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異端者達のメメント・モリ ~冬の始まり  作者: Mr.M
十一章

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第100話 嘘と真

「き、今日の田村先生・・。

 と、冬至くんに対して、

 き、厳しかったけど。

 な、何かあった?」

一通り掃除が終わり、

掃除用具入れに箒を仕舞っていると、

小林がそんなことを口にした。

「え・・あ、ああ。

 そう・・かな?

 単なる八つ当たりだよ。

 彼女にフラれたんじゃないの?」

僕は圭太と良司に話したのと

同じ理由を並べて誤魔化した。

僕は窓際まで歩いていき、

くるりと小林に向き直った。

「この前の話だけどさ」

「う、うん・・?」

小林は僅かに首を傾げた。

「円が僕のことを

 好きだったっていう・・」

小林が無言で頷いた。

「残念だけど。

 その推理は間違ってる」

小林がふたたび首を傾げた。

「実は・・」

そこで一度、

僕は唾を飲み込んだ。

「・・僕は円にフラれたんだ」

前髪に隠れた黒縁眼鏡の奥の目が、

大きく見開かれた。

「だからさ・・。

 円に妻鳥を殺す動機はないよ」

「ほ、本当・・?」

開いた窓から生温い風が入ってきて、

僕の背中をゆっくりと撫でた。

僕は小林に背を向けて、

窓を閉めた。


「も、もしそれが本当なら・・。

 つ、妻鳥さんを殺したのは・・。

 あ、安武マリア・・かも」

小林の消え入りそうな声に、

僕は驚いて振り向いた。

「お、屋上で見た人影は・・。

 ぜ、絶対に女だった」

小林は力強く言い放った。

「ちょ、ちょっと待てよ。

 仮に。

 小林の目撃した人影が

 女だったとして。

 でも。

 それがどうして、

 マリアになるんだよ?」

小林は大きく息を吸い込むと、

躊躇いがちに口を開いた。

「あ、安武さんは・・。

 と、冬至くんのことが・・。

 す、好きだった・・」

「はぁぁぁ?」

肩の力がスッと抜けた。


窓の閉め切られた教室には、

熱気が漂っていた。

額にじわりと汗が滲んだ。

遠くから

微かに蝉の鳴き声が聞こえてきた。


「・・円の時も同じことを言ってた。

 でも。

 それは小林の勘違いだったよね」

「そ、それは・・。

 で、でも・・!

 こ、これに関しては・・!

 じ、自信があるんだ・・!

 あ、安武さんが・・。

 と、冬至くんを見る目・・。

 あ、あれは・・。

 ま、間違いなく・・。

 あ、愛する人を見る目だった・・」

小林の口元がキッと結ばれた。

僕は大きく溜息を吐いた。

「あ、安武さんは・・。

 こ、恋敵の妻鳥さんを・・。

 こ、殺した・・」

そう言うと、

小林は黒縁眼鏡のブリッジに

そっと手を触れた。

教室の熱気が

僕の体をねっとりと包み込んだ。

僕は小さく息を吸い込んでから、

額に滲んだ汗を拭った。

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