第652話 江戸は消え維新の鐘が鳴り響く
やって来ました。inジャパ……いやヒノクニ。
速度がゆっくりになり5階建てぐらいのビルの屋上に着地した。
「あまりのなつかしさに声が出ないのかい?」
「何一つ懐かしく無いんだけど!? 江戸の街並みはどこ!? あっちこっち2階から5階建の建物あるし、道には人力車じゃなくて馬車通ってるし……あっちの奥に見えるのは蒸気機関か?」
「はえー……ヒノクニ自慢の汽車を見ただけで当てるとはさすが芽瑠さんの弟子だのう」
「…………どうも」
一応は褒められたので返事をしてみた。
突然に屋上への出入口が開くと1人のスーツ姿の女性が走ってくる。
その女性が加速して近藤の胸に飛び込んだ。
「近藤さああああん…………やっぱり近藤さんですね! 光が見えたので急いできました。それにしても酷いです。この沖田翔子を置いていくとか!!」
「がはっはっは。すまないねぇ……貧乏会社で旅費を工面するのが大変だったんだよ」
「会社? 神選組は?」
「やや!? そこにいるのは!?」
最初からいますけど!?
近藤の胸で涙を拭いた女は俺を見るなり、突然に銃を構え4連射をしてきた。
あっぶねえ!? ギリッギリで避ける。
「な、何するの!? 君あれだよね……ちょっと大人っぽくなったけど4連突きの沖田だよね」
「スタン君! 本物なんだね!? いや。余りにも変わらなさ過ぎて妖怪かと思ったんだ。突きと言うと刀の話かな? ……今の時代刀よりも銃だよ銃! 見たかい? 見事な4連射」
前に会った時から考えると20代中盤かな?
と、なると抱きつかれているほうの近藤は40代になった所か。
むっちり体質で老けた様子はない。
俺よりもこっちのほうが妖怪だろ。
「何を見ているんだい?」
「いや。あんたも変わらないなぁって」
「君達ほどじゃない……ええっと、まっ歩きながら……」
近藤が扉に向かうので俺も沖田もそれぞれついて行く。
「神選組だったね……その潰れた」
「潰れるの!?」
俺の記憶では街のおまわりさん。なイメージだったけど。
「スタン君。街並みを見たかい? 今では妖怪も人間も比較的に仲良く。トラブルは減少、将軍お抱え神選組の仕事はなくなり、新しい警察という組織が出来上がり変わったんだ。ね近藤さん」
明治維新みたいな物かな?
「沖田の言う通りでね。将軍マサムネ様も地位を退いて……今では不死山にいると噂をされているが……とにかく直轄の我々はお払い箱。今の時代は……みんしゅうの時代らしいよ」
「なるほどねぇ……」
まぁわからんでもない。
俺が飛んできた時も城のあった場所に城が見えなかったし。
「新時代を目指したもの、新時代になると旧体制はやっかい者。というわけでね……それぞれの隊士達も国に帰ったり残った者達も地方を任されたりで……我ら余りった人間は警備会社『見回り組』という訳さ」
「まっいいんじゃないの? 平和なんだろ」
歴史に詳しくないけど日本の歴史であれば幕末末期や明治初期は物騒だしな。
旧幕府と新幕府との戦いがあったのも習った。
「はっはっは。さすがはオロチを倒した第一英雄だ。言う事が違うねぇ」
「別に俺一人じゃないしな。あれも……で、俺としてはさっさと依頼を終えたい」
ビルの非常階段から1階に降り隣の建物へと入った。
見た目はもう潰れそうなあばら屋。
看板に『神選組』と書かれてその上にペンキで見回り組と訂正されている。
近藤が玄関に入るとあちこちに廊下が見える。
その左右にふすまが見えて旧日本家屋と言った所か、その廊下にはバケツやたらいが置いてあり雨漏りのため。廊下にも穴が開いていたり、障子も穴だらけである。
「…………ええっと……金を貸す所を教えようか? ……クウガなら貸してくれると思うんだけど」
「スタン君! 我々神選組は心まで貧しくなった覚えはないよ!?」
「沖田よ、今では見回り組だのう。いやはや……平和過ぎるのも困った事で」
つまりは警備会社を作ったけど、平和過ぎて警備する場所がないのだ。
わからんでもない。
自称真祖の竜が言うには『平和過ぎると何も進まないしー』とギャル語で言われた事もあるぐらい。
ゲームでも最初の村で何事もなかったら何事もなく終わるもんな。
あの! 牧場を経営するゲームでさえトラブルは起きる。
最初から平和だったら移住して牧場を経営しました。と開始2分で終わってしまう。
居間といったらいいのか座布団とテーブルのある部屋に通された。
「まぁ好きに座ってくれ。沖田……その、せっかく帰って来たんだ。あるんだろ?」
「は! もちろんですよ! 近藤さん」
沖田が、スっとヒョウタンをテーブルに置いた。
きゅっぽん! と音を立てて栓をぬかれると、テーブルの上にいつの間にか置いてあるコップに白い酒が注がれる。
どぶろくか。
「近藤さんが飲み過ぎて、酒は自家製だ!」
貧乏なのってそこじゃないの……?
「くうう! やっぱり効くねえ。沖田、もう1杯」
「しょうがないですね」
「ぷっはー! 沖田、もう1杯……沖田も飲め」
「本当にもう……1杯だけですからね? では」
こんな調子で1時間ぐらい見せられると、目の前にいるのはアルコール臭い女が2人だ。ちなみに俺は1杯しか飲んでない。
「帰っていい?」
「ならん!! 英雄を帰らしてしまっては面子にかかわる!!」
「そうだぞ。スタン君!! 君が帰ると違約金が凄いのだ!! ですよね近藤さん。いえ局長!!」
「とにかく、今日は泊たまえ……明日。明日には……あっ」
「ん?」
近藤が口を押えた。
ちょ!?
「っぷは! 1滴も無駄にしないぞ! はっはっは」
近藤は飲みこんだ。
が、それを見ていた沖田が結局吐いた。
──
────
久々の布団は良い物だ、それが煎餅布団でも。
普段はベッドだし布団なんて使ったのはイフの温泉街で旅館に泊まったぐらい。
結局後片付けはこっちがやるから。と、言われ別の部屋に寝かされた。
穴の開いた障子であるが、一応開く。
廊下があり突き当りはトイレなはず。庭先に水が出てる場所があるからそこが洗面所だろう。
トイレをあけると尻があった。
「おや。沖田くんかと思ったら……」
無言で扉を閉める。
鍵ぐらいかけて欲しいけどね!!
縁側でトイレ待ちをしていると、近藤がやっと出て来た。
「君も中々に助平なんだねぇ、その調子でちょっと沖田と子を作って──」
「しないっての! ってかマジで漏れそう」
話をさっさときってトイレを済ませる。
ちなみに和式。
外で手を洗い廊下に戻ると近藤も縁側で待っていたようだ。
「沖田は?」
「沖田君なら二日酔いで寝てるだろうね。いやはや飲みすぎは良くない。本当によくない」
「ペース早かったもんな……さて、もうそろそろ本当の依頼を教えてくれない?」
「いやはや。さすがは英雄君だ」
「英雄じゃないからな……英雄とは無報酬や善意で動く奴ら、神選組だって英雄じゃないだろ?」
「確かに! 汚い仕事もそこそこやった…………そうオロチの復活は嘘なんだよ」
だろうな。
復活が早まったらもっと国が一大事になってる。
近藤がどれぐらい旅をして来たのか知らないけどわざわざメルナを呼びに行って戻ってくるまでのロスタイムを考慮しないといけない。
前に使った『転移の門』もあれ城と一緒に潰しただろうし。
「四神家ってのあってね……わかるかい? ほら朱雀──」
「朱雀、白虎、青龍、玄武か? それこそ10年前にそれらを使う魔法使い……陰陽師か。とにかく襲われたな。あれって元々はヒノクニじゃないだろ、陰陽道ってのがあるのはわかるけど」
そもそも、ゲームはごっちゃになりやすい。
4神の発祥は日本じゃないし平安時代に取り入れられた技みたいなものだ。
元は平安京か? まぁそこから俺の記憶してる時代まで京の街を守っている。
その陰陽道は東京でも受け継がれて江戸を作る際にも使われている。
日本が独自に改良したって感じかね。
「いやぁ博識だね。じゃぁ鬼門はわかるかい?」
「場所までは」
「現在は……なぜか知らないけど青龍の家が廃れてねぇ……そこからどうも悪い気が来るらしいんだよ。いやぁなぜだろうねぇ……青龍の廃屋から君のへそのをが見つかってね……そこは本当なんだ」
「………………つまりは。俺にそこをどうにかしろって事?」
小さな庭先に突然人がなだれ込んで来た。
老若男女様々でざっと20人以上。縁側に座っている俺の前で全員膝を立て顔を伏せる。
「近藤様、青龍様、お迎えに来ました」
「…………帰っていい?」
近藤は黙って首を振った。




