第101話 新たなる被害者
7月20日。火曜日。仏滅。
朝。
僕はホームルームが始まる10分前に、
教室に入った。
また田村に難癖を付けられたら、
たまらないからだ。
兎に角。
明日の終業式を終えれば夏休みに入る。
田村のことはその間に
考えるつもりだった。
何としてでも。
その罪を償わせてやる・・。
チャイムが鳴っても、
田村は現れなかった。
教室が騒つき始めた頃、
ふいにドアが開いた。
入ってきたのは、
体育教師の佐々木だった。
佐々木は教壇に立つと、
一通り教室を見回してから、
神妙な面持ちで口を開いた。
「えー。
今日は皆に悲しいお知らせがある。
昨夜・・。
田村先生が亡くなった」
一瞬の静寂の後、
あちこちから声が上がり、
教室はたちまちどよめきに包まれた。
僕はただ呆然と、
佐々木の姿を見つめていた。
「詳しいことは警察が調べてる。
もしかすると。
警察から話を聞かれることが
あるかもしれないが、
その時は協力してくれ」
警察という言葉に、
僕は首を捻った。
周りを見渡すと、
クラスメイト達も一様に
困惑した表情を浮かべていた。
そんな中。
幻夜だけは退屈そうに頬杖をつき、
欠伸を噛み殺していた。
佐々木が出ていくと、
教室は改めて喧騒に包まれた。
圭太がスマホを取り出し、
ネットニュースを開いた。
僕と良司は
圭太の肩越しに画面を覗き込んだ。
それによると・・。
今朝。
土師町にある『アーバン土師』の
403号室のベランダで、
手摺りにもたれかかるようにして、
両手を広げた人影を、
朝刊の配達員が発見した。
その人影には、
あるべき位置に頭がなかった。
つまり。
首無し死体だった。
通報を受けて
駆けつけた警察官によって、
被害者は部屋の住人である
田村孝太郎
であることがわかった。
そして。
死体の首は
切断されていたにもかかわらず、
ベランダにも、
そして部屋にも、
一滴の血の跡も残されていなかった。
さらに。
切り落とされた頭部は、
どこからも見つかっていなかった。
記事のコメント欄では、
『ギロチン処刑殺人事件』
の新たな被害者が出たと、
異様な盛り上がりを見せていた。




