第651話 アレから10年近くって事!?
「これで今日の分は終わりなのじゃ」
「うい」
メルナの地下室。
ひねりの無い部屋の名前なんだけど実質そうなので誰も何も言わない。
相変わらず物が散乱していて汚い、そこで俺はエリクサー改を飲んでは空き瓶を返却した。現在の姿はすっかり大人…………大人だよな。
「…………パンツの中を確認して何を言いたいのなのじゃ?」
「何でも無いです」
「そもそもワラワが調合した奴なのじゃ。安心するなのじゃ」
「うい」
相変わらず適当な返事をしおって。とブツブツ言いだしている。
適当なのはメルナも一緒だからね。
「最初はそうじゃろ、生きてるのが不思議なぐらいじゃしの、さてこちらも飯にするなのじゃ」
メルナが立ち上がるので俺も立ち上がる。
階段を上るのにメルナの尻を見ながら家まで戻ると、アリシアがご飯だよー。と。
本日の昼飯は蕎麦。
珍しい事もあるもんだ、やっぱ蕎麦はいいねぇ日本人って感じがする。
今の俺は日本人じゃないけど。東方のヒノクニ。
向こうの言葉で書くと『火の国』だっけかな……とにかく懐かしい味だ。
俺とメルナは箸で食べ、アリシアはフォークで食べている、まぁこの辺はしょうがない。
「と、言う事で近藤からの依頼なのじゃ」
「ぶーーーーーー!」
「クロウ君、メル先生の顔が汁まみれだよ!? ちょっとえっちだね」
「はぁはぁ。言葉だけ聞くとな。じゃなくて近藤って誰!? 最近そんな人来た?」
「ほれ東方の国にいた娘じゃ神選組局長……とかいっていたような……まぁその偉いんじゃろ。この蕎麦持って来たじゃろ……」
「そうなの!?」
確かに蕎麦は珍しいと思ったんだ。
しかも珍しいタイプのほうで純100%の蕎麦とかアリシアが説明していたっけ。
「それは良いんですけど、メルナってあんまり人を覚えないというか」
「ワラワだって覚えはするのじゃが、ほれどんなに偉い奴でも60年ほどで死ぬじゃろ? 数回あっただけの人間を覚えろ。というのも面倒じゃしな。国の名前もそうじゃ聖都タルタンなんて何度も滅んでるしの」
「たしかに」
「2人ともそれはどうかと思うけど、がんばろうよ」
俺だって1回2回あっただけのモブとか覚えてるわけがない。
今回は覚えているけど、だんだら羽織で某組織を思わせる名前も神選組と言う当て字の武装集団。
「今の将軍って……ムラマサ? あの子供も大きくなったかね」
「どうじゃろうな。まぁその近藤がわざわざ手打ち麺を持って来たのじゃ、話ぐらいは聞いたらどうじゃ?」
「そりゃこの場に居たら聞きますけど……居ないんだから……ずるっ」
突然にクローゼットが開いた!
普段はコートや帽子をしまっている所。そこから160㎝ぐらいで胸の部分はサラシを巻いた筋肉質の女が笑顔で出て来たのだ。
食べていた蕎麦を吐き出す。
「おや。ワサビが効いていたかね?」
「ぶは……はぁはぁはぁ。どこに要るんだよ!!」
「そこのおなご達から隠れていたほうが面白い。と言われてな」
アリシアを見ると笑顔でどきどきしたよね? と軽いイタズラだ。
メルナも共犯だったのだろう、普通のすました顔をしてる。
「それは良いんだけどだぁ……何かトラブルなわけ?」
「トラブルが無ければ旧知の友に会いに来ては駄目か?」
「そこまで旧知の友じゃないし」
俺が手伝ったのは、せいぜい将軍を助け国を安定し、オロチだっけかな蛇の魔物を倒したぐらいだ。
「あっでもメルナと恋人になった場所だし、それを考えれば恩人──」
俺の視界が真っ白になる。
意識が戻ると食事は終わっていたようで窓の外から入る光が夕暮れの光になっていた。
周りを見るとアリシアと近藤が将棋をしている。
「かー!! 参った。本当に初心者か?」
「今教わったばっかりだよ!? あっクロウ君、再生おかえりなさい」
「ただいま?」
「今ね近藤さんに将棋ってのを教わって、手加減してもらった所」
その近藤のほうは本気でやった。と、言う顔だ。
「吹き飛ばすのはいいんだけど、一言吹き飛ばす。って言って欲しい。知ってる? 怒りっぽいのって年取った証拠なんだよ? でメルナは?」
「後ろ」
俺が振り返ると杖を構えているメルナが俺を見ていた。
「よし。ロウよ今から吹き飛ばすなのじゃ」
「待て待て待って!!」
「……冗談なのじゃ、ほれそこの近藤が本気にしてるじゃろ」
絶対冗談じゃないよな。
飯の途中で吹き飛ばされたので若干腹が減ってる気がする、テーブルの上の煎餅を口にいれると懐かしい味だ。これもどうせお土産だろう。
「だってメルナは堅い物が食べれないから」
「んな!? ドアホウ! 煎餅食いながら言う言葉なのじゃ!? よし。吹き飛ばす!」
「水盾!!」
俺の水盾がメルナのライトニングフルバーストを相殺……しなかった。
目が覚めたら日が出ていた。
ソファーで寝かされていたらしく。
周りでは女性3人が朝食の準備中、今日の朝は焼魚とみそ汁の匂いがして腹が思いっきり鳴る。
「あの、メルナ……」
「お。やっと起きたのじゃ。魔力減ってるから連続での再生の時間がかかっているようじゃな」
「ようじゃなって……原因は俺じゃないきがする」
「2人とも朝食出来たよー」
時間の感覚がおかしくなりそうだ。
昨日なんて1日再生に使って何もしてないぞ。
当然のようにいる近藤を入れて4人で朝ご飯を食べる。
「で。依頼って何?」
「んあ? あもうごうごんごな、あにぼ、ゴクン。でな」
「いや。口の中からにしてから喋ってくれない?」
「おお。すまん! 余りにも旨くてな……オロチ墓、そこの魔力が高くなっているらしいのと、4神家の墓からお主の名前が出たヘソの緒が見つかっての」
何で?
「何で? っと思わず心の声と同じ言葉が」
「なに、元々お主は黒髪でヒノクニ顔だ。カナデ……という名前に聞き覚えは?」
「無い!」
あー味噌汁が旨い。
アリシアとメルナが席を立つ、おかわりかな? それぞれ、俺の両肩に手を置いた。
「クロウ君って嘘つくとき言い切る事が多いんだよね」
「話を即終わらせようとする癖じゃな……ロウよお主の母の名じゃなかったなのじゃ?」
「そ。そうだったかなぁ……ってかメルナが人の名前を憶えてるとか」
「ワラワも大事な名前は憶えてるのじゃ」
少し照れくさそうに言うので、逆に俺が恥ずかしい。
俺の事を調べていたのだろう。
そりゃ俺だって忘れてないよ。父の第二婦人……というか愛人? だった母親の名前だし。ほらサンドベルに引き取られる14歳ぐらいまでは一緒に暮らしていた記憶もある。
「何。飛来の魔法でアリシアと近藤も連れてワラワも行くのじゃ。そうトラブルはおきんじゃろ……」
「かたじけない!」
──
────
「で……この体制は?」
メルナが中央に立ち、アリシアがメルナに抱き着く。
そのアリシアに近藤が抱きつく。
最後に俺が腰にロープを巻かれて、その先を近藤が持つ。
「4人となると魔力消費と4人分の魔力調和が激しくての……ワラワとて失敗したら1ヶ月は無理じゃろ」
「いや、それは解っているんだけど。俺が言いたいのはこのロープで」
「クロウ君、そのロープは特別性で頑丈なんだって」
いや。だから俺が言いたいのは……普通ここは近藤じゃないの?
もしくは俺が中心でメルナとアリシアが抱きつくのが普通では?
「じゃっ飛ぶなのじゃ」
メルナの周りに魔力が集まっていく。
俺の体や近藤の体から魔力が色をついて出てくる。
ふむ……。
「クロウ君。どうしよう凄い緊張する……メル先生も緊張してるみたい」
「……そこ静かに。失敗すると何所までも飛ぶしの……失敗した時に何十人の兵士を異空間に飛ばした事があったのじゃ」
「初耳なんですけど!?」
「言って無いからなのじゃ」
そりゃ普段2人とかでしか飛ばないよね!
4人は厳しいんだって。
いや、まて緊張を解けばいいのか。
俺はメルナとアリシアの特定の場所を摘まんでみた。
「ばっ!?」
「きゃ!!」
「ほう! これが破廉恥と言う奴だ!!」
特定の場所はどことはいわな……うおっ!? 体が腰から一気に浮き上がる。
眼下に映る地上では魔力の色が消えたメルナの体が震え、俺に中指を立てて来た。アリシアのほうは先端を必死にガードしたままだ。
「はっはっはっは、これは凄い浮いている!! これであればヒノクニにすぐに帰れそうだ」
「おかしい……緊張を解こうとしただけなのに。なぜ俺と近藤だけが……」




