第428話 鑑定の結果はいち、じゅう、ひゃく────
蜃気楼の城のリビングルーム。
テレビもネットもない部屋で蓄音機をかけながら、天井を見ては魂の抜けた格好をする。
「完成じゃ!」
俺の意識が急激に体に戻り、前を見るとメルナと酷くやつれた顔だ。
「ちゅーしましょうか?」
「………………一度頭割ってみたいもんじゃ。いや……割れた時に変なのは無かった気がしたのじゃ」
「グロイからやめて」
たぶん、俺がバラバラになった時の話だろう。
「ロウから振って来たんじゃろ。それに」
ちらっとメルナが視線を変えるとメルナの脚元にサクラとスミレがいる。
サクラは「ちゅー!?」と大声を上げて、スミレは「こういうときはへやをでるんだ」とサクラを引っ張っている。引っ張り切れてないけど。
「冗談だよ。2人ともおいで……俺も考えたんですよ。メルナが俺の姿が魂の抜けた感じで待っていたのを見て、10段階のイライラメーターが3上がって。それにこっちは徹夜で作ったのに。とさらにイライラメーターが8上がって。俺はメルナのイライラメーターを下げるために『ちゅーしましょうか』と」
「最後の最後で2上がったのじゃ!」
メルナにくっついているスミレは「メルおかあさんこわい」と言って、サクラのほうは「パパ!」と、言っては俺のほうにくる。
「よし盾が出来た」
サクラを抱きかかえメルナへの盾へと。
「…………いつか罰があたるのじゃ……寝るのじゃ」
「ごゆっくり」
「さくらもー!」
サクラがバタバタするので床に降ろすとメルナの後を走っていく。
同じく走っていきそうなスミレの服を引っ張った。
転びそうになるスミレは俺をにらんでいる。
「スミレ」
「はなせっ!」
「俺の事が嫌いでもなんでもいいんだけど……いや、出来れば嫌われたくないし、そもそも未来のスミレは俺に女性を盗られたとかでブチ切れてるんだろ? それって俺の責任じゃないはずなんだけど」
「いってるいみがわからない!」
…………だろうな。俺もよくわからん。
「とにかく俺がいない間男はスミレ1人何だし2人を守るように、信頼してるぞ」
「と……うさん」
俺はスミレの尻を軽く叩く。
「ほら行ってこい!」
スミレは2人の後を走って行って1回だけ俺を見てはまた走っていった。
と、言う事でここからは俺の仕事だ。
また城を出て聖都へと戻る。
秘密の馬車屋にいってカジノまで乗せてってもらう。
どう見ても秘密には見えないけど。
数日前にあった仮面をかぶったボーイの人に挨拶をしいざ裏カジノへ。
まぁここまでは順調。
まっすぐにカウンターへと行く、ここも先日と同じ女性がいた。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
仮面をかぶっているのに、かわいい系なのがわかる。
「あのガラス張りの景品って本物?」
「はい。本物です! とうカジノの正式な保証書もついています」
闇カジノの保証書って意味あるのか。
「ふーん」
「あの。お客様?」
「あのネクロノミコンは偽物だろ? だって俺が本物持ってるし」
マジックボックスからチラ見せをすると、受付の女性がこわばった。
慌てて上に飾ってある本物と俺がちらみせしてるのを交互に見始める。
「まぁいいや。いや、わかるよ? 世界に1個あるかないかの秘宝だもんな……偽物を掴む事もよくあるだろうし。邪魔したね」
俺はカウンターから見えない位置のスロット台に座る。
種は撒いた。
スロット台で遊ぶ事数分。
7のリーチがかかった。
そして俺の周りにも数人の仮面の男達が囲い込む。
太った仮面の男に、プロレスラーみたいな男。ひょろっとした男。
「いやはや……貴方ですか? 店の景品にクレームを入れているのはグフ」
眼だけを隠した太った仮面の男が俺に話しかけてくる。
うん、一番よわそうだもんな。
「……ん-? 誰?」
こういう時は先に名乗らせたほうがかっこいい。
強面の男が俺が座っているスロット台を強引に叩く。
見事7がそろったと思うとエラーの音が大きく鳴る、周りの客は何事かと思って俺から離れていった。
「てめえ!」
「よしなさい。これは失礼、当店を任されています最高責任者。という所でしょうか。仮面を外せないのはご了承くださいグフフ」
「はぁ……で? この当たりの保証してくれるの? もしかして景品と同じで詐欺るきとか?」
「その事でお話が、お客様が持っているというレイの物を見せてくれませんか? グフ」
「やだよ!?」
ひょろっとした男がそっと俺の肩に手を置く。
「言う事を聞くべきだな。お前の体を魔力で縛る事も出来る」
「出来ればいいな」
俺が黙ってひょろっとした男を見ると、ひょろっとした男の眼が泳ぎだす。
「これ。お辞めなさい、随分と怖がっているではありませんかグフッ」
俺は怖がってない。
場の空気を読まない奴ほど強いもんだ。
俺はポケットからメモを取り出す。
「ええっと取られたくないし。《《王都》》の知り合いから招待状を貰って来てはみたもの、偽物を景品にする所だろ? 手持ちのメダルを使い切ったら王都に帰ろう。と思っていた所だ」
メモを畳んでポケットに入れる。
「…………王都ですが。もしや宰相ヒュンケル様と……」
ここまで怪しいのに、凄くない!?
強面の男とか小さい声で『ブンドル様』って心配してるぞ。
グフフいうたぶん、名前がブンドルと言う太った支配人がブツブツと言い出す。
俺の中でヒュンケルって言ったら昔読んだ本にいた奴なんだけど。
「名前は言えるわけがない。が……恩師にも偽物しかない。とだけ伝えて置く……ヒントと言えば恩師が持ってるはずの物がこちらにある。と言われたから……っと。おっとまた7が揃った」
添わなくていい時はそろうんだコレって。
俺に恩師なんていないけどな。
思わせぶりに言うと小太りの支配人はブツブツといっては顔を青ざめている。
「あの本は王国冒険者ギルドの鑑定付きだぞ……」
「まっその辺は知らないけど大方偽物つかまされたんじゃないのか? じゃっ俺は用事があるので」
「そうはいかないでグフ! ここで死ん──」
小太り支配人は俺の腕を掴む。
「あっ因みに、俺が王都に帰らないと自動的に恩師に連絡いくから。で? 死んでもらう?」
「あばば!? ここで楽しんでもらってない。と言おうと……その。思うのですが……その魔導書こそが偽物ではグフ?」
俺はマジックボックスから本を出しては3人に見せつけ空中に飛ばしては途中でキャッチする。
「鑑定する?」
「グフ!?」
思ってもいない提案だったのだろう、小太り支配人は驚いた顔になる。
俺としては逆に鑑定してもらわないと困る。
「いいのグフ!?」
「当り前だ。当然俺が恩師から預かったのが偽物。の可能性だって思われてもしょうがない」
「あなたは神か……ぐふ」
先ほどまでの俺の評価から爆上がりである。
一方にらんでいるのは2人の用心棒。
でもまぁ支配人の命令が無いので俺をどうこう出来るはずもない。
「場所移そうか。このメダル預かってもらっていい?」
「それはもう!」
台にメダルを置いたまま小太りの支配人とカジノフロアをゆっくりと歩く。
そこらのホテルよりも豪華な廊下を歩きさらに奥へと進む。
半裸の女性達が頭を下げ迎え入れてくれる。
「気に入った子がいたでゲフ?」
「いや、随分と若い子が多いなって……」
「元は貴族の娘達でゲフ。遊びが過ぎたようで払えない分は担保として貸付をするゲフ……あの景品のネクロマンサーの本もとある所から。偽物だったとはゲフ」
ふーん。
十分あくどいな。
「いや。支配人! まだ偽物と決まったわけじゃ……俺は恩師から確認を頼まれているだけ」
「そ、そうでげふ。さぁここで待っていてくれげふ」
大きな部屋に案内され、地下というのに空が見える。
天井がないわけじゃないのに空が見える技術が凄い……魔石の反射か空間魔法の技術なのか? 軽く思っていると小太りの支配人が部下2人命令をしだす。
「すぐに何時もの鑑定士を呼べゲフ!!」
「ちょっとまってくれ」
「ゲフ!?」
走りだす2人を前に俺は呼び止めた。
3人とも目だけを隠す仮面をつけていても『何で?』という顔だ。
「その鑑定士が悪いわけじゃないが、一度はその鑑定士を信じて景品を本物。と思ったんだろ? 万が一だ。俺の持って来たのが本物でも、怒られたくないから飾ってるのを本物。という事もあるわけで」
「…………隠蔽グフ……?」
まぁ。俺の持ってるのが偽物なんだけど。
その鑑定が超一流で俺のを偽物だ。と言ったら困る。
「有名な鑑定士……そうだ。《《鑑定士フーロン》》ならどちらのサイドでもないだろ。呼んでくれ。俺は何日でも待つよ」
「今人気の鑑定士ゲフ……」
小太りの支配人がひょろっとした用心棒に「フーロンはどこげふ」とたずねた。
「…………この街にはいないだろう。口裏を合わせているようなそぶりはない」
そりゃそうだ。
合わせてないし。さぁ乗って来い! ここまでは筋は通した。




