第66話 田村孝太郎
ハヤマミカと別れた白露は、
黄昏色に染まった路地を歩く
1人の男の姿を目撃した。
それが田村だった。
「そういや。
あの野郎。
随分と顔色が悪かったぜ。
重い病気じゃねえのか?」
「う、うん」
田村は期末試験が始まったあたりから、
どこか具合が悪そうだった。
寝癖のついたボサボサの髪には、
あちこちに白いフケが浮いていた。
その顔には生気がなく、
目の下にはクマが浮かんでいた。
グレイのスーツは皺だらけで、
所々ほつれていた。
そのことはクラスでも話題になったが、
皆試験のことで頭が一杯で、
すぐに興味を失くしていた。
「期末試験の準備や採点で
忙しかったのかな?
それで。
どうしたのさ?」
「だからよ・・」
田村の様子に違和感を覚えた白露は、
そのまま田村を尾行した。
しばらくすると田村は
『アーバン土師』
という8階建てのマンションに
入っていった。
403号室。
そこが田村の住まいだった。
「あの野郎。
児童性愛者だぜ」
「へっ?」
あまりにも唐突な一言に、
僕は思わず目を瞬かせた。
「確か。
田村って独身だよな?」
「う、うん。
それがどうしたのさ?」
「ヒヒヒ。
あの野郎、
家に女の子を連れ込んでるぜ。
それも。
お前と同い年くらいの女の子だ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。
人違いじゃないの?
そもそも。
兄ちゃんは田村先生の顔を
知らないだろ?」
「バカヤロウ。
愚問だぜ。
前にお前の授業参観を覗いた時に、
顔は確認してるからな。
間違えるわけないぜ。
あれ・・?
そういや。
その女の子だけどよ。
どっかで見たことがあるような、
ないような・・」
「へぇ。
一体どんな子なの?」
「そうだな。
肩まで伸びた青い髪が
魅力的な子だったな。
二重の釣り目が若干、
気が強そうに見えたけどな。
それでも。
間違いなく美人だったぜ」
「青い髪に二重の釣り目だって・・?」
思わず声が裏返った。
「何だよ。
心当たりがあるのか?」
「ううん。
まさか・・ね」
僕は慌てて首を振った。
「ま。
教師なんていうのは毎日職場で
うら若き少女達に囲まれてるだろ?
正常な人間でも、
徐々に判断が狂ってくるだろうさ。
暗示や催眠と同じだ。
それにな。
田村の部屋の中にはそれ系のDVDが
山積みだったぜ。
通報すりゃ児童ポルノ禁止法で、
捕まるんじゃねえか?」
白露の話に耳を傾けつつ、
僕は青い髪の少女について、
思いを巡らせていた。




