第112話 夜這い
闖入者は、
ゆっくりと室内を見回していた。
白い壁紙と明るい木目のフローリングが
印象的なリビングキッチンは、
綺麗に掃除されていた。
部屋の中央に置かれた
ローテーブルの上には、
赤ワインの注がれた
ワイングラスがあった。
静まり返った室内に、
人の気配はなかった。
その時。
廊下のドアが開いて、
裸の田村が、
濡れた髪をタオルで拭きながら、
部屋に入ってきた。
頬は赤く火照り、
肌にはまだ僅かに水滴が残っていた。
「だ、誰だ!」
田村が目を見開いた。
闖入者はそれに答える代わりに、
ゆっくりとフードを脱いだ。
「・・も、望月。
お、お前どうしてここに・・。
それに・・。
どこから入ってきたんだ?」
田村は戸惑いながらも、
頭に載せていたタオルから手を離し、
幻夜をじっと見つめた。
田村は裸身を隠そうともせず、
いや、
むしろ幻夜に見せつけるように、
腰を突き出した。
股の間には、
成虫になる前の蛹が
ゆらゆらとぶら下がっていた。
「望月。
こんな真夜中に
男の家を訪ねてくるなんて、
ずいぶん大胆じゃないか。
知ってるか?
お前のやってることは、
夜這いっていうんだぞ?」
田村が濡れた髪を
オールバックに撫でつけた。
幻夜は無言のまま、
こくりと頷いた。
「・・そうか。
お前くらいの年頃なら。
大人の男に惹かれるのも
無理はないが・・。
だが。
俺は教師で、
お前は生徒だ」
言葉では戒めながらも、
田村の口元には、
微かな笑みが浮かんでいた。
幻夜は田村の股の間に
ぶら下がっている蛹を一瞥すると、
黒のロングコートを脱ぎ捨てた。
その下から、
黒いタンクトップとレギンスに包まれた
魅惑的な体が現れた。
ぴたりと張り付いた黒い布地が、
幻夜の体の曲線を
艶やかに浮かび上がらせていた。
「・・でも。
先生は円響を抱いてたんでしょ?」
そう言って、
幻夜はペロッと舌を出した。
「望月・・お前・・」
田村の蛹がピクピクと反応した。
幻夜は後ろで束ねていた髪を解くと、
両手で大袈裟にかき上げた。
そして。
徐にタンクトップを脱いだ。
白く張りのある乳房が、
ぷるんと跳ねた。
時計の針が
ギシギシギシと時を刻んでいた。
「何を・・考えて・・るんだ。
・・望月?」
田村がごくりと唾を飲み込んだ。
「先生。
灯りを消して」
幻夜は両手で胸を隠すと、
俯き加減で囁いた。
次の瞬間。
田村の蛹が、
むくむくと起き上がり、
みるみるうちに膨れ上がった。
やがて、
その頭部を覆っていた皮が
つるんと剥けた。
「・・このことは。
2人だけの秘密だぞ、望月」
田村が掠れた声を出した。
幻夜がにこりと微笑んだ。
小さな八重歯が覗いていた。




