第589話 とら……ダークネスは向こうからやってくる
聖都から少し離れた獣道を歩く。
脇道にはいると景色が突然にかわった、いきなり小部屋になっていてそこに『転移の門』が置いてある。
改良されていくメルギナス特製の二重結界を抜けて見慣れた家に……。
「見慣れた?」
思わず口に出す。
そんなに長く住んでいた気もしないでもない。
よくて数年か?
「クロウ君おかえりなさーい。また難しい顔してる」
洗濯物を取り込んでいるアリシアと眼があった。
「うん。今日も可愛いな」
「クロウ君……あ、ありがとう! 先生は中にいるよ。先生にも伝えてあげて」
「ういー」
アリシアに返事し、家の中に入るとメルナがソファーに座っていた。
「ロウよ、ご苦労じゃったのじゃ」
「あ、起こしました? この時間ならぐーたらと腹を出して重力に逆らう胸を俺に見せつけながら寝てるかと思っていたんですけど」
「言うてろなのじゃ」
「あっメルナ」
「なんじゃ? まだ文句があるのじゃ?」
テーブルにあるフライトポテトを口に入れながら文句を言って来る。
「いや。可愛いっすね」
「………………はぁ。この男は……」
「なぜに失望!?」
ため息をつかれてしまった。
パタパタとアリシアも家に入って来たので、持たされたお土産をテーブルに並べていく。
「聖都特製まんじゅう。聖都特製ポーション。聖都特製クッキー。聖都特製りんご。聖都──」
「全部近くで売ってる物じゃの」
「クロウ君無理にお土産を用意しなくても」
飲み物をテーブルに置き、俺の隣に座るアリシアが
うう。
「だって仕方がないじゃない。ファーストの街でお土産なんて無いし……学園の鉛筆とか要りませんよね?」
「無理にお土産なぞいらんのじゃ」
「わ、私は嬉しいよ?」
となると、聖都で買うしかない。
それでもメルナはまんじゅうを食べノラの状態を聞いて来た。
「ああ。ええっと……大丈夫でしたよ。ノラの体質的にヒールが効きにくいらしく薬で何とか」
「あれは人よりも魔力が少ないからのう。逆に少ないからこそ技師に向いているのもあるのじゃが」
「元気なら良かったよ。クロウ君の事だから今度はどんなトラブルがあったのか心配したよ?」
あの、もう30歳なんですけど?
アリシアはお母さんかな? 心配される年齢でもない。
「となると、メルナは姑か」
「んあっ!? 何の話をしてるのじゃ何の!!」
「え、いやアリシアがお母さんみたいだなって……となると──っ!?」
防御の構えをとるも、何も飛んでこない。
まぶたを開けてメルナをみるとハンカチで目を押さえていた。
え!?
な、泣いてる。
「魔女の眼にも涙……じゃなくて。え?」
「ワラワがこうして人間とつがいになったのに、こうも年寄扱いされてワラワは──」
「いや、可愛いですよ!? 元々立派な乳と尻があるのに人間に嫌われていて、本人は人間に優しいエルフ耳の師匠という、のじゃ属性までつけ。時代にはそぐわない暴力系女性ヒロインキャラと言う、そういう師匠が好きですけど!? あれ」
俺はメルナの手を掴むと、メルナが俺の手をしっかりと握って離さない。
引っ張ろうにも甘い声が聞こえ手からメルナの顔を見た。
「ふむ。家の中で魔法を放つとなのじゃ。万が一標的が外れた時に家の中が壊れるじゃろ?」
「そ、そうですね……いやーメルナの指って細くて綺麗ですね。もうそろそろ離してくれるといいんですけど」
「ライトニング」
あばばばばばばばばばばばばば!!!
──
────
俺が再生されると、メルナは普通にソファーに座っている。
「お、再生されたようじゃな」
この魔女は、人をぽんぽん餅みたいに焼きやがって。
「されなかったらどうするんですか!」
「アリシアに詫びをいれ恨みを受けて生きていくつもりなのじゃ」
「案外答えが真面目で重いんですけど!?」
「ロウが聞いたからじゃろ……」
ってかだ。
「そんな重いのなら俺に攻撃しなければ……」
「あ”?」
「いえ、何でもないデス」
魔女怖い。
足音が近づくのでアリシアだろう。
「私は先生がそうしたのなら悲しむけど恨みはしないよ? クロウ君も先生に殺されるな本望かなって……私じゃクロウ君殺せないし」
「その考えも怖いんですけど。ヤンデレかな」
「そ、そうなのかな?」
窓から見える光は薄暗くなっていく。
「食事の用意するね」
アリシアの手料理が並べられていく。
タフなんだよな、アリシアも。
会話は自然とノラや学園にいるサクラやスミレの事となる。
「元気そうじゃの」
「心配なら見に行ったらどうです? スミレは俺に会うよりも喜びますよ」
「んーどうせ長期休みの時に帰ってくるのじゃろ? そう頻繁にあってもなのじゃ、アリシアはどうする?」
「私も家で待つよ? それよりも、ええっと……クウガ君が昔読んでいた本……だよね?」
女神の本の事である。
中身の『えっちな本』なのを伏せて2人に話しておいた。
「そうそう。アリシア何かしらないか? 女神の本」
「クロウ君が知らない事を私が知らないよ……と言いたいんだけど、クウガ君もなんだけど男の子だけの本で」
「どうせエロ本じゃろ」
「ゴホっ! メ、メルナそんな事はないから」
一応フォローしておく。
ここでフォローしておかないと、スミレがエロ本を読んでいた。と明るみに。
流石に可哀想だろ。
学校から帰って来たら机の上に隠しておいた本が置いてあるぐらいに可哀想である。
「内容は俺もちらっとしかみてないけど、クウガ曰く。本の中の女神が夢で『呪い』を知らせてくれた。って。クウガはその女神が封印されていたら開放してあげたい。っていってたよ。メルナなら何か知らないかな? って」
メルナは腕を組んで考えている。
抑えきれない胸が腕の上でぷるんぷるん。
「どこを見ておるのじゃ……魔導書に封印されている話はよく聞くからの……主に悪魔や魔人とかなんじゃが。言い方をかえれば悪魔や魔人も人間がそう言ってるだけじゃし、害がなければ封印されていたほうがいいんじゃないのじゃ?」
「まぁ俺もそう思うんですけどね」
「………………」
あれ? アリシアが無言だ。
思わず手を止めると目線が合う。
「アリシア?」
「え? ああ、ごめんなさい! クウガ君は昔女神の夢を見た。ってのを思い出して……夢で何か忘れているような」
「ああ、アリシアも? 俺も」
「所詮は夢じゃろ。悪夢と起きると忘れるというしの……ええっとその女神トラブリューじゃったかの?」
「いや。ダークネスっすね……」
何かハーモニカが聞こえてきそうな。
メルナも調べてくれるらしい、何かわかったらクウガに教えてやるか。
食事が終わると自由時間だ。
もっとも食事が無くても自由時間なんだけど。
幸いというか俺以外の2人は金はある。
俺とメルナだけなら贅沢三昧後の文無し貧乏していたけど、アリシアが節約してくれてるのでそれもない。
俺がそわそわしてると、アリシアがそっと包紙をくれる。
中には粉末が入っていて……。
頭の中に声が響く。
『※薬は適量で使いましょう』と……。
──
────
「ライトニングフルバースト!!!!」
「んあ!!?」
目覚めのキスならぬ目覚めの魔法。
俺の意識が吹っ飛び戻るまでにフル回転させる。
昨夜のアレがまずかったのか。でもメルナも嫌がりながらも興奮していたし、アリシアもアレは嬉しがっていた。
それとも、アリシアにおこなったアッチがだめだったのか? でもメルナにもちゃんと試した。
意識が回復し、とにかく現状を確認する。
「メルナ! いきなり魔法は駄目だって。がんばって腰を振るから!」
「お主! 何の話を……ってか誰なのじゃ!!」
「ええっと。君はだれかな? クロウさんなの……?」
ちょっと高めの男性の声が2人聞こえた。
はぁ!?
俺達の寝室に客か?
って……ん?
長い銀髪をもつ耳の長い男性と、水色髪の男性が俺を見ている。
いや、え……考えたくない。
はっ!?
思わず自分の股間を見ると、ちゃんとついてた。
良かった俺のマイブラザー、世間一般よりもお前は優秀だ。
「じゃなくて……え? 誰」
「こっちが聞きたいのじゃ……が。いやな予感はするのじゃが一応尋ねられしの魔導師メルギナス」
「元聖公アリシです……」
ですよねぇ。
「クロウベル=スタン……うん。俺の妻達が……いや2人が男になっとるやんけええええええええええええええええええええ!!」




