第59話 姫という属性
「今夜は姫は来ねえのか?」
部屋でパソコンの画面を眺めていると、
ふいに背後から声がした。
僕はくるりと椅子を回して振り向いた。
白露が片肘をつき、
ベッドに横になっていた。
「あのさ。
その姫って・・。
まさか幻夜のことじゃないよね?」
「他に誰がいるんだよ」
レジ袋に空いた2つの穴の奥の目が、
パチパチと瞬いた。
「あのね。
あいつは姫という属性からは
最も遠い存在だよ。
大体、
兄ちゃんは趣味が悪いんだよ」
僕はわざとらしく溜息を吐いた。
「バカヤロウ。
お前はまだまだ子供だな。
ああいう女を、
イイ女って言うんだぜ。
あの目で睨まれて罵倒された日には、
この俺様も成仏しちまうかもな」
「何を馬鹿なことを言ってるんだよ。
『俺様を殺したヤツを
見つけて、
地獄送りにするまでは
成仏できねえ』
って息巻いてたくせに。
それに。
幻夜の目は間違いなく
人殺しの目だね。
あんな氷のように冷たい目で
睨まれたら、
そりゃ悪霊でも成仏するかもね。
そっか。
いっそのこと。
兄ちゃんが成仏してくれた方が
僕は平和な生活が送れるのか」
「へっぷ。
それが血を分けたお兄様に向かって
吐く台詞かよ!
この薄情者が!」
僕は白露の言葉を無視して、
改めてモニターに向かった。
「兎に角。
今は兄ちゃんに構ってる暇は
ないんだよ。
妻鳥を殺した犯人を
見つけ出さなきゃ」
「そのことだがよ。
難しく考える必要は
ねえんじゃねえか?
結局は妻鳥が最後に会話した奴が、
犯人だろ?」
「そんなに単純な話なら、
この世から未解決事件は無くなるね」
「あのな。
良いことを教えてやる。
本来物事ってのは単純なんだよ。
それを頭が良いと勘違いしてる連中が、
複雑にしてるだけなんだよ」
そう言うと白露は、
「ヒヒヒ」
と笑った。




