだけど!!」
人払いしたせいなのか誰も来ない。




