表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮管理人のゆま  作者: 応龍
第二章 管理人業務はじめました。
27/28

焼いちゃくれねえか?

 ハンバーガー用のパンは余っているのにお肉が品切れしそうだったので、テオに食材の買い足しを頼み、私は新メニューの下準備にとりかかる。

 先ずはタルタルソースを作る。それと乾いたパンを崩して三個ほどグズグズに崩す。

 これはパン粉の代わりにして魚のフライに使うのだ。

 私が露店の敷地の奥のほうで調理の準備に勤しんでいると、道の反対側に露店を構える酒場宿のオヤジさんが話しかけてきた。



「嬢ちゃん。マルタたちから聞いたんだが、あの肉は魔物の肉なんだって?」

「ええ、そうですよー。今回、私が持ってきたお肉は15日間熟成させたものです」

「そうか……残念だが、うちじゃあ真似出来そうもねえな」


 ハンバーガーの肉の熟成法をマルタくんたちから聞いたのか。

 私には『この街に一日三食の習慣を普及させる』目的があるから、その為にもオヤジさんには是非とも真似して頂きたいのだけれど。


「真似してもいいんですよ?うちは特許使用料なんて請求しませんし」

「トッキョ?なんだかよく判らねえが、うちには氷室はねえんだよ。“水が氷になる温度の部屋”で長期熟成なんて無理なんだ」


 実際は肉を凍らせてしまっては熟成は進まない。凍らないギリギリの状態を維持して保存することが必要なんだけれど、先ほどマルタくんに説明した話だけでは勘違いされても仕方ないか。

 私は室内を0度から3度の間に保つこと、高い湿度も維持すること、雑菌が繁殖しないように肉の表面を清潔に保つことなどをオヤジさんに説明してみた。


「何となくは判ったが……『レイド』や『サンド』ってのは何の事だ?温度や湿気なんて、目に見えないものだから数字じゃ表せないだろ?」

「えっ!?」


 素朴な疑問を返されて、素っ頓狂な返事をしてしまった。

 アルクさんの魔法講座の中では、摂氏に対応する温度の単位が存在していた。湿度にしても同様だ。だからオヤジさんも知っていることを前提で話していたのだけれど、どうも知らなかったらしい。

 この世界における現代人は『水が凍る温度』や『お湯が湧く温度』『鉄が溶ける温度』など、大雑把な表現しかないらしい。その中間の温度は、全て職人のカンや経験に頼るとのこと。

 それだと細かい微調整なんて出来ないのでは?と思ったけれど、義務教育もないし、ましてや温度計すら普及していない世界だから、知らないのも仕方ないか。



「どの道、夏場じゃ地下室だって、2週間以上も肉を置いといたら腐っちまうよ。冬なら凍らないように火を焚いて温度調節することは出来るが、涼しくする調整なんて魔法でも使わないと出来ねえしな」

「魔法ですか……」


 『一日三食を普及させる』ためには、街中で魔物の肉を加工できる施設は必須だと私は考えている。

 この市場での売買を見る限り、近隣の村人が持ち寄って販売している食材の量だけでは、街の人間が一日二回食べるだけの分しか供給できていないのだ。

 だから三食分の需要を満たすには、村々の生産量を増やす事が必須だが、田畑の増設は一朝一夕には進まないだろう。

 まずは手っ取り早く、タンパク質の供給源を新規開拓させたい。

 だからオヤジさんの宿だけではなく、何れは多くの人が魔物の肉を加工できる環境を街に作りたい、それなのに最初の一歩で躓いては困るのだ。

 

「それなら地下室に魔法陣を設置して、温度調節しませんか?」 


 私はオヤジさんに提案してみる。

 温度を一定に保つ魔法陣を床に仕込めば、この世界でも日本にあったような熟成庫の製作は可能だ。その為の魔法陣の設置は、私なら半日もあれば十分だ。

 魔法の技術を他人に教えないようにアルクさんから言われているが、魔法陣を態と難解なものに仕上げれば、他人に解析される心配もないだろう。


「あはは。そんな便利なもんが簡単に作れるなら、誰も苦労しねえよ」

「私で良ければ作りますよ、それも割と短期間で」

「出来るのか!?それなら作ってもらえねえか?もちろんタダとは言わねえ」


 いいですよ。もちろん肉の表面を殺菌する機能や、室内の空気循環機能も付与しましょう。

 魔物の肉から漏れ出す魔素を魔力に変換し、力の源泉にして駆動するよう魔法陣を組み立てれば、あとは室内に魔物の肉を吊るすだけで、半自動的に低温熟成する環境を維持してくれる熟成庫が出来上がる。

 しかしオヤジさんの地下室が隙間だらけで、冷気が外へ漏れ出すようなら地下室の密閉性を高めてもらわないといけない。

 冷気が駄々漏れの状態では、魔物の肉から漏れる魔素だけでは魔力不足になるだろう。

 かと言って冷気が外に漏れないような術式を組み込むと、その為に相当な魔力が必要となって、やっぱり魔力不足に陥ってしまう。

 密閉性の問題は、建築技術で何とかしてもらおう。


「つまり魔法によって冷たくなった空気が、外に漏れにくくすればいいんだな?それだけなら二日もあれば出来るぜ」

「じゃあ、その工事が終わったら教えて下さい。魔法陣を作りに伺いますよ」


 私の快い返事にオヤジさんはホクホク顔だ。

 ウィン=ウィンの関係なので、私も思わず微笑んだ。


「なんだか済まねえな。料理勝負に勝たせてもらった上に、そんなことまで頼んじまって」


 ん?オヤジさん、いま聞き捨てならないことを仰いましたね!?

 もう勝ったつもりでいるのか、つかやっぱりオヤジさんは勝負してるつもりだったのか。


「いやいや、決着は付いていませんけど?」

「しかし、お嬢ちゃんの所はもう肉が品切れだろ?パンだけ売っても、儲けにはならねーしな」

「いま、テオが新しい食材を買いに行っています。勝負はこれからですよ!」

「嬢ちゃん、意外と負けん気がつえーのな……」


 そんな会話の直後、テオが元気よく戻ってきた。


「ただいま、ユマリア。魚を買ってきたぞー!」

「あ、テオ。おかえりなさ……でか!」

「でけえ!なんだその魚は?!これも魔物か!」

「いや、市場で売っていたものだし、普通の魚だと思う」


 小学校を卒業したばかりのような身長のテオが、自分よりも大きな魚を肩に担いでいる。魚はまだ生きているのか、時折ピチピチと身体を動かしていた。

 地球の鮭によく似ているけれど、大きさが3倍はある。

 日本の川では夏場に鮭は捕れなかったはずだし、鮭に似て非なるものなのかな?まあ解体してみれば、その違いも判るだろう。

 魚に顔を寄せてオヤジさんが『鮭に似てるが、時期が違う。コイツ絶対魔物だろう』と呟いているけれど、魚からは魔素を感じないから魔物じゃないと思う。

 しかし、この世界でも鮭って居るんだな。


「でも随分と大きな魚ね?」

「うむ。親切なご老人に出会ってな。“うちのお薦めを持って行きな”と言われたので、言われるがままに買ってきた」


 それは親切とは違うんじゃないだろうか?と思ったが、テオも嬉しそうにしてるし、取り敢えずは微笑み返しておこう。

 それよりも今は魚だ。私にとっては未知の食材なので、川魚特有の臭みはあるのか?小骨は多いのか?など、調理する前に色々と確認をしたい。

 そう思ってバラしてみると、魚の身に驚くほど脂が乗っている事に気づいた。

 これは……日本で一度だけ見たことがある食材、時鮭(ときしらず)だ!


 時鮭(ときしらず)とは、卵巣も精巣もない成長途中の状態で、子どもを作るために時期はずれの初夏に川へと登ろうとする間抜けな鮭のことだ。

 そして、まだ成熟しきっていないために身に脂と栄養素がたくさん詰まっている、千匹に一匹の割合でしか捕れない幻の食材でもある。


 勿論、この魚が地球の時鮭(ときしらず)と同一とは思わない。大きさも違うし。

 そもそも地球の時鮭(ときしらず)は沿岸で捕れるものだ、川まで辿り着いて、そこで捕まった話は聞いたことがない。

 けれど、この魚の面構えと皮の輝り、脂のノリ具合を見れば、味の方も時鮭(ときしらず)に近いものだと考えていいだろう。

 この食材を使えば、美味しいフライが出来るはず。脂が多めだからソースが負けてしまわないように塩気や酸味を少し足したほうがいいな、ピクルスを多めに変更しよう。

 伝説の食材を調理できる機会に恵まれて、思わずテンションが上がってきた。


「テオ」

「ん?どうした?」

「でかした!」

「ふふ。そうだろう」


「テオは無い胸を思い切り張って答える。

 あ、無い胸は後で揉んで育ててあげるから、今は鱗を剥いで頂戴ね?

 小骨も綺麗に取るわよ!」

「も……揉むとか言うな!胸だってちゃんとあるわ!ほれ!」


 真っ赤になって怒るテオは可愛いな。

 商売中でなかったら育ててしまうところだった。


「所でお嬢ちゃん、こいつを焼いてパンに挟む気か?」

「焼くんじゃなくてフライにします」

「なら中骨の部分は使わねえのか?身のついた骨は塩焼きにすると旨えんだよ」


 オヤジさんは舌なめずりするようにして、捌いた後の骨を見つめる。

 知ってますよ、冷酒のアテに最高です。でも商売敵には焼いてあげません。 後でテオと一緒に焼いて食べようね。

 私がにこやかに言うと、オヤジさんがガックリ肩を落とした。

 オヤジさんを無視して、フライの準備を始める。

 さあハンバーガー屋改め、フィッシュバーガー屋の開始ですよ!




 魚を揚げる時のパチパチと油の弾ける音に釣られて、お客さんが次第に集まりだした。

 でも先ずは私たちとおやじさんで試食をしてみる。味の微調整が必要かもしれないしね。


「うん、美味いな!衣がサクサクしている」

「臭みもねえし、脂が乗ってて旨い……。何よりソースとの相性が抜群だ」


 テオとオヤジさんからお褒めの言葉を頂いた。これなら行けそうだな。

 もう勝ったも同然だし、儲かったも同然だ。


「なあ、嬢ちゃん。もう俺の負けでいいから、骨を焼いちゃくれねえか?」


 オヤジさん……そんなに食べたかったの……?

 まあ、焼かないんですけどね!


 フィッシュバーガーは瞬く間に売り切れた。味の方も好評だったし、幻の食材に感謝だ。

 パンも捌き切れたし、残った身と骨は魔法で保冷してアルクさんのおみやげにしよう。

 露店の後片付けを終えた後、私たちは項垂れるオヤジさんを捨て置いて、市場を後にした。



ここまでずっと、行き当たりばったりで書いているのですが、プロット(?)やら構成やらを考えてみたほうがいいのかな?と思いました。

まずはプロットの意味をググるところから始めようと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ