第648話 リターン草……妙だな……そんなアイテムは初耳だ
帝国酒場の『竜のしっぽ亭』何時もの親父に何時もの個室に入れてもらっての祝勝会。テーブルの上には食べきれないほどの料理が並んで。
袋を広げ口を押えているユーティーを眺めてる。
あっ出そうとしたのを飲み込んだ。
俺はいいけど、まじで辞めてくれない? さっき店主が『毒は入ってないぞ』とちょっとキレ気味に心配していたし。それに対してユーティーは『あまりにも美味しくて』って言うとまんざらでも無い顔で戻って行ったのを見た。
「ギルドの調査費ありがとな」
ゴブリンの巣を壊滅させた事よりも調査費、周りの修繕費で金貨200枚取られた。
「うっぷ……いや、それぐらいいい。これでもレイア様にはたっぷり資金を貰っているのだ」
「で、俺は帰るけど」
「私はまだ回収するアイテムが残っているからな……次の場所に向かう!」
「ああそう」
あえて場所は聞かない。
巻き込まれるから。
「次はリターン草でも探そうと思う」
「だから言うなって……ほら、お前が悪い! そう言う所が悪い! 滅茶苦茶悪い」
「貴様なぜ怒るのだ?」
「巻き込むから」
「巻き込まない! 1人で探せる……所で……採取場所知らないか?」
「うーん…………いや。ちょっと待て」
これでも『マナ・ワールド』は攻略ページを見て修正するぐらいには好きだったゲームだ。なのに、俺はそのアイテムを知らない。
リターン草。
名前からして、空間転移。魔法転移。の類だろう。
転移の扉でも発動キーワードは『リターン』である。
「悪い。似た魔法は名前は解るけど草。となると解らん」
「そうか……レイア様からは、無理にとりに行かなくてもいい。とただ長寿族じゃないと、とか言っていたきがする」
考えながら素揚げし塩を大量にまぶしたエビを口に入れる。
そのまま酒を飲むと美味しさが広がるのだ。
「無理にとりに行かなくてもいい。が、あると欲しい……か。長寿族の方が好ましく……と、言う事は魔力の関係か。俺も魔力はあるほうだし。そもそも『リターン』の魔法取得イベントでも草の名前は見た事が無いな……あの婆さん生きてるかな」
「何の話だ?」
移動呪文『リターン』古代魔法の一つで街から街に移動する魔法。
大量の魔力消費をする魔法でクウガが覚えれる魔法であるが、クウガは覚えてない。
古代魔法を研究してる婆さんが教えてくれる。というイベントで
まぁ頑張ってくれ。
俺としてはそれぐらいだ。
「いや、こっちの事。1人で行けるんだろ?」
「当り前だ1人で出来る」
腹がいっぱいになった所で握手して別れる。
俺もユーティーもあの日の事は意図的に避けてだ。
冒険者ギルドの隠し地下通路に行き転移の門を抜ける。
それを数回繰り返すと自宅の近くだ。
辺りは夕暮れで結界内に入り込む、そのまま自宅の扉を開け……留守番組の様子を見る。
「ただいまって……ノラ……か?」
「っ!? クロー兄さん!? こ、これはその違うから!!」
何が違うのか、家に帰るなりバニー姿のノラが銀トレイを持って踊っていた。天井からはミラーボールがあり、部屋中が七色に光ってる。俺の自宅で一体なにが?
「あら。ろーちん、早かったわね」
ソファーに座って手拍子をしていたレイアは喜んだ顔だ。
「…………あの、俺の家を勝手に改造しないでくれる?」
「これはその……とりあえず、ボクは着替えてくるから」
ノラが足早に部屋に消えていく。
足を組み直した長老様は笑顔満面。
「で、ユーティーとえっちはしたのかしら?」
「しないよ!? 二言目に何言うのこの人は!?」
こんなの皆に聞かれてみろ、ノラはジト目になるだろうし2人は以下略。
仮にもメルナの母親だろ!?
…………いやメルナの母親だからか?
「それが聞いて、ろーちん。あの子ったら1000年以上前にあげた興奮剤まだ持っていたのよ!? いい加減に使ったら? って言うとね。もう絶望した顔で『レイア様が言うのであれば、その……はい。がんばります』って」
「あんたの差し金かーい」
「何を言っているのかしら? いくらユーティーだって好意的じゃない無い相手にはしないわよ? ねぇねぇ何がどうなったの!? 皆のお義母さんに教えて!?」
ゴシップ好きのおばさんだろ。
「とにかく、だからか……魔力の放出すれば興奮は治った……とばっちりはこの頭に聞いてくれ」
預かったゴブリンの生首をレイアに渡すと、レイアはその首にキスをしてマジックボックスにしまい込む。
「あら、お婿さんは性よりも戦いのほうが好きなのね」
「それこそ相手による。どいつもこいつも……」
「でもとても残念。未来視でも不確定だったし、いい加減あの子にも1人立ちして欲しいんだけど」
「次にインクとノート、これでクウガが生き返るんだろ?」
レイアはそうそう。と言ってはテーブルに広げる。
羽ペンにインクを付けてパラパラと広げ始めた。
「ありがと。じゃっ……あったあった。ここ見て?」
レイアはノートを開くとクウガの名前を見せてくる。
途中で見たのであまり感動はない。
「ここにこのインクで横印を書いてこれで肉体が大丈夫なら魂は戻るわ。そうねぇ代わりにクロウベ────っあら、くーちんったら昼間から皆のお義母さんの手を握って書けないわ? それとも寝室に行く?」
「辞めて!? 何考えてるの!?」
「面白いと思って?」
面白さで人の名前を死神ノートに書かないでくれるか。
扉が開くと普段着になったノラが俺とレイアを見ている。
「いや、これは! 俺が悪く無くて」
「大丈夫だよクロー兄さん」
ほっとしてソファーに背中を預ける。どっと疲れた。
「うい。まぁとりあえずこれで今回の依頼は終わったって事でいいのか?」
「待ったくだよ……ボクも学園側に長期休暇の申請したし、ちょっと疲れた」
「ノラっちはノリノリで踊っていたのに?」
俺が見た時も銀トレイを扇子のようにしてノリノリだったしな。
深くは聞くまい。レイアはそのままゆっくりとくつろいでる。
うん。
「いや、帰らないの!?」
「もう帰らすの!?」
「クロー兄さん流石にそれは……遠い所来てくれたんだよ?」
遠い所来たからこんな騒動になってるんだけど。
「あ、そうだ。物知りおばあちゃん。リターン草って何?」
「クロー兄さん……女性にその言い方はないよ?」
「レイアだからそう言ってるの。この見た目でもメルナよりも上だよ?」
「個人的に欲しい。と思った草だから無くても良いのよ。とても貴重な草でね……時間や転移アイテムの材料になる事が多いわ」
へえ。
「それでね。なんと! 聖都教会地下にあるらしいのよ!!」
脳内がフル活動する。
おおっとここでクロウベル選手。運命の選択肢が出た模様。
A。アイテムを取りに行く。
B。アイテムの話を聞かなかった事にする。
この2択だあ。
当然、トラブルには巻き込まれたくない。普通ならBを選択するが……アイテムはちょっと気になる。
「じゃぁ、ボクが取りに──」
「待てノラ!」
「な、何かな? 急に大声を出すと驚くんだけど……もしかしてクロー兄さんが取りに行く? ほらトラブル起きるかも知れないし。魔力が少ないボクなら問題ないと思うんだ」
「そ、そうだな……ここはノラに任せて」
「うん。そのほうが良い明日にでも」
──
────
翌日。『精霊石』を守っていたアリシアが驚いた顔で俺を見て来た。
「クロウ君!? どうしたの聖都タルタンの教会だよ?」
「本当、どうしたんだろうね……ほら自分の眼で確かめたいじゃん……」
「何かげっそりしてる?」




