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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
九章

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73/118

第73話 少女と脅迫状と煙草の香り

家に帰り着くと、

時刻は22時を回っていた。

僕はベッドに倒れ込んだ。


「説明しろよ」

白露はそう言って、

僕の代わりに机に腰を下ろした。

「聞きたいのは僕の方だよ。

 あの部屋には、

 兄ちゃん以外に霊はいなかった」

「じゃあ俺様が見た

 青い髪の女の子は誰なんだよ?」

「見間違いじゃないの?

 レジ袋の穴からだと

 視界が狭いでしょ?」

「バカヤロウ。

 そんなわけねえだろ!」

白露が声を荒げた。

僕はゆっくりと体を起こした。

「一度整理しようよ。

 田村先生の家で兄ちゃんは

 青い髪の少女を見た。

 でも。

 少女の方は

 兄ちゃんを認識してなかった。

 そして。

 兄ちゃんの声も

 少女には届いてなかった。

 だから。

 兄ちゃんは

 彼女が生きている人間だと思った」

僕の言葉に白露はうんうんと頷いた。

「でも。

 その少女は僕と田村先生には

 見えなかった。

 そして。

 少女は兄ちゃんの見てる前で、

 引き戸をすり抜けた。

 つまり。

 少女は霊体だった」

「矛盾してるよな」

「うん。

 少女が霊なら兄ちゃんの声が

 届いてるはずだし、

 僕にも見えてるはず・・」

その時。

僕は昨日から妻鳥の霊が

見えなくなっていることを思い出した。

何か関係があるのかもしれない。

僕はそのことを白露に話した。


「でもよ。

 俺様や山田の爺さんの姿は

 見えてるんだろ?」

「そこが謎なんだよね」

僕は溜息を吐いた。

「・・うぬぬ。

 とりあえず。

 そのことは後で考えるとしてだ。

 田村が妻鳥を殺したってのは、

 ほぼ確定のようだぜ」

そう言うと白露は、

「ヒヒヒ」

と笑った。

僕は首を傾げた。

「あの引き戸の部屋の、

 ベッド脇の机に

 1枚の便箋があったんだがよ。

 何が書かれてたかわかるか?」

僕は首を振った。

「驚くなよ。

 そこにはな。

 『お前が妻鳥の死を自殺に偽装した』

 って書かれてたんだよ」

「えっ!」

僕は思わず息を呑んだ。

「あれは脅迫状だ。

 田村は脅されてたんだよ。

 誰かが見てたんだ。

 田村が偽装工作するところをな」

そう言って白露はもう一度、

「ヒヒヒ」

と笑った。


時計の針が

コチコチコチと時を刻んでいた。


白露の言葉が頭の中を

ぐるぐると駆け巡っていた。

妻鳥を屋上から突き落とした田村は、

死体から上履きを回収してから、

屋上に置いた。

そして。

第一発見者を装って通報した。

第一発見者を疑うのは捜査の基本。

でも・・。

「何だよ。

 納得してねえって顔だな」

「う、うん・・」

田村の家を後にする時、

僕は最後の質問をした。

煙草を吸うのかと。

その結果。

田村は首を横に振った。

「酒・・は、

 飲む・・が、

 煙草・・は、

 吸わな・・い。

 それ・・に。

 うちの学校・・は、

 その辺も厳しい・・んだ。

 教師で・・吸ってる人・・は、

 いな・・い・・ぞ」

田村はそう言ったのだ。


「あのな。

 そんなこまけえことはいいんだよ。

 煙草の香り自体が、

 妻鳥の勘違いかもしれねえだろ?」

ふいに疑問に思った。

「ねえ。

 その脅迫状の送り主はさ。

 田村先生が屋上に上履きを

 置くところを見たんだよね?」

「当然、

 そうなるだろうな」

一体、

それは誰なんだろう。


「リーリー。リーンリーン」

その時。

ドアホンが鳴った。

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