第89話 勘違い
「へっ?
ぼ、僕?」
「ああ。
心当たりはねえのか?」
そう言われて、
僕は妻鳥と一度だけした
デートのことを思い出した。
まさか。
見られていたなんて。
しかし。
これで疑問が解消される。
円は僕と妻鳥の関係を知っていた。
それが意味することは・・。
改めて小林の言葉が頭をよぎった。
『円が恋敵の妻鳥を殺した』
妻鳥が死んだあの日。
妻鳥と屋上で話を終えた円は、
帰ると見せかけて、
引き返した。
そして。
屋上の縁に立つ妻鳥の背中を押した・・。
「・・やっぱり。
僕のせいで・・。
円は妻鳥を・・」
無意識のうちに言葉が漏れた。
「おい?
何をブツブツ言ってんだ?
妻鳥を殺したのは円じゃねえぞ」
「え、えっ?」
その言葉で僕はハッと我に返った。
レジ袋に空いた2つの穴の奥の目が、
パチパチと瞬いた。
「お前、
何か勘違いしてねえか?」
「勘違い?」
僕は小さく首を傾げた。
「ああ。
まさかとは思うが。
円がお前に惚れてて、
妻鳥が邪魔だったから殺した。
なんて考えてるわけじゃねえよな?」
「そ、それは・・」
「バカヤロウ。
どこまで自意識過剰なんだよ。
いいか。
女王様がお前に惚れると思うか?」
「で、でもさ!
あの日。
妻鳥は僕と別れるように、
円に責められたんだよ!」
僕がムキになって反論すると、
白露は大袈裟に肩をすくめた。
「だから。
それが大きな勘違いなんだよ。
いいか?
円はお前じゃなくて、
妻鳥のことが好きだったんだよ」
「へっ・・?」
一瞬、
白露の言葉の意味がわからなかった。
「何、固まってんだよ?
もう1回言うぞ。
円響は妻鳥小絵のことが
好きだったんだよ」
「そ、それは・・つまり・・」
僕は震える声で問い返した。
「だから。
もし円が嫉妬で殺すとしても、
その相手は妻鳥じゃなくて、
お前だよ」




