第590話(他人視点)クロウネル=スタン
「きょわああああああああ! 水盾!!」
私は水盾連を唱える。
目の前の銀髪の女性からの攻撃を避けるため。
慌ててベッドの隅にいくと周りを見回した、私の家だ。
魔導師メルギナスと聖公アリシとのヒミツの家。
苦難を乗り越えて一緒になったはずなのに、本来無かったものが私を襲ってくる。
「な、何なんですかその胸! メルナ!? ですよね? 何時から性転換魔法を覚えたんです!? 私の胸が小さいからってあて付けですよね!?」
思わず文句も出る。
「待つのじゃ……ええっと……ロウよ……いやロウなのじゃ」
「当り前ですわ! いくら趣向を増やしたいからってその女同士は駄目と思いますの! さぁ早く男に戻ってくださいまし」
「元から女なんじゃが……魔導師というかワラワは魔女メルギナスなんじゃが」
はにゃ?
「今何と……? え、じゃぁそっちの胸を隠している女性はもしかして魔法で性転換した聖公アリシでは無くて?」
「頭の回転が速くて助かるのじゃ」
女性版メルナが褒めてくれた。
「元聖女アリシアだよ? クロウ……君。うんクロウちゃんかな? 私達から見たらクロウ君が突然クロウちゃんになったんだけど」
その考えは私もびっくりだ。
今まで英雄クウコの騒動で巻き込まれたり、並行世界に行ったりしたけど性別が逆ってのは初めて。
うん。複数回来ても困る話なんだけどね。
「一先ずは話あおうなのじゃ」
「クロウちゃん。珈琲でいい?」
「あっココアお願いしますわ」
思ず敬語に。
2人がトリプルベッドから離れていく。
昨夜はちゃんとここで寝た記憶がよみがえる、そう寝たと思ったら二人の手が伸びて来て……うわぁ……こっちのベッドも使った後が。
っと、えーやだな。
私達の家に変な男がいるのって……ううん。この場合は私がお客様って事か。
「クロウちゃーん?」
「あっはい! 今行きますわよ」
家の中は全然同じだ、違うとすれば衣服の差。
メルギナスやアリシの男性用の衣服が女性ものになってるぐらい。
私がお気に入りで使ってるカップすら同じ。と怖いぐらいに同じだ。
「はいどうぞクロウちゃんはココア派なんだね」
「この甘味が幸せを呼びますの」
リビングで何時もの位置にすわる。
2人の女性も同じ位置に座りだした……本当に、本当に2人のイタズラってわけじゃなさそうですわね。
2人が作り物の胸をいれ、股間の物を股に挟んで……そこまでする意味もないですし。
「で……お主が女版ロウとしてきっかけは何じゃ…………と、言うかどこを見てるのじゃどこを」
「大きいなぁって、羨ましいですわよ、あの揉んでいいですわよね!? 異世界に来たとはいえ、私とメルナとアリシは結婚してますの! であれば私にその大きな胸を揉む権利ありますわよね!?」
「わかるよ! 先生私も!!」
アリシ……じゃなくてアリシアが私の意見に同意してくれる。
この胸は凶器でしょ。
これだけ大きければ魔導師メルナも喜んでくれたかな。
「なわけあるかなのじゃ!! 昼間っからお主らは……」
私の脳内には女版メルギナスと私の世界の魔導師メルギナスが抱き合ってる姿思い浮かべる。美男美女カップルだ。
「私の入る隙間がない!!」
「な、なんじゃ!?」
「わぁクロウ君らしい。突然叫ぶ所とか」
「あっ……すみませんですの」
あぶない。
すぐに妄想に入り込んでしまう。
「で。ワラワとしてはお主の意見を聞きたいのじゃが何かあるのじゃ?」
「そういわれましても」
昨日はくたくたに帰って来て、旅の話をし。
「あっ……クウネが小さい頃に見た女神ダークネスの本……かもですわ」
「であれば本を読み呪いを貰った可能性かのう」
「クロウ君らしい、ううん。性別が変わっても同じ事してるんだね」
だったら話は早いですし。
この元悪役令嬢クロウネル=スタンが本気を出せばすぐに解決できるわ。
「ちょっとクウネの所に行ってきます!」
「は?」
「え?」
2人とも変な顔だ。
本来の魔導師メルギナスであれば応援してくれるはずなのに。
「魔導師メルナ……メルギナスはギルドに行って関連の本を。アリシ……アリシアは協会の古文書を調べてくれる?」
「それは良いのじゃが」
「クロウ君ええっと……」
「大丈夫ですって。道は同じなはずですし。これでも元悪役令嬢なんですわ! 止めても無駄ですわよ!? 自分の道は自分で決めるんですわ」
手の甲を口元にあててたか笑うポーズをする。
さて、馬鹿をしてないでさっさと行こう。
2人を置いて結界の家を出た。
「うん。まったく同じ」
──
────
「ええっと………………クロウベルさんですか?」
「…………はにゃあああああ!? クウネ何で男なんですの!! え!? あの私に自慢するような巨乳。ピンク色の先端のぽ──もごもごもご」
突然に口を手でふさがれた。
「女性が変な事を言うのは……とにかく落ち着いてください。謎にクロウベルさんと名乗る人が来た。と職員から聞いて見に来たんですけど……本当に誰です」
「んんんん!! んー!!」
「あっすみません。抑えたままでした」
「ぷっは!! 死ぬ、死ぬわ!! いくら再生があるからといって窒息は怖いんですわよ!!」
深呼吸をしてクウネをにらむ。
…………。
「あの?」
「駄目!! 私には2人の夫がいるの!! そんなえっちな目で私を見ないで下さる!! ちょっとカッコいいからって」
「見てませんけど!! 本当に誰なんです!」
ファースト学園の応接室の扉が開いた。
少し長くした髪、ノラだ。
「クロー兄さん。いやクロー姉さんだよ。校長」
「ノラ先生」
「速達でギルドから手紙が来た。差出人はメル姉さんで『無鉄砲なクロー姉さんがそっちに行ったからよろしく』って」
ああ。ノラを見て思わず涙が出るとはこの事。
こういう事もあろうかとハンカチは用意してありますわ。
「良かったですわ。ノラは《《男》》のままで……この世界に来て周りが性別変わってる人が多いでしょ?」
「え!? クロウベルさん!?」
「クロウネルです」
そうそう。こっちの私は男でありクロウベル。との事。
ちょっとだけ名前が違うのよね。
これでも小さい時は『ネルちゃーん』って呼ばれて……あれ。ノラが震えてますわね。
「ノラ? いいのよ。お姉ちゃんはこっちの世界でも《《弟》》であるノラを抱きしめますわ!」
「ちょちょちょ! クロウベルさん!」
「クロウネルですわ」
馬鹿なのかしら。
先ほどから私の名前を間違うだなんて、これが本来の悪役令嬢であれば部下に命じて首を斬ってる所ですわよ。
「今はどっちでも、ちょっと耳を」
「ひゃ!? な、何するんですの!?」
「いいから! あのノラ先生は女性ですよ」
ひゃ!?
えええ!?
私はノラを見る。
「クウネ。あなた男になって目も腐りましたの? ノラを見なさい。スラっとした胸。女性受けするちょっと長めの髪、可愛らしい身長でマダムキラーと呼ばれてるノラですわよ!! ほら。感動して震えてますわ! 私がノラを間違う訳がないじゃないですの!」




