↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【性的魅力1】の底辺陰キャ、美少女魔王の暗殺者になってクラスメイトを葬ることにした  作者: N


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

第47話 池麺



 そしてついに、王と池麺の処刑の日がやって来た。


 王城の前はすでに多くの国民で埋め尽くされ、罵声の嵐でこっちまで耳が痛くなる。ちなみに、以前会議に参加した各国の王、そして俺とシロは間近で見れる特等席で座っていた。あ、もちろん俺は仮面をつけている。


 なぜここまで怒っているのかは不思議ではあったが、確かに魔族は悪だと嘘をつかれていたのはそうだが、その魔族討伐に何人もの人間が兵士として徴兵され、家族を失うものも多かったようだ。


 わざわざ魔族に喧嘩を売る必要さえなかったのに、無駄に多くの命が消えたのだから、そりゃ当然だ。


 王家の家柄や、クズな人間が国のトップになるとろくなことにならんな。


 と、しばらくすれば、兵士にしっかりと手を後ろで拘束された池麵と王が歩きながら登場。王は未だに何かを叫びながら暴れようとしているが、反対に池麵はまるで死んだ魚の目をして何も抵抗せずに歩いている。


「チハル。一応、あの人はチハルのクラスメイトだったんですよね?本当に、後悔はないですか?」


 隣に座っているマオが、心配そうに聞いてくる。まあ、多少の罪悪感はある。俺の大切だったポチを寝取ったこと。そもそも以前から、完璧超人で恵まれていることにもイライラはしていた。


 ただ、俺は一応、あいつに真実を教えようとしたが、勇者で人間族を引っ張るリーダーにもかかわらず、自分の正義は揺らがないと一切聞こうとせず、人間族の言いなりとして真実を確かめもせずに魔族を滅ぼそうとした。


 俺たちはチャンスをやったはずだ。このままだと魔族は確実に滅んでいた。俺もあいつを恨んでいたことだし、別に悔いはない。


「問題ないです」

「……そう」


 この間にも、処刑の準備は着々と進む。どうやら、首を飛ばすギロチン刑のようだ。正直、自分でやるならまだしも、ああいう処刑を生で見るのはなぜか気が引ける。元々グロとか苦手だったからな……。


「それではこれより、国家間協定違反及び民への背信を犯した、国王と勇者の処刑を行う!」


 その瞬間、湧き上がる歓声。王、勇者への罵声。うつぶせにされた王は未だに抜け出そうと暴れている。隣で今、まさにうつぶせにされそうな池麵は周りを見る。


 自分への罵声。暴力的なまでの視線。そして、上にぶら下がるギロチンの刃。池麵はそれを見た瞬間に震えあがり、そして頭を抱えて「ああ、ああああ……」と呟いた後、兵士を押しのけて立ち上がり、叫び始める。


「い、嫌だ!!!嫌だあああ!僕はやってない、やってないんだあああ!」


 チッ。死という恐怖を目の前にして、生きたいという本能を呼び戻してしまったか。再び絶望させなきゃならないか。


 だが、エルーフは即座に池麵をあの時のように魔法で膝間づかせた。あとは、俺が直接池麵を絶望させる言葉をかけるだけ。再び処刑台へ登らせる。俺は池麵の元へ近づいて、囁いてやった。


「落ち着けよ池麵。ほら、よく周りを見ろ」

「は、は?」


 俺は池麵の髪を引っ張って無理矢理目の前の光景を眺めさせる。池麵は罵声を聞きながら、ただただ震えていた。俺は畳みかける。


「みんな言ってるだろ?死ねって。お前の正義は、誰も認めない。お前の信じた正義は……皆にとっての”悪”なんだよ。分かった?もう誰もお前を信頼してはくれない」

「だ、だれも……俺を……」

「そうだよ池麵。辛いだろ?このまま現実から逃げてもいいんだぜ?一瞬で、スパッと」

「あ、あああ……」


 俺はギロチンを指さす。池麵は何もしゃべらず、ただ、俺の指さすギロチンの刃を見つめていた。そして再び、目に宿っていた生を欲する希望の光は消え、大人しく兵に連れて行かれ、処刑台へと上って行った。


 再び、処刑台にうつぶせにされる池麵。短いようで、長い戦いだった。だが、やっとこの戦いは終わる。


 会場のボルテージが一気に上がっていく。そしてついに、ギロチンの刃を落とそうとした瞬間だった。


「待って!!!」


 池麵と王の目の前に突如、数人の人間が現れた。歓声でかき消されていたが、恐らく「待って」と言った。


 処刑人が手を挙げ一旦、刑を中止させる。歓声も次第に収まっていく。こいつらは、俺の方を見ていた。こいつらというのは、陽菜たちクラスメイトだ。


「待って、ねえ、クラスメイトでしょ?さすがに処刑はやりすぎじゃない?」

「そ、そうです。その、胡桃、池麵君が死ぬところ、見たくない、です……」


 陽菜と胡桃が俺に必死で抗議してくる。さらには、太田と我利も俺に訴えてくる。


「千温殿、どうか考え直してはくれないか」

「千温、こいつはただ王に従ってただけだ。それなら、池麵に従ってた俺たちも同罪じゃないか?確かにお前は池麵にこき使われて、ポチも奪われたのかもしれない。でも、俺に免じて許してやってくれないか。俺たちだって、王に勝手に召喚された被害者だろ」


 う~ん、なんで俺が頼まれてるのかよくわからないんだけど。


「その、なんで俺に言ってくるんですか?確かに俺はこいつに恨みはあるけど。でも、処刑するかどうかを決めるのは、国民と各国の王様たちだよ?」

「千温……」

「別に、エルーフ様に頼んでもいいけど……」

「ほ、本当か?」


 俺はうなずく。これは正直想定外だった。こいつらも平和な世界にいた現代人だ。いつも一緒だったクラスメイトが急に処刑されるなんて、そりゃ耐えられねえだろう。


 俺は自分の手で人を殺してきたからすっかり慣れてはいたけど。正直処刑の取りやめは気が引けるが……。やってやってもいい。だって、もう遅いでしょ?


 俺は池麵の生気を失った瞳を見つめる。


 もう、こいつの心はズタボロだ。こいつはギロチンの刃を見て、最初こそ怯えていたが、最後には自ら処刑台へ登った。処刑は免れても、自ら命を絶つだろう。どうなろうが、俺の勝ちなんだよバ~カ。


 俺はマオに、エルーフに処刑を取りやめてもらいたい、と頼んだ。マオは目を丸くしていたが、分かった、と頷いた。



 ------



 後日の話だ。


 結局は池麵の刑は取りやめにされた。マオがエルーフに頼んだ結果、普通に受け入れた。エルーフは池麵を見て、更生の余地がある、と見込んだようだった。国民からのブーイングはあったが、なんだかんだで諦めていた。


 とは言え、その後は王の処刑だけは行われたようだ。まあすべての元凶だしな。


 ただ、計算外だったのは、その後廃人と化した池麵は自ら自殺すると踏んでいたが、クラスメイト達にきっちり監視され、阻止されていること。


 というか、池麵は自らの剣で自分の首を刺そうとしたが、剣に弾かれて無理だったようだ。エルーフの話によれば、「勇者の加護によって、あいつは勇者を超える力でないと自らを傷つけることも傷つけられることもできぬ」とのことだ。


 勇者の加護は1年で消滅するようだ。ついでにエルーフに詳しく聞いたところ、元の地球へ戻る方法はないと言われていたが、実際はいつでも返還魔法によって戻せたようだ。


 恐らく、王は変える方法がないと言ったほうが、即帰られるリスクも省けて都合が良かったんだろう。


 はあ……なんか、最後の最期で、敗北感がやべえって。池麵は腐っても元クラス委員長で色々とみんなを助けてきた。それにイケメンで実際何でもできる。


 クラスメイトも、賢明に池麵の世話をし続けて、彼は少しずつ生きる希望を見出してきている。


 クソ、恵まれたやつらはとことん運にも恵まれてやがる。これがチー牛やおっさんならすぐに処刑されてたし、誰も助けてすらくれなかったのに。余計に腹が立ってきた。


 でも、もういいや。俺はもう、魔族という居場所ができた。もう、疲れた。もうクソルッキズムで苦しむ地球に戻ってストレスをためる必要もない。シロだって、ずっとここにいていいと言ってくれた。


 あとはもう、適当に、普通に生きるだけ。……だといいな




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。