表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ありがとう200万PV!!不定期連載再開】競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬
19歳の挑戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
407/409

第四話 騎手免許試験直前

十二月二十日。十勝は本格的な雪に覆われていた。

白樺凛花は美保厩舎の休憩室で、目を真っ赤にしながら筆記試験の過去問を解いていた。

大学2年生、20歳。騎手免許試験本番まであと5日。

机の上には分厚い法規のテキスト、競走馬の生理学ノート、ばんえい競馬規則集が山積みになっている。

朝4時半からの厩舎作業、大学講義、夕方の騎乗練習、夜の勉強、ここ1ヶ月、睡眠時間は平均4時間半を切っていた。


「凛花、もう少し休め。倒れたら元も子もないで」


宝田誠が温かいココアを差し出しながら心配そうに声をかけた。


「ありがとうございます、宝田さん……でも、あと少しだけ。法規の問題がまだ弱いんです……」


そこへ武田文吉師匠が入ってきた。

いつもの厳しい表情で、凛花の様子を一瞥する。


「明後日は最終実技チェックだ。オトカリ、ナカヤマタイガー、キタノキングの3頭を乗り換えで乗れ。

体重移動の遅れが0.3秒でもあったら、俺は推薦を取り消す」


「はい……! 絶対にミスしません!」


美保晋三が苦笑しながらフォローした。


「武田先生、ちょっと厳しすぎるんちゃうか? 凛花はもう十分頑張ってるで。

大学もほとんどオール出席やし、成績も落ちてへん」


武田は腕を組んだまま、静かに続けた。


「甘い言葉は要らん。

ばんえいの騎手免許は一度落ちたら来年や。凛花、お前は夢雪を3歳シーズンで乗りたいと言ったな? 

その夢をこの試験で潰すつもりはないだろう?」


凛花は唇を噛み、力強く頷いた。


「ありません……! 絶対に合格します。20歳で騎手になって、夢雪を引きます。」


夜9時半。凛花は厚着をして厩舎の奥へ向かった。夢雪の馬房の前で立ち止まり、静かに座り込む。


赤と白の斑模様の牝馬は、凛花の気配を感じてすぐに首を伸ばしてきた。


「夢雪……ごめんね、最近あまり構ってあげられなくて。試験が終わったら、毎日ちゃんと練習しようね。」


夢雪は馬房の中から大きな頭を出し、凛花の頰に鼻面をスリスリと擦りつけた。


甘えん坊の仕草はそのままに、体は確実に逞しくなっている。


凛花は夢雪の斑模様を指でなぞりながら、掠れた声で呟いた。


「私、今めっちゃ怖いよ……。落ちたらどうしようって。師匠に怒られるのも、みんなに迷惑かけるのも嫌だけど……一番嫌なのは、君を待たせてしまうことなんだ。」


夢雪は「フゥー」と優しく鼻を鳴らし、凛花のポニーテールをそっとくわえた。


まるで「大丈夫だよ」と励ましているかのように。


その時、背後から足音がした。武田師匠だった。珍しく、いつもの厳しさとは違う、穏やかな目をしている。


「凛花。試験前に緊張するのは当たり前だ。

だが、お前はここまでやってきた。実技は俺が認めるレベルに達している。筆記も最後の詰めだ。自信を持て。」


「……師匠」


「あと5日、お前が倒れないよう、わしも最大限サポートする。夢雪も待っている。逃げるな。全力でぶつかれ。」


凛花は立ち上がり、深く頭を下げた。目尻に涙が浮かんでいた。


「はい……! 全力で挑みます!」


その夜、学生寮に戻った凛花は、ベッドの上で最後のノートをまとめていた。


騎手免許試験 最終チェック項目実技:ソリ上体重移動・タイミング・声かけ(特に第二障害)

筆記:法規・馬学・競走規則

精神:絶対に諦めない


スマホに遊馬からのメッセージが届く。


遊馬: 「最終調整データ送れ。心拍変動と睡眠時間を分析する。君なら受かる。俺は信じている。」


凛花は小さく微笑んで、窓の外の雪景色を見つめた。


(夢雪……あと少しだけ待ってて。

私、絶対に20歳で騎手になる。

君と一緒に走るために。)


試験本番まで残り5日。

白樺凛花の、人生最大の挑戦が最終局面を迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ