第646話 人間には触れちゃいけない心の傷が! あれ……俺の場合傷じゃない……
星々の光が雲で隠れる。
薄暗い夜空のした俺とユーティーはゴブリンの巣へと潜り込んだ。
なりふりは構ってられない。
巣の中は体育館ぐらいの広さが埋まっている感じ。
小部屋が上から見え食料庫に武器庫、等間隔に松明も見えたりしてちょっとした兵舎と同じだ。
「これは凄い」
「だよな。俺が昔みたゴブリンの巣は集落って感じで、そりゃもう暴力が支配していたしな。こんな軍隊みたいな所じゃない……とりあえずバレないように進むぞ。いいか絶対に罠なんて踏むなよ」
「貴様じゃあるまいし」
そうユーティーが1歩動くとカチっと音が鳴った。
俺は振りかえるのに壁に手を当てると壁が少しくぼみカチっと音が鳴る。
いやいやいやいやいやいや。
「冗談だろ……普通入口に罠置く?」
「全くもって信じがたい。入口に罠なんて何てセンスのない罠だ」
「そうだよな」
「貴様と意見が合うのも珍しいな」
で?
「…………」
「…………ええっと、どうする?」
「貴様は人に頼る事しか出来ないのか?」
「そっくりそのまま言葉を返すが、いや……俺は最悪再生(強)あるから良いんだけど……ユーティー無いよな」
ユーティーの顔が絶望した顔になる。
「き、貴様……まさか私を見捨てるのか!?」
「最悪そうなるかと」
「叫ぶぞ。叫んでゴブリンを呼んでやる、死ぬときは一緒に」
だから再生があるから確実に死ぬのはユーティーであって……。
「貴様! 後ろだ後ろ!!」
「あっやっぱり……?」
さっきから気配が濃いなって思っていたんだ。
俺を見下ろすように大きな影が出来て生臭い匂いも鼻に突く。
いきなり襲って来ないから判断を迷っていた所だ。
「人間ヨ。何の用ダ」
「…………その前に罠の解除できる?」
「お前!?」
「まぁまぁユ-ティー落ち行け。話通じるっぽいし」
背後から叫び声がすると、眼下に見えていたゴブリン数十人が一斉にこっちを見た。武器を持って走ってくると、敵意はなく罠を踏んだ手足に力をいれてくれた。
ジェスチャーで行け。という合図だ。
そっとそれぞれ離れると、ゴブリンロードが、こっちだと言わんばかりに歩き出す。
後ろをついて行くと背後で大爆発が起きた。
2人で振り返ると罠が発動したのだろう爆発したのを確認出来た。
「気を付けロと言ったのだがナ」
あぶね。
ユーティーの顔がちょっと青白い。
下手に動いていたら死んでたしな。
小部屋に通されるとどしっと座りだす、まるで人間だ。
「人間ヨ、欲しいのはこの本カ?」
胸の部分を叩くと黒いノートが見える。
「そうそれ、返してくれる?」
「これを手に入れタ。知識ふえタ。断ル」
「それは私のだぞ!!」
いきなり殴りだしそうなユーティーの服を引っ張る。
ビリッと破けブラが見えた。
「あっ」
「ばばばばばばか!! な、何をするのだ!! こ、こんな場所で!?」
まるでこんな場所でなければいいって言いそうな言葉だ。
勘違いする男がいるから辞めたほうが良いだろう。
「ごめんって。そんな喧嘩腰じゃ解決できるのも出来ない」
「相手はゴブリンだぞ!」
「ほら、そう言う所だ。昔俺の知り合いにもゴブリンいたけど……ああ、いやレイアの知り合いにもゴブヤマさんってゴブリンがいた。あの人? は面白かったな」
「そ、そうなのか!? あのレイア様が」
話を待っていてくれたらしい。
案外紳士だ。
「ゴブリン。人間と友人になル。王は、この本デ、知恵がついタ。人間の頼みキク」
「ようはあれだろ、代わりの物をくれって話だろ。魔力が多いような」
「そうダ」
「ユーティー何かある?」
ユーティーはゴブリンのくせに。とか文句を言っている。
やだねぇ好戦的な種族は。
「もっと平和的に、うちのメルナやアリシアを見習ってほしいよ」
「誰ダ? 強いのカ?」
新しい名前に興味がでたのだろう。
「ああ、俺の奥さん……って言っていいのかな? 元聖女と元魔女」
「それをよこセ」
ん? よく聞こえなかった?
「え?」
「お前達ニやられテ、兵がすくなイ。ニエにし子産ませル。ゴブリン隊強くナル。人間もしあわセ」
「ゴブリン風情目!! メルギナス様を差し出せ────おい、貴様! 私の前に手を出すな喋りにくい」
「まぁまぁまぁ」
一応最後まで聞きたい。
ゴブリンの生態は多少知ってる。
女性をさらって子を作る。
「貴様……笑っているのか?」
「それは置いて置いて、ゴブリンロードに進化したのかな? で……先に言うけど、ここにも長寿族いるけど。こっちじゃだめん?」
ユーティーが驚いた顔をしている。
大丈夫だって別に聞いただけだし。
「不味そウ。コ出来ない場合クウ」
「ふむふむ。しょうがない……」
──
────
俺はアンジュの剣を振り回し血を飛ばす。
部屋の中は静かで血なまぐさい。
先ほどまで知恵がついた。と自慢していた死体から死神のノートをはぎ取ると、その胸の部分に剣をさすと魔石の固さが手に伝わった。
「まっこんな所だろう。帰るよ」
「……………………」
「おーい」
「はっ!? きさ────もごごごご」
「大きい声辞めて!? 手離すから静かに」
ユーティーの口から手を離すとやっとしゃべり出す。
「こ、殺したのか?」
「これで生きてるよう見えるならネクロマンサーだよ……ほら。頭要るんだろ?」
「え。ああ…………」
ユーティーはさっきまで動いていた頭をしまい込む。
「どこまで本気だったんだ?」
「何が」
後は帰るだけ。
「ほら色々だ!!」
「話が通じるなら、俺も戦いたくはないよ。でもさぁ言葉が通じるからといっても話が通じてないしな、まるでお通じみたいだ」
「しかし」
あれ。気づかなかったかな。
「ほら、腹が痛いのとトイレに行きたいのをかけて」
「貴様がしたのは不意打ちだ……いや、不意打ちだから勝ったのか……」
「そうそう、不意打ちに痛くなるでしょ、おならかと思ったら違ったとかさ」
「さっきから聞こえてる!」
怒られてしまった。
「場を和ませようと……ほら」
「和むわけないだろ!! ……荷物は取り返せた礼を言う。しかしどうやって帰るのだ」
「ああ、それね……さっき罠の解除も失敗していただろ? 他のゴブリンは知能低いよ。俺達がこの巣に来たってのに見張りもいなかった。見張りも出来ないから入口に罠があった。と考えるとゴブリンロードのいなくなった巣なんてって事。帝国でもこんな近くに巣があるの知らなかったみたいだし蹴散らす」
「わ。わかった……」




