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迷宮管理人のゆま  作者: 応龍
第一章 プロローグは、一章が終わるまでがプロローグです。
10/28

やっぱり本当だったんだ

 異世界生活、二日目の夜。

 食事を終えて魔法の講義を受けた後、私は習った魔法で体を洗い、一息ついた。

 頭にタオルを巻いてベッドに横たわり、迷宮の住人のことを、色々と考える。


 ドライクは二千年前にアルクと戦い、敗れた。

 それ以来、ずっと一人であの部屋にいたそうだ。

 体育館が三個くらい入りそうなあの部屋に、たった一人きりで、寂しくはなかったのだろうか?

 ドライクの部屋は、何もない部屋だった。

 食事も取ってないようだった。

 彼もアルクのように、魔力やら魔法やらで、何とかしているんだろう。


 ドライクの食生活も、出来ればなんとかしてあげたいが、彼が食べるであろう量を想像して諦めた。

 下手に食への意欲を掻き立てると、藪蛇になりそうだ。

 彼の事は、追々考えていこう。



 テオドーラの所も、ドライクと似たようなものだった。

 彼女のいた部屋は、玉座みたいな椅子が一つと箪笥、あとは武具を立てかける置き場以外は、他に何もない。照明器具すらない部屋だった。



 その一方で、伯爵の所は施設が充実していた。

 守護者の部屋は、上手にパーティションで切られていて、部屋の両端に食堂や会議室、部下の待機所などがあった。

 その上で部屋の中央は『ボスがいる部屋』としての風格も感じられるよう、デザインされていた。

 他にも、階層内にある別の部屋を、食料庫や武器庫として使っていた。

 それと調理場もあったな。あれらは多分、ヘルメスさんの功績だろう。

 他の階層も、伯爵の所くらい充実していれば、良いんだけれどな。



 テオドーラは、今日の夜食を食べて、食事に意義を見出してくれただろうか。

 もし『食事をする』という行為に目覚めてくれたのなら、伯爵のように、色々と物入りになるだろう。

 そうなれば私は友人として、管理人として、彼女の要求に応えてあげたい。


 しかしテーブルや食器は、手作りするというわけにも行くまい。

 どうしたって迷宮の外へ出て、調達してくる必要がある。

 その場合は荷物の搬送をどうしようか。

 迷宮の一階まで届けてもらえさえすれば、あとは何とかなる。

 でも、まさか荷運びしてくれる人に『迷宮まで運んで下さい』とは言えないし、どうしようか。


 そもそもの話、この迷宮から一番近い街は、どの辺りにあるんだろう?

 アルクさんは三千年、ドライクは二千年、テオドーラは千五百年、この迷宮に引き篭もってる。

 伯爵に至っては、千年前に<魔界>からこの<奈落の迷宮>へ呼び出された日から、迷宮の外へは一歩も出たことがない。

 彼らは引き篭もりの四天王だ。

 そんな連中から、外の情報を聞いたとしても、たぶん役に立たないと思う。


 やはり明日以降に会う、第七階層とその上にいる連中に、聞くしかないな。

 今日は早めに寝てしまおう。

 出来れば明日の内に、迷宮外へ出て、情報収集したい。

 

「他にも気になることはあるけど…それは明日になってみれば判るもんね!」


 これが変なフラグになりませんように、私は祈りつつ、シーツを被って寝た。













「フラグには勝てなかったよ…」


「何を言っているんだ、君は?」


「何でもありません。それより、これはどういうことですか?」


「ん?何の事だ?」


 夜が明けてから、私とアルクさんは第七階層から上へと順に、階層守護者の元を訪れた。


 第七階層の守護者、<水棲妖魔(ヴォジャノーイ)>ゲルグスさんは良かった。

 半魚人みたいな風体だけど、割と温和なお爺さんだった、でもちょっと魚臭い。

 『ここは泥臭いやつばかりで、食用になる魚は捕れんのじゃ』と、申し訳無さそうに謝られた。

 むしろ『迷宮で魚が食べたい』なんて、贅沢を言ってしまい、逆に申し訳ないです。

 でも部屋の一つを改装し、生け簀代わりにして泥抜きすれば、食用魚は何とかなりそうだ。

 淡水魚しか捕れないのは、この際、目を瞑る。

 この階層は、どの部屋もプールのようになっていたから、今度泳ぎに来よう。


 第六階層の守護者、<木精乙女(ドリュアス)>シルヴィオちゃんは、文句のつけようがない。

 シルヴィオちゃんは、のんびり屋さんな可愛い娘だ。緑の髪が美しい。

 彼女は野菜をたくさん育てているので『欲しい時はいつでもどうぞ~』と優しく言ってくれた。

 毒草でも雑草でも、植物ならば何でも育ててしまうのが、唯一の難点かな。

 おかげで第六階層は、階層全体がジャングルのようになっていて、探索するには、草刈りの鎌が必須となる。


 ゲルグスお爺ちゃんとも、シルヴィオちゃんとも、一応は勝負させてもらった。

 両者ともに地の利を活かした戦い方をされ、正直ちょっと苦戦した。

 守りに徹した戦い方をされると、かなり厄介で攻めづらかった。

 でも結局は力押しで、何とか勝利は掴んだ。



 まあ、その二人のことは良い。



「問題はこれです。第五から第二の階層です!どの階層も、守護者が居ないじゃないですか!」



 昨日の時点で、<奈落の迷宮>の情報リンクにより、知ってはいた。

 正確に言うなら、階層守護者は一応、居る。

 アルクさんが作ったのであろう、ちゃちな作りの木人ゴーレムが居る。

 <奈落の迷宮>によると、木人たちは『守護者(仮)』という分類だ。


 これら木人ゴーレムは、大きな丸太に手となる枝が付いただけの、単純な作りをしている。ちなみに足はなく、移動もできない固定式。正に安普請。こいつが機動戦士だったなら、安室さんが乗っても逝くのは必至だ。

 そして二階も三階も四階も五階も、全部同じ形の木人ゴーレムだ。量産機か!

 額の部分にギリシャ数字みたいな字で、ナンバリングしてあるのが余計に腹立たしい。

 

 そんな量産型ゴーレムの一つが、私の目の前で『やったるでー!』と、やる気満々で腕をグルグルと回してくる。

 あんた、戦いたいなら、まず私のトコまで歩いてきてみなさいよ。




「…伯爵やシルヴィオちゃんのように、誰か召喚すればいいじゃないですか」

「しかし似たようなのを呼んでも、バランスが悪いとは思わんかね?」

「木人ゴーレム四連星のほうが、バランス悪いと思います!」


「しかし、そもそも人間たちは第一階層すら踏破していない。配置してもあまり意味が無いんだよ」


 まあ、それはそうなんですよね…。

 この迷宮に、数十年前から人間が入り込んでいるのは話を聞いた。

 でも一番深くに潜り込んで来てる人たちですら、72階辺りをウロウロしている。

 第一階層の守護者の部屋に到達するのは、もう少し先の事になりそうだ。

 第二階層以降に至っては、何十年後何百年後になるのか、想像もつかない。


 この状況で第二階層以降の守護者の人材を集めたら、どこぞの伯爵のように、『暇だ、戦わせろ』と言い出す人が出かねない。

 それなら今のところは木人で我慢するか…どの階層も、守護者の部屋以外には、ゴブリンやオークたちが普通に住み着いているしね。



「では第二から第五の守護者の人選は任せる。頼んだぞ、ユマリア」


 そう言いつつ私の肩を、ポンと叩くアルクさん。

 そうか、これも管理人の仕事か…。



「わかりました…」


「では、気分を変えて第一階層へと向かうとしよう」


「…はい」


 仕方ないから、そのうち機会を探して、モンスタースカウトの旅に出よう。

 その時は、出張費をしっかり頂きますよ?

 アルクに言質をしっかり取ってから、第一階層へと<転送>する。



「ちなみに第一階層の守護者は居るが、私が公認した訳ではない。いつの間にか棲みついていたんだ」


「はあ」


「アレが使える奴かどうか、これも君が決めて欲しい」


「えー…」



 空白の第二から第五と違い、第一階層には守護者は居る。

 それは昨日、<奈落の迷宮>とのリンクにより、情報を確認してる。

 しかし、二度見ならぬ二度確認して『これ何?受けでも狙ってるの?』と思った。



「うわー、やっぱり本当だったんだ…」



 私は<奈落の迷宮>からの情報に、間違いがないことを目視で確認した。

 そして、心持ち、ちょっと引いた。


 ここは第一階層の守護者の部屋。

 第二階層へと降りていく、階段がある方の扉の前だ。

 その場所へと、第一階層守護者が向こうの方から、蹄の音を立てて駆けて来る。



「「ぬおおおぉ!いらっしゃった!ついに主殿がいらっしゃったぞぉ!」」



 『駆けて』来たのは馬ではない。半人半馬と呼ばれる、ケンタウロスさんだ。

 そしてケンタウロスさんは、人(?)を乗せている。


 ケンタウロスさんは鎧を着こみ、ランスを持っていて、ちょっとかっこいい。

 彼の上に乗っている人(?)も、革鎧を来て蛮刀を持っている。かっこいい。

 この、『人(?)』と言うのは、獣人さんだ。馬面の人間さん。


 半人半馬の上に、馬面の人間が乗っている。

 そんなモノたちが、笑顔で私たちの元へと駆けて来る。

 この絵面と字面が、半端無くオカシイ。


 やがて二人(?)は私たちの目の前まで来て、誇らしげにこう言った。



「「お初にお目にかかります、主殿!我ら、人馬一体!バッシュとガッシュにて御座います!」」




 人馬一体…うーん…。

 貴方たち、どちらが馬で、どちらが人なのか、そこから説明してもらおうか?



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