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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
十一章

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98/114

第98話 罰

7月15日。木曜日。大安。


朝。

僕はチャイムが鳴り終わるのと同時に、

教室に駆け込んだ。

「冬至っ!

 遅刻だぞ。

 罰として、

 今日の放課後の掃除は

 1人でやるんだ」

「えっ!

 ギリギリ間に合ってたよ!」

「チャイムが鳴り終えた時点で

 席に着いておかなければ遅刻だ」

田村は僕の反論を一蹴すると、

出席簿を開いた。

「あらら。

 あっちは完全に

 冬至を敵として認識してるようね」

隣で幻夜がそっと軽口を叩いた。

「ちぇっ」

僕は小さく舌打ちした。

「あの悪霊の子は・・。

 消えたみたいだねぇ」

ふと声のした方へ目を向けると、

久瑠の後ろに立つ白髪の老婆と

目が合った。

僕はハッと息を呑んだ。

その時になって初めて、

円の霊がいないことに気付いた。

「それにしても。

 あの男は

 随分と調子が良さそうだねぇ」

僕は改めて田村を見た。

田村は今日もピシっとしたスーツに

身を包み、

髪は整髪料できっちりと

オールバックに固められていた。

血色も良く、

生気に満ちた顔をしていた。

「いいかい。

 外見に惑わされちゃ駄目だよ。

 美しい外見は醜い本性を隠す

 偽りの仮面だからねぇ。

 ああいう人間を

 『餓鬼』っていうんだよ」

老婆はそう言って、

皺だらけの顔に

穏やかな笑みを浮かべた。

僕はそっと息を吸い込んだ。


「幻夜・・。

 昨日の話だけどさ。

 その・・。

 賭けの件だけど・・」

「何よ。

 一晩考えたら、

 惜しくなったわけね。

 ふんっ。

 格好いいこと言った割には、

 結局は煩悩に勝てなかったのね」

そう言うと、

幻夜は僕に軽蔑の眼差しを向けた。

そして覚悟を決めたように、

「ふぅ」

と小さく息を吐き出した。

「わかったわよ。

 その代わり。

 そっと触るだけよ。

 ちょっとでも指を動かしたら、

 殺すから」

「ち、違うよ!」

僕は慌てて小声で抗議した。

「えっ?

 私のおっぱいを

 触りたいんじゃないの?」

「そ、そんなわけないだろ!」

「じゃあ何よ?」

幻夜が訝しげに眉をひそめた。

「・・あのさ。

 幻夜は探偵なんだろ?

 それなら。

 警察にもコネがあるよね?」

「・・ま。

 た、多少は・・ね。

 でも。

 それがどうしたのよ?」

幻夜は一瞬言葉に詰まると、

僕から視線をそらした。

「田村・・を捕まえたい。

 このままだと。

 妻鳥も円も浮かばれないよ」

幻夜の表情が僅かに曇った。

「あのね。

 妻鳥小絵の件は自殺。

 円響の件は事故死。

 警察はそう結論付けたのよ。

 今更、

 警察の判断を覆すなんて不可能なの。

 いくら。

 私が名探偵でもね」

幻夜はもう一度、

小さく息を吐き出した。

「ちぇっ。

 僕の知ってる名探偵とは、

 随分と違うんだね」

僕は皮肉混じりにそう言った。

その時。

「冬至!

 黙って話が聞けないなら、

 廊下に出てろ!」

田村の怒号が飛んできた。

僕は思わず舌打ちをした。

「何だその態度は?

 親御さんを呼び出すしかないな」

「えっ!

 ちょ、ちょっと待ってよ。

 そんなのひどいよ!」

「なら。

 罰として。

 夏休みまで、

 放課後の掃除は、

 お前が1人でするんだ」

「は、はーい・・」

僕は返事をして、

大きく溜息を吐いた。

幻夜の方を見ると、

頬杖をついたまま、

口元に笑みを浮かべていた。

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