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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
九章

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78/114

第78話 白露の冒険②

この日。

正午を少し回った頃、

白露は市内でも有数の高級住宅街である

允恭町へと足を運んだ。

道幅は広く、

建ち並ぶ家々は

どれも高い塀や生垣に囲まれていた。

広々とした敷地も相まって、

一般的な住宅街とは

明らかに趣が異なっていた。

人影はほとんどなく、

遠くを走る車の音だけが

聞こえていた。

白露はそんな街を、

フラフラと彷徨っていた。

その時。

周囲の家々より

ひときわ大きな豪邸の前で、

1人の少女を見かけた。

肩まで伸びた青い髪は乱れて、

細い眉の下にある、

やや吊り上がった二重の目は、

どこか虚ろだった。

細く高い鼻の下にある薄い唇は青ざめ、

頬も僅かにこけていた。

薄いピンクのワンピースから伸びる

手足はやけに細く白かった。

少女がインターホンを押すと、

重厚な和風の門がゆっくりと開いた。


「それでよ。

 門の表札には

 『円』って書かれてたぜ。

 つまり。

 俺様が田村の家で見たあの子は

 円響なんじゃねえのか?」

「う、うん・・。

 多分・・そうだね」

「へっぷ!

 まさかお前、

 知ってたのかよ」

僕は小さく首を振った。

「何となく。

 そんな気がしてただけだよ・・」

「マジかよ。

 あの子が噂に聞く、

 女王様気取りの性悪女かよ。

 てっきり、

 意地悪そうな顔を想像してたけど、

 滅茶苦茶美人じゃねえか。

 あれなら、

 女王様の資格は十分にあるぜ」

「は、ははは・・。

 別に美人じゃないと

 女王様になれない

 ってわけじゃないけどね・・。

 それと。

 1つ言わせてもらうけど。

 円の髪の色は

 杜若色っていうんだよ」

「何だよそれ。

 聞いたことねえぞ、

 そんな名前の色」

「だとしてもだよ。

 せめて紫色って言ってよ。

 情報は正確に伝えてもらわなきゃ」

僕は口を尖らせた。

「けっ。

 悪かったな。

 てかよ。

 本題はここからだ。

 円は普通に

 門を開けて中に入ったんだ。

 つまり。

 あの女は死人じゃねえってことだ」

「ああ・・そのことだけどさ」

僕はスガワラさんから聞いた話を

白露に伝えた。


「何っ!

 生霊だと?」

「うん。

 強い執着によって、

 生きてる人間の魂が肉体を離れ、

 別の場所に現れることがあるんだって」

白露に説明しつつも、

僕自身、

円が田村に執着する理由が

わからなかった。

「なるほどな。

 つーかよ。

 生霊になったのは本人の意志だから、

 とやかく言うつもりはねえけどよ。

 あの女ヤバいぜ」

「ヤバい?」

僕は首を傾げた。

「ああ。

 あの女にはな。

 黒猫の霊が憑いてるぜ」

「えっ?」

「あの女が

 門から中に入っていく時によ。

 1匹の黒猫が

 音もなく後をついていったんだ。

 ところがだ。

 そいつの黒い小さな体には、

 頭がなかったんだよ」

「えっ、ええっ!」

「つまりだ。

 猫殺しの模倣犯は、

 女王様だったってわけだ。

 ったく。

 とんでもねえ女だぜ。

 生霊になるわ、

 黒猫は殺すわ。

 案外、

 妻鳥を殺したのも、

 あの女じゃねえのか?」

白露はそう言って

「ヒヒヒ」

と笑った。

白露の言葉が、

胸に引っ掛かった。


・・円が妻鳥を殺した。


あの日。

妻鳥と最後に会話をしたのは円。

円は喫煙者でもある。

そして。

動機は・・ある・・のか。

「はぁ」

自然と溜息が漏れた。

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