表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮管理人のゆま  作者: 応龍
第一章 プロローグは、一章が終わるまでがプロローグです。
11/28

これからよろしくね

 一人一人は格好いいのに、合体すると残念になる。

 そんな二人が、私の目の前で、全く同時に(いなな)いた。


 二人で嘶いちゃったら、人馬一体じゃなくて、馬二頭な気がする。

 片方が馬なら、もう片方は人間役をやって欲しい。


 この二人は<奈落の迷宮(アビス=ラビス)>に搭載されている人工知能によって、『守護者?』と分類されている人たちだ。

 ちなみに私は『管理人』、アルクさんは『創造主』、ドライクたちは『守護者』だ。

 疑問符が付いている辺りに、<奈落の迷宮>が二人をどう扱うべきなのか、困惑しているのが見て取れる。





「えーと。ケンタウロスのバッシュさんと…馬頭族のガッシュさんですね?」


「「左様。偉大なる<魔導の神(カムイソルナ)>が住まう迷宮の、守護者となるべく馳せ参じました!」」


 同じセリフを、必ず二人で同時に言うのは何でなの?キャラ付けなの?

 そんな二人をアルクさんは、胡散臭そうな顔で眺めている。

 明らかに『こいつらには守護者役は任せたくない』と思ってる顔だ。


 まあ私の目にも、彼らは色物にしか見えないので、その気持は解らないでもない。

 しかし実力試験と、面接試験の内容いかんによっては、ちゃんと採用しますよ?

 ほらほら、アルクさん。そんな嫌な顔をしないの。




「私はユマリア=カムイソルナと申します。我らが主、アルク=カムイソルナから、この迷宮の管理人を、仰せ付かっています」


「「おお、これはご丁寧に」」


 二人は私とアルクさんへ、深々とお辞儀をし、改めて自己紹介してくる。

 そして何かに気付いたように、私に問いかけてくる


「「ユマリア…カムイソルナ…?もしかして貴女は、アルク様の奥方で

「違います」


「「しかし今、アルク様と同じ、“カムイソルナ”と

「違います」


 アルクさんの嫁か?と聞かれかけたので、即座に否定する。

 全く惚れていないし!むしろ大きな子供を持った気分だし!

 私としては、アルクさんとは歳が離れているけど、悪友的な友人のつもりである。




「…私はアルクに作られたホムンクルスです。まあ、中身は異世界からの、召喚者なんですけど」


「「なんと!召喚者とは! さながら伝説の勇者のようですな!」」


 あ、やっぱり勇者召喚あるんだ…。

 異世界への召喚魔法が使えるのって、アルクさんだけかと思ってた。



「ところで貴方がたの事ですが……ここまで辿り着いたからといって、守護者としての大役を、安易にお任せするわけには参りません。ここで実力を示していただきます」


「「ふむ。尤もな話で有りますな」」


「ご理解頂けたようなので、ひとつ、私と手合わせをお願いしますね」


「「いや、申し訳ありませんが、それはご遠慮させて頂きますぞ!」」


 なんでだよ!<魔人の吐息(デモンサイン)>吹きかけるよ?

 見た目はともあれ、二人とも話の通じる、まともな人たちだと思ってたのに!


「「貴女はレディです。我らは女性を傷つけることなど、出来ませぬ故」」


 なるほど、そういうことか。

 確かに私は、見た目だけは、10代半ばの女の子だ。

 二人がそう考えるのも、無理はない。

 でもね、この迷宮を攻略しに来てる人間たちの中には、女性も居るんです。

 女性とも、戦ってくれなきゃ、困るんですよ。



「私はアルク謹製のホムンクルスですよ? 大丈夫です。ちゃんと手加減してあげますから」


 少し煽ってみた。平気だから、早くかかって来なさいな。

 すると二人は小声で何やら相談しあった後に、私と少し距離を取る。

 そしてケンタウロスのバッシュさんが、こちらを向いてランスを構え出した。

 よかった。やる気になってくれたようだ。


「「わかりました。では、このバッシュめが、お相手いたしますぞ!」」


 そう言った後に、バッシュさんの背中から、ガッシュさんが降りた。

 一対一で戦うつもりか、騎士道精神なのかな。


「いや……二人で掛かって来て欲しいんですけど?」


「「いえ!そんな事は、出来ません」」


「そうですか」


 こちらとしては、『人馬一体』の実力が知りたいんだから、二人揃って来て欲しいんだけどな。

 まあ一本目は軽く、こちらの力量を見せて、二本目は二人で来るよう説得するか。





「では掛かって来て下さい」


「「いざ、参る!」」


 突進してくるバッシュさんだけでなく、何故か遠くで腕組しているガッシュさんまで、同じセリフを叫ぶ。

 なんでやねんと心でツッコミを入れつつ、私は<知覚強化><思考加速><身体強化>を起動させ、魔法の障壁の準備をする。


 バッシュさんは、最初はゆったりとした駆け足で進み、やがて全速力で走る襲歩となって、加速度を増して、ランスを構え突撃してくる。


 この攻撃を、魔法の障壁で受け止めようか……それとも躱そうか?

 それは、ランスの穂先が私の間合いに入る刹那に決めよう。

 その為に全神経を集中し、相手の動きを五感で捉え、“後の先”の攻撃を狙う。


 本来なら、まだ距離のある内に、攻撃魔法で攻めても良かった。

 でもバッシュさんは戦うと決めた時に、私から距離をとったのが気にかかった。


 距離をとったのは勿論、ランスチャージをするためもあるだろう。

 しかし、こちらの魔法を、何らかの手段で無効化し、有利に戦う。

 そのための手段があるのでは?と私は考えたからだ。


 だからこちらも魔法では攻撃せずに、<魔法の障壁(フォースフィールド)>を見せ札としてチラつかせ、接近戦で攻めてみることにした。




「「ぬおおおおお!ランスチャージ!!」」


 『だからッ!何でッ!二人で叫ぶのんッ!』心の叫びと同時並行して、私は<魔法の障壁(フォースフィールド)>を起動する。

 真っ直ぐに私の体を狙っていた長槍(ランス)の穂先は、球体状の障壁に阻まれて、その向きを変える。


 このままだと突進してきたバッシュさんは、速度を殺しきれず、障壁へ激突するだろう。

 そう考えた瞬間、バッシュさんは盾を構え、前足に力を込め、更に加速してきた。


「「はあああああっ!」」


 これは盾による強打(シールドバッシュ)!バッシュさんだけに、シールドバッシュなのね?!

 バッシュさんの盾が、紫色に怪しく光る。あれは対魔法用の盾なのだろう。

 私は急いで魔法障壁を解除して、身を屈め、摺足の要領で突撃してくるバッシュさんの下へと滑りこむ。

 そして徐ろに立ち上がり、バッシュさんの体を、持ち上げるようにして後方へと投げ飛ばした。


「「なんと!?」」


 二人は私の虚を突く行動に、対応出来ない。

 もとよりガッシュさんとは、50メートルくらい離れているしね。

 速度のついたバッシュさんの体が、放物線を描いて壁に衝突する。


「「ぐはぁ!」」


 バッシュさんは障壁に直撃し、そのまま気絶した。あと長槍(ランス)は折れた。


「これで“二人で掛かって来て欲しい”という、私の気持ちは伝わりましたね?では、二回戦と行きましょうか」


「な、何という攻撃……流石は<魔導の神(カムイソルナ)>のホムンクルス。この先に居たゴーレムにすら、決して劣らぬ強者(つわもの)だ」


 気絶したままのバッシュさんを見つめながら、ガッシュさんが息を呑む。

 何だ、一人でも喋れるのかよ……。

 しかし彼らにとって、あの木人は強敵なのか。ていうか、あれと戦ったの?

 ゴブリンやオークは、みんなゴーレムを避けて進んで、もっと下層に住んでるよ?

 あのゴーレムは、動けないからね。





「では次は、二人で力を合わせた、本当の実力を見せて下さい」


「いや、必要なかろう。やっぱり駄目だな、弱すぎる。守護者の役は任せられん」


 今まで静観していた、アルクさんが、判決を下す。

 確かに、下層にいる他の守護者と比べると、別格の弱さだ。

 二人で戦った時の強さも、大体想像が出来る。でも、ね。


「んー、でも。取り敢えずは仮採用して、少し様子をみましょう」


 アルクさんは弱いと言うが、弱いなら鍛え治せば良いと思う。

 まずはお試し期間を設けよう。それで駄目なら不採用にすればいい。

 アルクさんへの敬意と、真っ当な騎士道精神を持つ彼らは、なかなか得難い逸材だ。


 もっと強い相手をスカウトして来ても、そいつが根性悪だったら、いつか寝首をかかれかねない。

 それならいっそ、まず彼らを鍛えてみよう。そう思った。



 私はバッシュさんが目覚めるのを待ってから、最終結果を発表する。



「アルクさん、人事権は私にあるんですよね?」

「う、うむ……だが……」


 アルクさんは不満気だ。でも、今から代わりを探すにしても、時間がかかる。

 その間だけでも、彼らに任せたほうがいいと思うのだ。


「では決定。仮採用ですが、お二人とも、第一階層をよろしくお願いしますね」

「「あ、有難き幸せ!」」


「ただし」

「「はい?」」


「暫くの間はここを離れ、下層のゴーレムと戦っていて下さい。全部で四体います」

「「な、何故ですか?」」


 修練のためですよ。

 せめて、あの木人たちよりは、強くなってもらわないと困る。

 目指すは『木人なんて、雑魚ですよ雑魚(笑)』と言える強さになること。


「申し訳ないけれど、貴方たちは他の守護者と比べて、格段に弱いの。だから今より強くなってもらいます。その為の鍛錬の一環だと思って下さい」


「「畏まりました。アルク様、ユマリア殿。よろしくお願い致します」」


 納得してくれたようで、良かった。これからよろしくね。

 ランスが折れちゃったから、後で何とかしてあげないと可愛そうだな。

 その前に<奈落の迷宮>への登録だ。



「おーい、<奈落の迷宮(アビちゃん)>。聞こえてる?彼らの情報の更新をお願い。コードーネームは…そうね、<人馬一体(メズケンタウロス)>でいいかしら?」


「待て待て待て!“馬頭ケンタウロス”は無いだろう。君は意外とセンスが無いな、もっと格好良いのを付けてやりなさい」


 アルクさんに駄目出しされた。なんだよ、もう!

 貴方、この二人に興味は全く無いでしょうに、部下の名前には拘りがあるのね。


「じゃあ、何かいいアイデア下さいよ」

「……そうだな。では<合体騎士(キマイラナイト)>というのは、どうだろう?」


 速攻で対案が出た。もしかしてアルクさん、ずっと考えていたのかな…。

 <魔導の神>による直々の命名に、バガッシュコンビは満足気だ。


「じゃあそれで。<奈落の迷宮(アビちゃん)>、今の会話は聞こえてた? コードネームは<合体騎士(キマイラナイト)>。分類は『守護者見習い』よ」


 ──────イエス、マム。


 <奈落の迷宮(アビス=ラビス)>から、了承の声が届く。

 これで彼ら二人も、正式に、ここの住人となった。

 これからよろしくね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ