第七話 凛花の決意
レース終了後、帰りの車の中。
凛花は窓の外を見つめながら、ずっと黙っていた。 瑤子が後部座席から静かに声をかけた。
「リン。どうしたの? 興奮しすぎて声が出なくなった?」
凛花はゆっくりと振り返り、決意を込めた目で言った。
「瑤子さん……私、本気で騎手になりたいです。
高校を卒業したら、帯広で厩務員になって……
夢雪ちゃんと一緒に走りたい」
車内に一瞬の静寂が落ちた。
飛田雅樹がハンドルを握ったまま、優しく言った。
「高校2年生の今から、本格的に始めるのか?」
「はい。
学校が終わったら毎日牧場で夢雪の世話をして、
体力づくりとソリの扱い方も勉強します。
……まだ夢雪ちゃんは小さいけど、私がちゃんと準備して、
いつか一緒に走れるようにしたいんです」
後部座席で遊馬が眼鏡を光らせた。
「合理的です。
高校在学中に基礎体力と馬の理解を深めておけば、卒業後の厩務員生活で有利に働きます。
最短で19歳デビューも不可能ではありません」
瑤子が微笑んだ。
「わかったわ。
すべて私に任せなさい。
学校との両立計画も、体力メニューも、帯広の厩舎とのパイプも……
私がしっかりサポートする」
武田文吉が低く笑った。
「ふん……小娘が。
俺がばんえいに来る頃には、夢雪の調教を手伝え。
お前が騎手になるなら、俺がソリの鬼にしてやる
浦河の穣ちゃんに目がそっくりだな。」
凛花は目を輝かせ、深く頭を下げた。
「ありがとうございます……!
私、頑張ります!」
車窓の外を、雪の降る北海道の景色が流れていく。
現役女子高生二年生、白樺凛花の本格的なばんえい騎手への挑戦が、静かに始まろうとしていた。




