第427話 子供達の名案に感動する・後
「化物ね」
地面に座り込み肩で息をするアンジェリカに対して俺は近づく。
アンジェリカの吐息がちょっとだけエロイ。
音声だけ録音して売ったら売れるでしょ。
じゃなくて。
「いきなり斬りかかって来て人を化物扱いしないでくれる? 俺はその辺にいるモブ、つまりは一般人」
「…………まだ言うの? その謎設定」
「謎じゃないし!!」
ウッキー!!
ちゃんとした設定なんだからっ。
なぜか今は子持ちまでなったけどさ……。
「でもほら、クウガよりも弱いし」
「だから何なのよ……」
何なのよ。と正論もうされても。
「主人公よりも弱いって事が証明されたわけで」
「意味わからないわ……はぁまったく。いくら隊を抜けたとはいえまだまだ現役のつもりだったんだけどね。何が6年間寝たきりよ、以前より強いじゃない。息すら上がってない」
はっ!?
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「その演技、キモイから辞めてくれる?」
「はい」
大の大人がだよ、女性に『キモイ』と言われるとか涙でそう。
アンジェリカに手を貸すと立ち上がる。
怒りは収まったようで少しすっきりした顔つきだ。
聖騎士隊が俺とアンジェリカに飲み物を持ってくる、飲むと甘い味がするのでポーション系だろう。
「まぁ良い発散になったし、またイライラしたら手合わせしてよ」
「やだよ!?」
「いいじゃないの、じゃっ屋敷にいるから何かあったら連絡して」
すっきりしたのかアンジェリカが帰っていくと、残った聖騎士隊はなぜか俺に優しくなった。
「クロウベル様」
「な、なに? 様!?」
「ええ……自分達にも訓練をつけてもらえませんか」
「…………嫌だよ」
「アリシア様からは優しい人。メル様からはドアホウ。としか評価がなかったので。ここまでお強いとは。先輩たちから凄い人。とは聞いてましたが嘘と思ってました」
話聞いて?
ああ……聖騎士隊ってどっちかっていうと体育会系だもんな。
「そう言う事はしないから……クウガに頼んでクウガに。ファーストの街にも聖騎士隊いるし? 交代とかで行く機会あるんだろうから」
「ありますがクウガ殿はもう剣を置いてまして、それ以前にその……恨みはないのですか? クロウベル殿はクウガ殿のせいで何年も意識がないというのに、そのクウガ殿に頼むなど」
「無いよ?」
あれ?
聖騎士隊の3人がドン引きしてる。
「元々殺されるはずだったのが生きてるし、俺も俺で受けなくていい勝負受けたからなぁ……メルナとアリシアにもその辺は説明してる」
納得してるかは知らないけど。
アリシアを見る限り大丈夫そうだけどな……本当に恨んでいるならクウガの傷を治さなかっただろうし。
メルナだって本当にクウガを恨んでいれば殺していただろう。
と、思ったけど子供がいるから無意味な戦いはしなかったのかな?
「剣置いてなにしてるの?」
「聞いてないのですか?」
初耳だ。
ってか会ってないし。
「今ではクウガ殿は新たな学園都市の理事として──」
「そこは知ってるし、長そうな説明はいいや」
ゲームで設定資料やアイテム名を見るのが好きであって、会話は別に好きじゃないし。
「はぁ……では訓練はいつに」
「いや、まだやるとは……」
「何時にしましょう!!」
「明後日……」
圧に負けた。
これが若さか……。
聖騎士隊の熱い気持ちを無理やり受け取ってその場を逃げる。
俺としては2日間やる事がない。
メルナと遊ぼうにも、今頃は頼んだ物を作ってる所だろうし、なんだったら材料を頼まれている。
湖畔近くを馬でぐるっと回り、整備された道に出る。
そのまま目的地にいくと厳重に封印された扉を勝手に開けて迷宮へと入った。
場所は覚えていて最後に木製に見えるだけの扉を開けると、ふとったゾンビが紅茶を入れる所に出くわした。
「やぁやぁやぁ。今日は何の様だい? 友よ」
「…………1度も俺はお前を友と思った事は無い!」
ふとったゾンビ。
現在この聖王の墓にいる、死後も朽ちてない聖王だ。
こいつのせいで、過去い行ったり並行世界にいったり未来から子供が来たりと、大抵の元凶はコイツである。
「いっその事滅ぼそうかと思うけど、これが中々」
「君、心の声が漏れてるよ。それにしても酷い。ワシこそ人類を思って活動してるゾンビはいないというのに……」
「死後も楽しみたいだけだろ、気に入った奴に宝珠をぽんぽん渡すとかさ」
濁った眼で俺をみては肩をクイっとお手上げにするポーズは見ていて殺意すらわきそうだ。
「紅茶が入った。良ければ飲みたまえ」
椅子に座らないで紅茶だけ飲む。
飲んでから思うが俺も良く飲んだな、こいつなら毒でもいれそうなのに。
「毒はいれてないよ。こう見えてもだ、君がバラバラになった時に随分と助けたのだよ」
「…………そりゃどうも」
「何、全然気にしてない。玩具は壊れたらお終いだからね」
…………俺は黙ってアンジュの剣を抜くと朽ちてない聖王はじりじりと背後にさがっていく。
「良いのかい? 何か取りに来たんだろ? 例えば聖王の皮とか」
俺が言う前に答えを言いだす腐ったゾンビ。
「聖王は何でも知ってるのだ。例えば君が母乳プレイが出来なくて泣いてるまで」
「ショック受けたけど、泣いてない」
「おや? てっきり君の事だから……まぁで。これがワシの皮だ」
ガラス板に人の皮膚が挟まっているのをテーブルに出された。
俺だからまだ良いけど、紅茶飲んでる時に同じテーブルに出さないで欲しい。
食欲が落ちる。
「ってか、じゃぁ俺達が何したいかも知ってるのか?」
「もちろん。必要なアイテムがあれば宝物庫から貸し出してもいい」
「何でそこまで」
「言っただろ? 玩具は大事に使わないと」
和やかな空気を殺伐に変えてくる、コレが魔物と言うのが良くわかる。
「ふう……もしかして北のボスよりあんたのほうが強い?」
「失われた迷宮かね? そんな事はない。そもそもあれは魔王……とは呼ぶべき者じゃない……君だって対峙したんだわかるだろ?」
「ノーコメント。じゃぁ貰っていく」
俺は聖王の皮を手に入れて部屋を出ようとする。
これ以上ここに居たら何言われるか……あっ。
「そうだ。スミレって帰った?」
「君がバラバラの間に帰ったよ」
「そっか。礼を言う」
手を上にあげると、朽ちてない元聖王も手を振り返す。
頼まれていたのは手に入ったので直ぐに城へと戻る。
城に帰ると思わず鼻を抑えた。
悪臭が凄い。
どれぐらい臭いかというと……。
「一週間風呂入ってないメルナぐらいくさ──」
目の前が真っ白になった。
一瞬だけメルナが杖を構えていたような……。
俺が再び意識を取り戻すとスミレが心配そうな顔で俺を覗き込んでいている。
「スミレか……?」
「っ!? べ、べつに死んだかとおもってみていただけだし!!」
「おにいちゃん。せけんではそれをツンデレって言うんだよ!」
「ちがうからな!!」
スミレが走っていくと、サクラは俺の手を引っ張る。
なんとか起き上がって城の中に入るとやっぱり臭い。
マスクをしたメルナが出迎えてくれて滅茶苦茶にらんでる。
「帰って来たそうそう寝るとは呑気なやつじゃな」
「…………いや。メルナが」
「帰って来たそうそう寝るとは呑気なやつじゃな」
NPCかな?
「だからメルナが杖を──」
「帰って来たそうそう寝るとは呑気なやつじゃな!!!」
はいはい。
俺が悪いみたいですね。
「とにかく、取ってきましたよ。聖王の皮」
ガラス板に挟んだ皮をメルナに見せる。
「うむ。こっちも中身は大丈夫じゃろ……スミレ。サクラ。その皮をなめすのじゃ、破るんじゃないぞ?」
「はーい」
「はい!」
2人の子供は俺の手から聖王の皮を受け取ると城の奥へと走っていく。
「後はこの偽物の本に皮を張り、厳重に封印するだけじゃ」
「いやーでも。すり替える。とか……どんな教育したらそんな発想がでるんですかね」
「種がわるかったんじゃろうな」
「生々しいから辞めて」
「ふっ」
メルナは鼻で笑うと俺を馬鹿にした。




