第592話(他人視点)スミレ。大人組から呼び出しを受ける
学園内の男子寮。
食堂からもらったスナックを袋に入れて部屋に戻る途中に、クラスメイトに呼び止められた。
顔を見たらフレンスだ。
貴族の次男とか言ってた気がするけど、学園では別に身分はかんけいない。
オレと同じ部屋で仲がいい奴なんだけどちょっと怒ってる?
「お前さー! あの本をクローディア副校長に見つかったってまじかよ!」
どこでそうなるんだろう。
オレが渡したのは親父である。
「フレンス……おまえか! あ、あんな! エッもごごごご! 口から手をどけろ!!」
「ばか、声がでかいって!! 上級生がみてるだろ」
馬鹿に馬鹿は言われたくない。
「せっかく、お前に大人の女性をみせてやったのに……凄い価値があるんだぞあの本」
フレンスがいうのであれば高いのかも。
親父に渡したのは本当だし……うーん。
「…………べんしょうする。それでいいだろ」
「え? ああ、それはいらん。あの本は別に自分のじゃないし」
じゃぁ誰の?
本の持ち主がいるならべんしょうしないと。
こないだもらったおこづかいはあるとして、アリシア母さんには相談出来ないし……メルギナス母さんに相談して足りない分を。さんこうしょ買うって言えば出してくれるかな。
「そもそも誰のってか」
「…………いや。まさか店から盗んだのか!?」
「ばっ声がでけえって。あっ旨そうな菓子」
「オレのだぞ!」
フレンスは俺の菓子を摘まんでいく。
「上級生が言うには、がくえんの七不思議。男だけに伝わる本……それを見た者は夢の中で裸の女神さまに抱かれるのだ」
抱く?
ハグの事だよな。
え。それだけ?
「なんだ」
「え、お前うれしくないの?」
「それぐらいノラ先生がしてくれるし」
「まじで!? あのノラ先生だぞ……って、ああ。お前にとっては実家帰ったらノラお姉ちゃんになるんだっけ。いいよなー」
イヤな言い方だ。
そうなんだけど、その分ここではきびしい。
すぐ怒る。
優しくない。
実践くんれんも容赦ない。
こっそりハグしてくれるけど。
「ってかフレンスは、その夢みたのか?」
「いや、変な呪いとか怖いから、まずはお前の机に置いた。で、お前が大丈夫なら自分もじっくり見ようかなって」
「お前!!!」
なぐると、それを回避された。
くそ!
無駄に逃げるのが上手い!!
「まぁまぁ……それよりも、今度迷宮いこうぜ」
「禁止されてるだろ」
「旧迷宮なら平気だろ? お前強いし。魔石って小さくても出ればこづかいになるしさ。お前だってこづかいないんだろ?」
別にある。
物を買わないだけだ。
「こっちはためてるから、一人ぐらしするんだ!」
「すぐそういうウソを、一人ぐらしするなら余計に金いるだろ。これでも最近ヒール覚えてよ……やば。おい!」
オレはすぐにうなずいた。
男子りょうなのにクローディア副校長が廊下を歩いているからだ。
「ご、ごきげんうりゅわしゅう。副校長!!」
「こん、にちは!!」
そのまま横を通り過ぎてくれればいいのに、眼の前で止まった。
アリシア母さんやメルギナス母さんは、優しい人。と言っているけど絶対に違うよ。怖い。
授業でさわいだりしたら、だまってカベを向く罰などある。
基本4時間。その間に喋ったりさわいだりするとどんどん増えていく。
トイレはどうするの? って。その場で出せって。
掃除は副校長がしてくれるんだけど、それも恥ずかしい。
「ごきげんようフレンス君。廊下は皆で使う場所、お話をしたいのであれば談話室やお部屋に行きましょう、それと先生に向かって貴族の挨拶は不要です。次にスミレ君。食堂から貰うお菓子にしては量が少し多いですね、余り食堂の人を困らせない様に。今回は没収はしませんが……少し用事があるので部屋に置いて来てもらえますか?」
「は、はい!!」
「わ、わかりました!!」
フレンスと一緒に慌てて部屋に行く。
扉を閉めて顔を見合わせた。
「お前何かやったの?」
「知らねえって……」
「あれか? またお前の親父が来てるみたいなんだけど……関係あるのか?」
え。また来てるのか。
オレとサクラを学園に預けたくせにちょいちょい見に来るんだよな……来るのは母さん達のほうがいいのに。
「関係ない!」
「…………ぷっお前父親の事になると、すぐ怒るよな」
「お前だって、家の事になると怒るだろ!」
「ああ!?」
次男であるフレンスは家が嫌いで学園に来たって言うし。
部屋がノックされた。
俺もフレンスも作業が止まる。
「スミレ君。早めにお願いします」
「はっはい!! フレンス。オレの菓子くうなよ!?」
「くさる前に戻って来いよ」
「当り前だっ!」
扉を開けるとクローディア副校長が見下ろしている。
こ、こわい。
「では行きましょう」
くるっと反転して歩く後ろ姿を見送りたい。
振り返られたので慌てて後ろについてく。
男子りょうを抜けて学園に向かう、大きな結界の中にあるので魔物は出ないはずだけど、学園まではちょっと遠い。
歩いていると他の生徒などの姿もすれ違う。
「あっ! スミレお兄ちゃん!!」
思わず足を止めると妹のサクラだ。
クローディア副校長も足を止めてくれてサクラを見る。
「クローディア副校長。こんにちわ!!」
「はい、こんにちわ。あちらは男子寮ですが何か用事があるのですか? 門限までには女子寮に戻るように」
「はい! スミレお兄ちゃんに会いたくて」
2人の顔がオレに向いた。
すこしそわそわする。
「な。何だよ!」
「ぬいぐるみ知らない?」
「ぬい……? いや」
なんでオレが知ってると思うのだろう。
ぬいぐるみ?
「サクラさん? ぬいぐるみですか?」
「はい! アリシアお母さんからもらったぬいぐるみです。つのが生えていて、あっ折れているんですけど。安眠できるからって」
「…………サクラさん。イジメられている等はありませんか?」
「ないよー? 皆やさしいよ?」
「そうですよね……そのような話は聞いてませんし。解りました。わたくしの方でも確認してみます」
サクラは副校長に礼を言うと魔物の様に走っていく。
馬鹿だしな。
「まったくサクラは、ぬいぐるみが無いと寝れないとか子供ですよね!」
「…………スミレ君。わたくしもぬいぐるみを抱いて寝ますよ」
「えっ…………」
クローディア副校長は俺を見降ろしてそいうと先に歩いてしまった。
ああああああ!
ど、どうしよう。
ええっと、こういう時は謝らないと!!
「ま、待ってください。ええっと、ごめんなさい!」
「謝る意味がわかりませんが?」
「ええっと、その……」
「まずは口を開かずに先を急ぎます」
「はい……」
だから親父は嫌いなんだ。
親父が呼ばなかったらオレは怒られないのに!!
応接室と書かれた場所に連れてこられた。
まず、クローディア副高校長が軽くノックをするとクウガおじさんの「どうぞ」と言う声が聞こえる。
扉を開けたクローディア副校長は頭を下げて礼をするので、オレも真似する。
軽く背中を押されて中に押し込められると背後で扉が静かに閉まる。
「え? ええっと……クウガ校長。とノラ先生……と誰?」
「まぁ! これがスミレなのね!! まるっきり変わらないわ」
親父ににてるけど、女の人だ。
親戚は少ないし、親父の兄弟もスゴウベルおじさんしか以内って聞いてる。
1人は行方不明とか、それもおばさんとか聞いてない。
「んっ!?」
突然にハグをされた。
親父のようなでも、母さんに包まれているような感じがする。
い、痛い。
背中が痛い!!
「ん!? んん--はなっ……」
「クロー姉さん。スミレが苦しがってるよ?」
「え? そうなの!? ノラが言う通りに、家族ならハグをするって、普段通りの家族の挨拶しただけなのに」
離してくれたので、急いで距離をとった。
「だれ!?」
「可愛いわ、クロウママよー?」
「え?」
え、だって女の人だよ。
でも、雰囲気が親父に似てる……でも母さんみたいだし、その胸もあった。
クウガおじさんもノラ姉ちゃんも、否定しない。
「親父がおかまになったあああああああああ!」
「はぁ!? 失礼ね!! 女よ女!! 見せてあげるわよ!! え、ノラ何で私を破壊締めに!? ちゃんと付いてないのを」
終わった。
取ったんだ。
これからオレはオカマの息子として育つしかないんだ……。
「ごほん。ええっとスミレ君。こちらの人はクロウネルさん、クロウベルさんとはちょっと違う人でね。君の力が必要なんだ」




