第89話 四魂
引き続き、佳鈴の視点から行きます∠(`・ω・´)
気持ち良かった〜♫
お風呂はやっぱり心の洗濯だね!
ホカホカした気持ちで、メイちゃんの身体をバスタオルで拭いていく。
もっとお風呂に浸かりたかったみたいだけど、上がらないと龍太郎の作ったご飯が冷めちゃうからね。
薄着の寝間着をメイちゃんに着せると、その一挙手一投足の全てがカワイイ!
お風呂で綺麗になって、隠れてた可愛さが全面に出てた!
「可愛くなったね、メイちゃん!」
「……………」
自分の姿を、鏡でマジマジと見つめるメイちゃん。
顔の表情はほとんど変わらなかったけど、多分カワイイと思ってる……はず?
とりあえず、私達は一緒にリビングへと向かった。
「龍太郎、お風呂上がったよ〜」
「おぅ」
丁度机の上に、出来上がった料理を運んでた最中だった。
あ、今日は素麺なんだ?
「先に食べててくれ、あとコレ揚げるだけだから」
そう言うと龍太郎は、下拵えをしたエビに衣を着けて、フライパンに薄く張った油の中にエビを投入していく。
パチパチと油の跳ねる良い音が響いて、私の食欲をそそる。
そして素麺を彩るキュウリの千切りや角切りにされたトマト。
薬味にミョウガやネギに生姜が用意されてた。
トッピングのシイタケの甘煮や錦糸卵もある!
天ぷらが出来るまで、私達は用意された素麺を啜る事にした。
「…………これ」
「ん?なに?」
「これ、食べられるの?」
そう言ってメイちゃんが、シイタケに指を差して聞いてきた。
シイタケ嫌いなのかな?
「食べれるよ、龍太郎の作るものは美味しいんだから♪」
「……これも、そう?」
次に指差したのは錦糸卵。
なんだろ?嫌いなもの……というより、シイタケや卵を見たことないような、そんな感じがするな?
「美味しいよ!さ、食べよ!」
私は固まって動かなかったメイちゃんを席に座らせて、龍太郎特製のつけ汁を差し出した。
シイタケの甘煮を作るのに干しシイタケを使ってて、その戻し汁を市販のめんつゆに入れるだけでメチャクチャ美味い!
私はネギと生姜の薬味を加えて、つゆに素麺をつけて啜る!
「くぅ〜〜〜!!」
美っ味い!
シイタケの戻し汁入れただけで、どうしてこんなに美味いのかな!?
次は錦糸卵と素麺を一緒に啜る。
錦糸卵にもお出汁で軽く味付けされてて、つゆの味が引き立てられてる!
私が美味しそうに食べてるのを見てて、メイちゃんはおぼつかないお箸の使い方で、恐る恐る素麺を啜ってみた。
すると目を少し見開いて、素麺とおつゆを交互に何度も見た。
表情は変わらなかったけど、眼がキラキラしてイキイキとしてるように見える。
他にも私がキュウリやトマトと一緒に素麺を食べると、メイちゃんも同じ様にしてキュウリとトマトを素麺と食べる。
その度に眼がキラキラしてて、なんか微笑ましくなる。
ホッコリしてたら、龍太郎が天ぷらを揚げ終わって持ってきてくれた!
「熱いから気を付けろよ」
「ありがと、龍太郎」
熱々の出来たての天ぷらに、さらに食欲がそそられる!
サツマイモにレンコン、ナスとエビ、あとは卵丸ごとの天ぷらもある!
たしか卵の天ぷらって、冷凍庫に入れて凍らせた状態で揚げるんだっけ?
それを揚げれるんだから、やっぱり龍太郎は料理上手だなぁ。
「つゆ、追加するか?」
「あ、ありがと!」
ヤカンに入れてあったおつゆを追加してもらって、それにエビの天ぷらを浸けて一口。
サクッ!
揚げたてだから良い音してる♪
でも、
「はふはふっ」
出来たてはやっぱり熱い!
「エビは逃げたりしねぇよ」
「だって、せっかくの出来たてだもん!
出来たての美味しさがあるんだよ!」
「ったくw」
悪態っぽいけど、龍太郎の顔を見たら少し口元が上がってた。
嬉しいクセにw
龍太郎の足元でご飯を待ってたグラピーも、特製の手作りパウチでガツガツ食べてる。
そしてメイちゃんは、卵の天ぷらをお箸で掴んでジッと見てた。
「コレは、卵の天ぷらだよ」
「たまご…?」
「そ、この黄色い錦糸卵を作る時の元になる食べ物だよ」
「……………」
錦糸卵と卵の天ぷらを交互に見てるメイちゃん。
マジマジと見つつ、素麺のおつゆを浸けて一口齧った。
「!」
サクッとした軽い歯触りと、卵の白身のプリっとした食感。そしておつゆをの旨味が口の中で広がって、あむちゃんはもう一口齧る。
「!!」
今度は白身の中から黄身が、トロっと口の中で広がる。
「え……?」
メイちゃんの眼から涙が流れた。
「え、あ、大丈夫!?」
突然泣き出して、もしかして口の中を火傷したのかな?って思ったけど、メイちゃんは泣いている事に気付いていないのか、卵の天ぷらをもう一度おつゆに浸して食べた……。
無表情なのに、涙を流しながら、ゆっくり噛んで飲み込むメイちゃん。
私達はその光景を、ただ黙って見いているしか出来なかった。
=====================================
そして数時間後、歯磨きをしてから、メイちゃんは私の部屋で寝ることになった。
2人で寝静まった頃、リビングでは龍太郎、朱里さん、セツさんの3人が集まってた。
「なるほど、だから妖魔がここにいると」
「ああ」
「で、間近で観察してどうだったんだ?」
セツさんはクラブから帰ってきて、すぐにメイちゃんの気配を感じ取って、大型拳銃を抜いて入って来た所を龍太郎と遭遇。
色々と事情を話して情報を擦り合わせて、とりあえず落ち着いていた。
「どうもなぁ、ただの妖魔じゃないってことだけはわかったんだが…」
「だが?」
「感情が読めないんだ。ご飯を食べてる時、無表情だったけど、眼だけは輝かせてたんだが、突然泣き出したんだ」
「泣き出した?」
「なんで泣き出したのかはサッパリで、食べ終わってたら泣き止んでた。情緒不安定かとも思ったんだが、佳鈴とのやり取りとか見てても、コミュニケーションはしっかり取れてた」
龍太郎の話を聞いて、セツさんは腕を組んで悩み始めた。
コミュニケーションを取れる妖魔は基本、多くの人間を殺して貪ってきた危険な存在。
けど、メイちゃんは私達に牙という牙を向けていない。
攻撃性を隠しているのか?とも思っていたけど、グラピーが威嚇も警戒もしなかったという点から、悪意というものが無い可能性が出てくる。
悪意の無い妖魔なんて、みんな聞いたことなんか無い。
けど………
「ねぇ」
ここで朱里さんが声を上げた。
「どうした?」
「私も、あの妖魔を見てたんだけど……」
そこまで言うと、朱里さんは少し間を置いた。
龍太郎もセツさんも、朱里さんが言い淀んだ事に首を傾げた。
そして、意を決した様な真剣な表情で、朱里さんは口を開いた。
「あの子、四魂を宿してる」
「っ!?」
龍太郎が驚愕して、眼を紅く光らせながら、見開いて朱里さんに詰め寄った!
「おい、ふざけんなよ!?
そんな事あるはずが……」
「私が見たのよ、間違いないわ」
朱里さんは、龍太郎の紅い眼から視線を逸らさず、彼の眼を合わせ続けた。
互いに少しの間、眼を合わせ続けて、龍太郎が舌打ちをしながらイスに座る。
「朱里、どういう意味なんだ?」
様子を見守ってたセツさんが、朱里さんに問い掛ける。
私が見たと言い切っている所から、朱里さんは何らかの特別な存在だとセツさんは見ていた。
そして、その考えは正しかった。
「私はね、九十九鬼って呼ばれる存在なの」
「九十九鬼? 九十九って、付喪神とかじゃないのか?」
「同じ意味よ。私はね、ある強力な法力を扱う人間が使ってた法具なのよ」
日本で、古くから物は100年使うと霊を宿し、"付喪神"になると云われている。
その起源は、14世紀から15世紀頃の室町時代の『付喪神絵巻』。
煤払いで捨てられた古道具たちが怒り、妖怪となって人間に復讐し、最終的には仏門に入って成仏する様子が描かれている。
付喪の語源については、老女の白髪を指す「つくも髪」を「九十九神」に掛けたものとされている。
これは、室町時代に付喪神絵巻の作者、土佐光信が、ある僧侶の法力を目の当たりにして、それをそのまま書き記したものだった。
その僧侶の名前は、"尊意"。
尊意には、陰陽師顔負けの強烈な呪術・法力エピソードが豊富にある事で、マニアの間では有名な人だ。
そのなかで最も有名なのは、日本三大怨霊の一人である"菅原道真"公を鎮めて、勉学の神様として神格化させた事だと思う。
「付喪神とかの一部の妖怪はね、人間と同じ"四魂"を宿して生まれるのよ」
「四魂?」
「そ、簡単に言ってしまえば、妖怪が霊魂を得て、肉体を現世に受肉することが出来るのよ」
四魂とは、神道における人間と神様の心の性質とされてて、それぞれ荒魂、和魂、幸魂、奇魂と呼ばれている。
荒魂は、勇気や行動力、バイタリティの源。
和魂は、平和や調和、他者との協調性。
幸魂は、深い愛情や育成、献身の心。
奇魂は、冷静な分析力や知性、そして奇跡を呼び起こす力を指す。
そしてその4つの性質を束ねる中心を"直霊"と言う。
「これらの四魂の強さによって、人間は性質や個性が出るのよ」
荒魂と和魂が強ければ、会社を起業してリーダーシップを発揮したりする強い人間としての性質が出たりする。
でも逆に、幸魂と奇魂の性質が弱ければ、勢いだけの、戦略やリスク管理が疎かになりがちで、仲間を大切にするあまり、「切り捨てるべき損害」や「無能な部下」を切れなくなったりする欠点も出てくる。
それは妖怪にもある。
長年九十九鬼として生きてきて、陰陽術を身に着けた朱里さんだからこそ分かるものだった。
「あの妖魔が四魂を宿す事が出来る方法があるとすれば、おそらく人間の手が加わってるわ」
「つまり、何が言いたいんだ?」
セツさんは、朱里さんの言いたい事を分かった上で、あえて結論を聞いてきた。
自然発生した妖魔では、四魂を宿す事は出来ない。
そして朱里さんは、その結論を言った。
「あの妖魔は、人工的に作られた可能性が高い」
他にも色々、四魂については他の国の伝説や伝承を調べていったら、見事に類似しているものが結構あってビックリしてます(゜o゜;
では、今回は以上です∠(`・ω・´)




