表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ありがとう200万PV!!不定期連載再開】競馬小説ドリームメーカー  作者: 泉水遊馬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
395/409

第二話 翌春 卒業、そして新しい道

空は、3月下旬とは思えないほど青く澄み渡っていた。

白樺凛花は、高校の卒業式を終えたばかりの制服姿で、飛田牧場の広場に立っていた。

黒髪のポニーテールに桜色のリボンを付け、頰は少し紅潮している。

手には卒業証書を大事そうに抱えていた。


「凛花、おめでとう!」


牧場中に笑顔と拍手が広がった。簡易テントの下には手作りの料理と、ユキヒメのミルクを使った特製ケーキが並んでいる。


夢雪(生後1年8ヶ月)はもう立派な若馬になり、赤と白の斑模様を輝かせて凛花の周りを元気に駆け回っていた。


「りんかー! もう大学生なんやなあ。えらいわー!」


宝田誠が大阪弁全開でビールを片手に近づいてくる。獣医の白衣は脱いで、


今日は派手なアロハシャツ姿だ。


「宝田さん、ありがとうございます……! 本当に、みんなに支えてもらってここまで来れました」


凛花は照れくさそうに頭を下げた。隣では飛田雅樹と菱田瑤子が優しく見守っている。


遊馬(11歳)は、少し離れた場所から冷静に状況を観察していた。

大人びた表情はそのままに、夏休み以来さらに背が伸びていた。


「凛花さん。農業大学とばんえい騎手養成コースとの両立スケジュールも、俺が最適化した。

週5日は大学、残りは美保厩舎での実習と牧場トレーニングを並行可能だ。

ただし、体調管理は徹底しろ。握力と体幹の数値が落ちたら即フィードバックする」


「遊馬くん……相変わらず鬼だね(笑)」


凛花が笑うと、遊馬はわずかに頰を緩めた。


「当然だ。君は俺の長期プロジェクトの被験者……じゃなくて、未来のばんえい騎手だからな」


瑤子が静かに微笑みながら、凛花の肩に手を置いた。


「凛花。私は約束通り、一生面倒見るわ。大学寮に入るなら生活費もサポートする。

夢雪の共同オーナーとして、彼女の成長も一緒に追いかけましょう」


「瑤子さん……本当に、ありがとうございます」


そこへ、シラユキが大きな体をゆったりと近づけてきて、凛花の背中に鼻面をスリスリと擦りつけた。

夢雪も負けじと前脚を軽く上げて甘える。


「ユキヒメ、夢雪……私、絶対に騎手になるよ。二人をちゃんと引いて、ばんえいの世界に連れて行くから」


凛花は二頭の馬を抱きしめるように頭を撫でた。目尻に少し涙が浮かんでいる。


パーティーが進む中、雅樹が皆の前に立った。


「凛花は今日から大学生だ。十勝に残って、ばんえいの道を本気で目指す。俺たち飛田牧場も全力でバックアップする。……ただ、寂しくなるな」


すると、遊馬が小さく息を吐いた。


「父さん、母さん。僕もそろそろ東京に戻るよ。明日朝の便で」


一瞬、場が静まった。


「え……もう? もうちょっと居ればいいのに……」


凛花が驚いた顔をする。遊馬は肩をすくめた。


「東京の学校の新年度準備がある。

俺は理論派として、データとプログラムでサポートする。

現地にいる凛花さんが実践派。役割分担だ」


宝田が遊馬の頭を軽くくしゃくしゃにした。


「坊ちゃん、相変わらずカッコつけやがって。寂しいんやったら素直に言えや」


「宝田さん、余計なことを」


遊馬は口では否定しながらも、牧場を見回す目にわずかな未練が浮かんでいた。


夕陽が牧場をオレンジ色に染める頃、凛花は遊馬を夢雪の柵の近くに連れて行った。


「遊馬くん……ありがとう。夏の肉体改造メニュー、毎日死にそうだったけど、あれがあったからここまでこれたよ」


「当然の成果だ。……凛花さん」


遊馬は珍しく少し声を落とした。


「夢雪の闘志は本物だ。君が騎手になれば、必ずいいコンビが組める。

俺も、時々十勝に来るかもしれない」


凛花は満面の笑顔で頷いた。


「うん! 待ってる。次に会う時は、私、もっと強くなってるから!」


夢雪が二人の間に割り込み、遊馬の手をペロペロと舐めた。


遊馬は珍しく小さく笑って、夢雪の額を撫でた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ