第65話 白露の冒険①
この日。
太陽が南中に差し掛かる頃。
白露は『テングビル』を出て、
一直線に土師町を目指した。
それは文字通り一直線である。
霊体である白露にとって、
物理的な障害はない。
そして。
重力や風の影響を受けない霊体の
移動速度は常人よりもはるかに速い。
当然、
息が上がったり、
疲れることもない。
「ヒヒヒ。
その気になれば。
俺様は世界一周旅行だって
できるんだぜ」
以前、
そう言って旅立った白露は
2日もせずに帰ってきた。
「もっとゆっくりしてくれば
良かったのに」
と僕が言うと、
「旅行したところで、
美味いモノが食えるわけでもねえし。
感動を共有する相手もいねえ。
面白くねえんだよ」
白露はそう吐き捨てていた。
土師町に着いた白露は、
あてもなく町を彷徨った。
そして。
太陽が西へ傾き始めた頃、
白露は稲置市から来たという
浮遊霊の少女と出会った。
少女は白露と同じ小学6年生で、
ハヤマミカと名乗ったそうだ。
今から38年前の夏。
彼女は通っていた小学校で殺された。
彼女は無念から地縛霊となって、
校舎の屋上に棲み付いた。
後に。
彼女を殺した人間が、
同じ場所で息絶えた。
その結果。
彼女は呪縛から解放された。
しかし。
彼女は成仏せずに、
浮遊霊としてこの世に留まり、
今も彷徨い続けているらしい。
「可愛い子だったぜ。
お前にも会わせてやりたかったな」
そう言って白露は
「ヒヒヒ」
と笑った。
「それは良かったね。
この際付き合っちゃえば?」
僕は軽口を叩いた。
「バカヤロウ。
いくら可愛くても
実際の彼女は50歳だぜ。
それにだ。
彼女は初恋の人を探してる
って言ってたからな。
俺様の出る幕じゃねえよ」
「そ、そうなんだ・・。
そんなことよりさ。
早く本題を聞かせてよ」
僕が促すと、
白露は「へっぷっ」と
レジ袋を膨らませてから話を続けた。




