第426話 子供達の名案に感動する・前
とりあえず俺に襲い掛かってくるスミレを吹き飛ばして、抱きついて来るサクラを膝にのせた状態でソファーに座る。
スミレはメルナに泣きついたが、メルナに軽くデコピンをされては嬉しそうだ。
マゾかな? そのメルナの横に座って俺とメルナの話を聞くつもりらしい。
「まったく、誰に似たんじゃが。叩かれて喜ぶなんぞなのじゃ……なんじゃ? ロウよなぜワラワを見てるのじゃ?」
「メルナって叩かれてよろこ──ストップ! 膝にサクラがいるんだから杖は駄目だって!?」
「ちっ」
メルナは自身のマジックボックスに杖をしまい込む。
「まったく子供が膝にいるのに何考えて」
「そっくりそのまま言葉を返すのじゃ! 解決出来ない、助けてメルナ! と相談しに来たと思えば……」
ああ。そうだった。
サクラが「パパあーん」とオヤツをくれるので、それを口に入れる。
生クリームの乗ったクッキーが口の中に広がる。
「で。良い案ないですかね?」
「…………強引に盗ったらどうじゃ?」
「俺が見た限り景品はカウンターから見える上部のケースに飾ってありましたね。当然セキュリティも完璧と思いますよ」
「ふむ」
メルナは足を組み直す。
そのしぐさがちょっとエロイ。
結婚こそしてないんだけど……人妻の怪しさというか。
「ロウよ話聞いてるのじゃ?」
「聞いてますよ!? …………コインの偽造はどうじゃ?」
「俺も考えましたけど。そもそも66億枚もコインをどうやって偽造するか……カジノコインって金色に見えるだけのコインですよね」
硬貨の偽造は罪であるが、カジノのコインの偽造はそこまで重くないはず。
でも場所がない。
工場がいるレベルで聖都でそんな事をしたら速攻でばれるだろう。
いっその事蜃気楼の城の一部を工場化して作ってもいいんだろうけど、作り終わった後の関係者を殺さなければならないという。鬼畜作戦になる。
いやだって偽造と言う秘密がばれたら元も子もないし。
「…………ロウがスタッフを抱いて内部から盗って来てもらったらどうじゃ?」
「俺はクウガじゃないし、そう誰でも彼でも抱くわけじゃ……ってかメルナもアリシアも嫉妬するでしょ?」
「ワラワは別に。アリシアはどうじゃろうな……」
ふむ『クロウ君3人目の奥さんだね!?』と喜びそうで怖い。
「却下で」
「割といい案とおもったのじゃが……てかじゃ。ワラワばっかりロウも何かないのじゃ?」
「あったら来ません!」
どうしていいかわからないから来てるのだ。
答えがあるなら最初から実行してますしー!
「パパはいはいー」
「メルかあさん、おれも!」
ん?
サクラとスミレがお互いに手を上げた。
普通の家庭なら子供が大人の話に口を出すな! って事なんだろうけど。
スタン家は基本親父いなかったし、メイド長のアンジュや執事カール爺さんが色々おしえてくれてたし。俺も2人の言葉に耳を貸す。
──
────
2人の意見を聞いて思わず「まじか」と、つぶやく。
メルを見るとメルのほうも腕を組んでは考えている。
大きな胸がより強調されて俺を誘ってるのだ。
「……ロウよちゃんと考えているのじゃ?」
「もちろんです」
「さっきから足や胸に視線を感じるんじゃが?」
「自意識過剰ですよ」
メルナが何か言いたそうな感じなんだけど、サクラやスミレがいるのでこれ以上は踏み込んでこない。
俺は全然平気だけどな!!
「で。2人の案って出来そうです?」
「数日時間をくれなのじゃ」
「役に立たない師匠っすね……は! 思わず本音が。杖はまずい、サクラガード!」
膝に乗ってるサクラを盾にする。
ちょっと重たい。
「ちっ。馬鹿やってないでアンジェリカに説明してくるのじゃ。4日後にはなのじゃ」
「あっアリシアと早めに合流したいので早くできません?」
「…………明日の夜じゃな」
「じゃっそれで」
喜ぶサクラを床に置いて再び蜃気楼の城を出る。
湖畔にいる聖騎士隊にアンジェリカを呼んで貰って時間を潰していると、アンジェリカが嫌そうな顔で近くに寄って来た。
何となくだけど現場の空気がぴりっとする。
あれだよな。
部活で呼んでもいないのに突然に鬼OBが来た感じに似てる。
「何かしら? 午後のエステ予約キャンセルして来たんだけど、もしかしてもうレイの物手に入った?」
「いや。それなんだけどちょっとだけ時間貰っていい? って話。いまメルナに相談し終わった所」
「1日2日で出来るとは思ってないしいいわよ」
そうなの!?
てっきり1日で取って来いって依頼かと思ってた。
「え。じゃぁ……別にアリシアと別れて俺1人残る意味ないよね? 後日でもよかったら」
「やっと気づいた? もちろん1日で終わらせてくれるならそれに越した事なかったわよ。貴方なら1日で60億枚ぐらいのコインの出し方しってるじゃ? 半月ぐらいの期間はみてるわよ? それで進展なければまた別の道考えるだけだし」
そんなわけはない。
昔のゲームで『838861』枚カジノコインを交換すると40ゴールドで取り返れるバグはあったのはあるけど、『マナ・ワールド』では無理だ。
試したもの……普通に正規の値段提案されて終わる。
「だったら100億も借金ないわ!」
「そうね。でも気をつけてアリシア達の顔も割れてると思うし行動は1人のほうがいいわよ」
「もちろんそうするけどさ」
「あの、話ってそれだけ?」
「そうだけど」
俺の返事にアンジェリカの顔がしかめっ面になる。
「ここに来るのに数時間もかけてくるのよ? 要件はそれだけ? こっちはさっきも言ったけど午後の予定キャンセルして」
「それ以上に用事はない!」
「…………剣を取りなさい!」
アンジェリカの言葉に現役の聖騎士隊の体が震えだす。
「なんで!?」
「ここまで呼びつけて置いて、用事はそれだけって……来たついでにメルさんに会おうとも考えたけど貴方の口ぶりからするとメルさんは忙しいのよね。だったら本当にここに来た意味がないし、手紙でもいいわよね。その情報!!」
「いや、口頭のほうがいいだろ……大事な話なんだし」
「そうだけど!! この怒りを何所にぶつければいいのかしら」
俺は黙って聖騎士隊に指さす。
あれ……避けた。
じゃぁあっちの聖騎士隊に……むぅ、別の聖騎士隊も俺の指差し確認から避けていく。
3人、4人と指さすも全員が指差し確認から逃げて行った。
俺の周りには誰もいなくなる。
「どうやら貴方しかいないみたいね」
練習用の剣が飛んできた。
片手でキャッチするとアンジェリカの鬼気迫る気配が飛んできた。
「なっ!?」
俺はアンジェリカの剣を受け流す。
まともにやりたくない。
「殺意こもってない!? こういう時ってヒーラーが居ないとだめだよね!?」
「安心してハイポーションなら沢山あるから」
「ああ、だったら安心ってなるかーい!」




