第3話 性的魅力1
俺はステータスプレートを覗き込んだ。
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牛島 千温 17歳
・職業:暗殺者
・スキル:翻訳 隠密 隠蔽 防御貫通 投擲強化
・性的魅力:1
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……最後の一行、喧嘩売ってんのか?事実だけど。事実すぎて涙も出ないけど。
なんだよこれ。人それぞれの「特徴」がステータスになるのか? 俺に彼女ができない理由はこれか。神様、一回表出ろ。ボコボコにして泣いて謝らせてやる。
とりあえず、スキルを一つずつ確認する。「翻訳」は、たぶん全員持ってるんだろうな。この世界で日本語が通じること自体おかしいし。
「隠密」は……存在感を消したりできるんだろうか。「防御貫通」と「投擲強化」は、まあ字のままだろうな。
気になるのは「隠蔽」だ。これ、何だ?すると、騎士団長の岸が説明を始めた。
「スキルはその名を心の中で念じることで発動する。だが、ここではまだ使うな。まずはお前たちの職業を確認して回る。誰が『勇者』なのか、まだ検討もつかないからな」
なるほど、念じればいいのか。「隠蔽」……俺のこのキモい存在ごと世界から隠蔽してくれねえかな。そんなことを考えながら、試しに心の中で「隠蔽」と唱えてみた。
すると、プレートに刻まれた文字が、生き物みたいにフニャフニャと動き出した。
なんだこれ。……もしかして、書き換えられるのか?ちょっといいことを思いついた。周りを見渡すと、クラスメイトたちは自分のステータスに夢中で、こっちなんて誰も見ていない。
今のうちに、プレートの表示をこう念じて上書きしてやった。
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牛島 千温 17歳
・職業:ニート
・スキル:翻訳 自宅警備
・性的魅力:1
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「プッ……!」
あまりにハマりすぎてて思わず吹いちまった。近くにいた奴にゴミを見るような目で見られた。恥ずかし。
でも、これで「暗殺者」なんて物騒な職業を隠せる。俺はここでも役立たずの「ニート」として、のんびりサボってやるんだ。知らんけど。
岸は一人ずつ、プレートを見て回っている。そして、池麺の席の隣で足を止めた。
「ほう。あなたが『勇者』か」
「そ、そうらしいですね……」
池麺が恥ずかしそうに髪を掻いた。その瞬間、「おおおお!」と教室中に歓声が上がる。
「やっぱり池麺が勇者か!」
「さすが委員長!」
「マジでかっこいいな!」
……お前ら、順応早すぎだろ。別に羨ましいなんて思ってねえよ。マジでな。
もし俺が勇者だったら、「こんな覇気のない不細工を国民に晒すわけにはいかない」とか言われて、速攻で処刑される未来しか見えないし。
岸が職業を読み上げながら歩いているので、俺はこっそり周りの職業をメモしていった。
清楚は「聖女」。棒緑は「狂戦士」。半寒は「剣士」。モブ崎は「鑑識者」。魏屋琉は「格闘家」。
本ばっかり読んでる本田は「僧侶」。脳筋の肉男は「守護者」。うざいぶりっ子の振子は「盗賊」。
ああもう、登場人物が多すぎて頭が痛くなる。一応、後で役立つかもしれないから全員分メモるけどさ。
そして、ついに岸が俺のところに来た。プレートを見て、眉間にしわを寄せて呟く。
「……に、ニート?」
その一言で、部屋が静まり返った。次の瞬間、ドッと爆笑が巻き起こる。
「ニートって、何なんだそれは?」
困惑する岸に、腹を抱えて笑っている棒緑が叫んだ。
「あっははは! 騎士団長、ニートってのは『働かない奴』とか『自宅警備員』って意味っすよ! こいつ、異世界にまで来て無能確定だわ!」
「じ、じたくけいびいん……?」
岸が困り果てていると、棒緑が立ち上がって俺の手からプレートをひったくった。偽装がバレないか、心臓がバクバク鳴って止まらない。棒緑たちの4人組が、俺のプレートを囲んで覗き込む。
「マジでニートって書いてんじゃん! しかも性的魅力1……ギャハハ、お腹痛え!」
「うわ、マジでウケるんだけど!」
「……ふっ、君らしい職業だね。納得だよ」
魏屋琉がのけぞって笑い、半寒は前髪をいじりながらも吹き出している。俺、お笑いの才能だけは神がかってるかもしれないな。
「……は? そんなこと書いてなくね?」
でも、モブ崎だけは目を細めて、俺のプレートを不思議そうに見つめていた。
一瞬、時が止まった感覚。全身に緊張が走って、指先がガタガタ震え出す。だが、棒緑たちはその呟きを完全に無視した。
「あ? 書いてあるだろ、ほら。モブ崎、お前目がおかしくなったんじゃねえの?」
棒緑は飽きたように、プレートを俺に投げ返してきた。必死で両手でキャッチして、安堵のため息を漏らす。
……危ねえ。バカで助かった。でも、あのモブ崎は要注意だな。
ニートの意味を知った後の、岸のあの「あ、こいつゴミだわ」と言わんばかりの冷たい目は、地味に心に来たけど。まあいい。無能だと思われてる方が、都合がいいんだ。
全員の確認が終わり、岸が壇上に戻る。
「よし、これで全員だな。明日からは本格的な訓練を始める。いくらお前たちが勇者一行でも、基礎的な技術と体力は不可欠だ。戦場で簡単に死なれては困るからな。食事と部屋は保証する。人間族の勝利のために、貢献してもらおう」
だが断る。……心の中で中指を立ててやる。俺は文字通り「ニート」として、適当にだらだら過ごさせてもらうぜ。
「よし、明日からみんなで頑張ろうな!」
池麵の爽やかな掛け声に、クラス中が盛り上がる。まあ、いつものように適当に流して、適当に生きていけばいい。
……なんて、平和な毎日が始まると思ってたか?そんなわけないだろ。
ここにいる全員が、これが「地獄」の始まりだってことに、まだ気づいていなかったんだ。




