第四十二話 決戦へ向けて
新たにMウイルスに感染した三人は、自衛隊員たちのように血反吐を吐いてのたうち回ることはなかった。
なんでもミシェルが少しだけ改良したらしいが、臨床実験もしてもいないものをいきなり三人に使うのはやめてもらいたい。
やはりマッドと天才は紙一重なのか……。
ミシェルによれば、三人の身体にウイルスがなじむまでには数日かかるとのことだ。
やはり俺一人で行ったほうが早く終わるのでは。
しかし、そんな俺の考えを見透かしたのか、山口にたしなめられた。
「ひとりで行っても死ぬだけだ。美香を悲しませる気か?」
「だが、こうしている間も俺たちの子は、ずっと捕らえられたままだ」
「それはわかる。でも、もう一度だけ考えてほしい。美香がどんな思いであなたに子どものことを話したかを」
山口の言葉に、俺は返す言葉がなかった。
「すぐに小池隊長たちも来る。もう少し待つといい」
そう言って山口は行ってしまった。
俺は、山口に言われたことで頭がいっぱいだった。
自分が子供を産めなくなったから、自分が子供を殺してしまったから、だから他の女に子供を産んでもらう。
理由は、俺がずっと子供を欲しがっていたから。
美香が殺した? そんなわけない。違うだろ。
俺だ。俺が原因だ。美香が感染したのも、子どもを流産させてしまったのも、すべて俺のせいだ。
俺を守るために美香に無理をさせて、俺がなにも考えずに口にした言葉で美香を傷つけて。
なにをしているんだ、俺は。
また独りよがりな行動をするのか?
いい加減、成長しろ、山下恭平。
今はできることをやるんだ。
訓練はマキシーンや花乃ちゃん、美香がやってくれている。
なら俺のやるべきことはなんだ。俺にできることは?
「下調べ、か」
ひとりで突入する必要はない。
駅ビルに行っても無理をしなければいい。
危険そうなら撤退する。それを徹底し安全第一で動けばいい。
なら、まずは情報を集めるべきだ。
「吉岡か……」
俺と美香の子を、他の女の胎に入れた男。
あの男から駅ビルの情報を引き出す。
俺は、この男を目の前にしても冷静でいられるだろうか。
目の前の男からは焦燥のにおいが強く出ていた。
なにを焦っているのか。俺が来たことで殺されるとでも思ったか?
「おい、駅ビルの情報をよこせ」
言い方はこれであっているか。
怒りを抑えようと意識しすぎて頭がうまく回らない。
「はい、全て教えます。僕も、偽の母を殺さねばと思っていますので。あの子があなたたちの子だとは聞いています。気の毒だとは思っています」
「死なないためにやったことだ。しかたなかったんだろうとは思っている。だが理性と感情は別物だ」
自分でも驚くほど冷静で平坦な声が出た。
しかし胸の奥ではこの男に対する殺意が渦巻いている。
「あんたをこの爪で引き裂いて殺してやりたい。もし嘘をつかれたら次の瞬間には殺してしまうかもしれない。だから全て偽りなく話せ」
「もちろんです。警備の巡回路から変異体の数まで全て教えます」
素直に情報を話す吉岡の言葉を聞き、必要そうなことだけをメモしていく。
この手ではペンを持ちにくく、上手く書けない。
それでもできる限り書き留めていく。
「いつ突入するんでしょうか。そのときは僕も行って案内します。僕がやらなければいけないのです。僕には、その責任があるのです」
吉岡のにおいに変化はない。
少なくとも嘘をついているようには感じなかった。
あとはこの情報の精査をして、信用するかどうかを決めよう。
それから三日、毎日朝から晩まで駅ビル周辺を見張った。
吉岡から聞いた情報は正しかった。
警備の巡回経路、変異体が放たれるタイミング、確認できた変異体の数。そのどれもが、強化された五感を駆使して集めた情報とほぼ一致している。
嘘はついていない。
情報も正しい。
これなら、突入の際に吉岡に案内してもらえば、より確実に進められそうだ。
吉岡は確かに悪事に手を染めた。
しかし、それは強要されてのことだった。
今はそれを悔やみ、自ら責任を取ろうとしている。
一度の過ちで、人は一生悪人のままなのか?
我が子だから、美香との子だからと感情を優先させていないか?
同じ過ちを繰り返すな。
怒りに任せて決めつけるのはもうやめろ。
反省して一度冷静に考え直す。
そうすることを、これからは癖にしなければならない。
百貨店では、それぞれが駅ビルへの突入に向けて準備を進めていた。
奈津美たちは自衛隊員とマンツーマンで戦闘術を学んでいる。
大型のマチェーテを用いた戦闘で、刃の重さで変異体の肉を切り飛ばすことに特化しているらしい。
一朝一夕で完璧に身につくとは思わない。
それでもなにもしないよりは確実にいい。
少しでも生き残る可能性を上げるため、できることはやったほうがいい。
鈴鹿はマキシーンから銃の扱い方を教わっている。
射撃練習を見させてもらったが、マキシーンと鈴鹿が放った弾丸は、だいぶ離れた場所にいたゾンビの頭を正確に撃ち抜いていた。
俺が鉄パイプを切り投げ槍を作っていると美香がなにやらごつい弓を三人へと渡していた。
「やっぱり遠距離で質量あるほうがいいわよね」
張力は百七十五ポンドもあるらしく、一般男性でも引くのはは難しいほどだという。
しかし奈津美たち三人はそんな弓をものともせず、モンゴルの弓騎兵さながらの速さで次々と矢を放っていく。
矢じりには鋭いブレードが取り付けられている。
以前、手作り投げ槍のスコックを試したときに的として使ったクッションが、見るも無残な姿へと変わり果てていた。
俺の作っていたパイプ投げ槍よりも、こっちのほうが圧倒的に破壊力がある。
なんだか少しだけ悔しい気もするが、俺のメインウェポンはクジラ包丁と爪だ。
張り合ってもしかたない。
吉岡のいるテナントビルにはプロジェクターやパソコンがなかったため、ミシェルのトレーラーハウスでブリーフィングをすることになった。
限定的に俺たちの拠点へと入れられた吉岡は、ミシェルのトレーラーには珍しいものが多いらしく、きょろきょろと周囲を見回している。
ミシェルは平気で危ない薬なんかも出しっぱなしにしているから、そのあたりにも驚いているのかもしれない。
プロジェクターに駅ビルの館内地図が映し出される。
ミシェルのパソコンは未だにネットにつながっているらしく、この地図もネット経由で取得したものだという。
「一階はダメです。上から落とされた信者の変異体で埋めつくされています。数は五百を越えるでしょうか」
「五百……」
誰かが息を呑む音が聞こえた。
「なので地下の駐車場を抜けた先にある、物資搬入用の入り口を使います。この通路は警備も少なく変異体もほとんどいないはずです。ですが、ひとつ問題があります」
吉岡がパソコンを操作すると、プロジェクターに地下駐車場の写真が映し出された。
「ここです。このエレベーター。これは見せしめに変異させた信者を上階から落とし、排出するためのものです」
俺が偵察したときに見た、定期的に放出される変異体はこれだったようだ。
展望エレベーターのガラス張りのシャフトを、毎日決まった時間に変異体が落ちていく。
あれは変異体の廃棄ではなく、見せしめで落とされた人の末路だったのだ。
なんとも胸糞の悪い話だ。
「その地下には何体くらいの変異体が?」
「すみません、それはわかりません。ですので、危険かもしれませんがひとつ提案があります」
「ふむ、聞きましょう」
特殊作戦群に属する小池さんが吉岡の話を詳しく聞いていく。
俺なんかが聞いてもなにが正解なのか判断はできない。
餅は餅屋だ。きっと悪いことにはならない。
「ここでは侵入班と陽動班にわかれるのはどうでしょうか」
「なるほど。地下の変異体を一挙に引きつけ、その隙に搬入口から侵入しようと」
「はい。ただ、危険ではありますが」
「うむ、いい手ではないでしょうか。山下さん、どうでしょう? この作戦で行きますか?」
「え、あ、そうですね。小池さんのお墨付きなら大丈夫だと思います。ただその陽動班になる人をどう決めるか……」
「それは私たちが受け持ちましょう。斎藤、菊間、山口。寝なくても三日は戦えるな」
「はっ! 戦えます!」
「お望みとあらば、やってみせましょう」
「きついけど頑張りますよ」
なんとも頼もしい言葉だ。
「ワタシもヨードーするマス。中狭いですと銃撃つしにくいデス。音も出るしますカラネ」
「あ、じゃあ私も銃だしそっちのほうがいいのかな」
「No.スズカは中ヨ、キョーヘーとミカ守るするマス」
鈴鹿には極力銃を撃たないでもらい、いざというときに温存しておいてもらおう。
しかし五人だけで本当に陽動ができるのだろうか。
変異体に飲み込まれ、そのまま死んでしまったりはしないだろうか。
「小池さん、どうでしょう、メンバー的に足りますか? もしまだ危ないようでしたら、俺も──」
「山下さんはダメでしょう。あなたが迎えに行かないで、他に誰が行くというのですか。美香さんにすべて任せるつもりですか? あなたは父親でしょう」
「……すみません、よろしくお願いします。ですが危なくなったら逃げてください。自分の命を優先してください」
「ふふ、大丈夫ですよ。私たちはそんなに弱くはありませんので」
小池さんに深く頭を下げて感謝を伝える。
小池さん、斎藤さん、山口、菊間。自衛隊員の皆にはずっと助けてもらっているばかりだ。
この人たちになにかあったら、今度は俺が助ける。
なにがあっても、絶対に。
そう心に強く誓った。
ブリーフィングを終え、いよいよ出発のときだ。
百貨店の入り口には俺たちを見送るため、皆が集まっていた。
しばらく会えなくなる仲間たちと、それぞれ言葉を交わしている。
皆、いつもと変わらないように笑って話している。
けれどこの先に待ち受けるのは今までになく苛烈な世界だ。
次にここへ戻ってきたとき、全員が揃っている保証はどこにもない。
俺と同じことを皆も考えているのだろうか。
そう思うと、皆が無理やり明るく振る舞っているようにしか見えなかった。
「奈津美さん、明穂。ウチも行きたかったけど、足手まといになるかもだから。ごめん」
ウイルスに感染し、新戦力になった奈津美と明穂の元に、深冬と香織、直美がいた。
「すみません、なんの役にも立てませんで……」
「なんだよ、そんなこと気にすんなっての」
香織の肩へ奈津美が手を置く。
運送会社からの避難組はずっと仲がいい。
同じ地獄を味わった仲間意識というものからだろうか。
「そーそー。それに深冬のお腹には愛しの恭平さんの赤ちゃんがいるんでしょー? 安静にしてなきゃダメだよ」
「べ、べつに、愛しのってわけじゃ……」
明穂と深冬は、普段からこうしてからかったりじゃれあったりしている。
そのやり取りの端々から、二人の間にある確かな信頼が伝わってきた。
すねたような顔をしていた深冬から、ひと粒の涙がポロリとこぼれた。
そんな深冬を、明穂が優しく抱きしめる。
「だーいじょぶだって。私ら強くなったんだから。それに恭平さんも美香さんも一緒。悪いことにはなんないって」
「……うん、うん。絶対、帰ってきてよ。帰ってこなかったら、許さないから……」
「心配すんなよ深冬。あたしらには無敵の自衛隊のかたがたがついてるんだぜ。マジでやべえから。ねっ、小池さん!」
奈津美から声をかけられた小池さんは、静かに笑うと敬礼で返した。
「それに斎藤さんもいるしねー。ほら直美、斎藤さんに頑張ってって言ってみ」
明穂が悪い笑みをしてそう言った。
あれは誰かをからかうときの顔だ。
「あ、えっと、頑張ってください。生きて戻ってきてくださいね」
「はい!! 皆さんは、わ、私が! 必ず守りますので!! 死んでも戻ってまいります!」
「あの、死なないでくださいね?」
少し裏返った斎藤の声。
これは鈍感と言われる俺でもわかるぞ。
「しーちゃん、絶対に、絶対に無理しちゃダメだよ? すぐ調子に乗っちゃってケガしちゃうんだから」
「大丈夫ッスよ友里ちゃん。そんな人をドジっ子みたいに言わないでほしいッスよ?」
「しーちゃんはドジっ子だよ?」
詩織の元へは高校生組の友里、千恵、涼子がいた。
「それにいざとなれば陸上で鍛えたこの足で逃げるッスから。あ、おにーさん、逃げちゃっていいッスか?」
「自分の命を最優先だ」
「うッス。てことで友里ちゃん、安心して待っててほしいッス」
変異した詩織の足は、俺たちの中で三番目に速い。
一番は小池さん、二番は俺、そして三番目が詩織という驚異的な速さだ。
よほど足だけが重点的に変異した特殊個体でもなければ振りきれるだろう。
「詩織さん、あたし、なんの役にも立てないし、あの、恭平さんとの、子どもとか、欲しくて、戦えなくて……」
「大丈夫ッスよ、千恵ちゃん。自分に任せておくッス。千恵ちゃんの代りにぶっ飛ばしてきてやるッスから」
「はい……。頑張ってください。マジで応援してます」
千恵は後ろめたさがあるのか、暗い顔をしている。
怖くて戦えない、戦う力がない、そんなことを責める人間はこの拠点にはいない。
できることをやればいい。適材適所だ。
「いいですか、詩織さん。突破をしたいのならその機動力を生かすんです。振り飛車からの雀刺しを──」
「ごめん、ちょっとなに言ってるかわかんないッス、涼子ちゃん」
涼子が将棋の戦法に例えて詩織へ説明しようとしていた。
詩織にはまったく伝わっていないようだったが、大丈夫だ。俺にはわかるぞ。
不満そうな顔の涼子と目があった。
「俺が飛車で」
「詩織さんが香車」
大きく頷きあうと詩織が呆れたような顔をする。
「なんで通じ合うんスか……」
詩織とは将棋で通じ合った、強敵と書いて友と呼ぶような関係だからな。
帰ってきたらまた勝負するか。
そろそろ勝ち越したい。
「あ、マキシーン、あれ持ってったほうがいいんじゃない? バズーカみたいなの」
「Oh.Niceネ、ミシェル。忘れてるしてマスた。C4も持ってくマース」
「迫撃砲とかロケットランチャーとかもあったほうがいいんじゃないかしら? あとは、グレネードランチャーとか?」
「Whoops.Baseから持ってくるしてなかったヨ。今から取ってくるマスか。タンクあるかもデス」
「あそこヴァイパーとかヴェノムあったわよ。アパッチもあるかしら?」
「Hmm.キョーヘー、ワタシちょっととってくるするマス」
「今更だめだっつうの」
なんだその火力は。ビルを倒壊させる気か。やめろ。
ミシェルが楽しそうに笑っている。
あれはマキシーンが面白い反応をするからわざと煽っているのだろう。
「じゃ、たまちゃん留守番頼んだよ。恭平のことは私に任せといて」
「鈴鹿さんもお腹に赤ちゃんいるんだし、無理しちゃダメですよ。一緒に子育てする約束、絶対に破っちゃダメなんですからね」
「そうだね。たまちゃんの子どもと私のこどもは異母兄弟か姉妹になるんだもんね、仲良くしてくれるかな? あ、美香さんの子どもが一番上のお兄ちゃんかお姉ちゃんだね。その下に私たちのこども」
「絶対に仲良くなります。だから、お二人のこと、お子さんのこと、お願いしますね」
「任せといて!」
珠子と鈴鹿のやり取りに、目頭が熱くなった。
美香も俺も、こんなに思ってもらえて幸せものだ。
しかし、鈴鹿と珠子の胎に俺の子がいるのか……。
未だに実感はわかなかった。
美香の元には双子と花乃ちゃんがいた。
「美香さーん、やっぱぴえんできびついくない?」
「あーね。あたしだったらぴえん越えてぱおんだわ」
「はいはい。ぴえんでぱおんだけどかなり激おこだから全員ぶっ殺してくるわね」
「美香さんが激おこって言った! フー!! バイブス上げてこー!!」
「それな! ガンギマリでブチかませー!」
「ふふ、任せなさい」
美香が普通に双子と話していた。
最初に双子と会ったときは、宇宙人語にキレてビンタをしていた美香が。
いつの間にかこんなにも自然に会話できるようになっていた。
なんだか置いていかれたような、美香が遠くに行ってしまったような気がして、少しだけ寂しさを覚えた。
俺も宇宙人語、話せるようにならねば。マンジマンジ。
「お姉ちゃん、頑張ってね。もう死んじゃだめだよ」
「大丈夫よ。同じ轍は踏まないわ。花乃の甥か姪になる子、必ず連れ帰って見せるから」
「うん、信じてる」
そういう花乃ちゃんの胎にも俺の子がいる。
昔から知っている花乃ちゃんだからこそ、どうにも複雑な気持ちになる。
それでも、俺を選び、俺の子を産むと決めた女性たちに対し、俺には責任がある。
なあなあにせず、真摯に向き合っていかなければ。
「お兄さん、気をつけて行ってきてくださいね……」
菊間や山口と話していた優子ちゃんと恵理奈ちゃんが、俺のところに来た。
優子ちゃんは眉を八の字にして、とても悲しそうな顔をしている。
「優子ちゃん、大丈夫だから。そんな顔しないで」
「でも……」
安心させようと、頭に手をぽんと置く。
優子ちゃんは一瞬びくりとしたが、獣のものになった俺の腕の毛をもふもふと触りはじめた。
これにはアニマルセラピー的な効果がある。
双子を筆頭に、あらゆる女性たちがもふって満足そうにしていたので間違いない。
「恭平おにいちゃんと美香おねえちゃんの赤ちゃんがえきにいるんだよね?」
恵理奈ちゃんが見上げながら聞いてきたのでかがんで視線をあわせる。
最近じゃウイルスの影響なのか身長も伸び始めて困っている。
第何回目かの成長期のおかげで、身長は斎藤さんと同じくらいの二メートルだ。
恵理奈ちゃんは俺の腹くらいまでしか背がない。
立ったままだと、俺を見上げるだけで首が痛くなってしまいそうだ。
「うん、ちょっとお迎えに行ってくるね。意地悪な人たちに連れてかれちゃったみたいなんだ」
俺の言葉を聞いた恵理奈ちゃんが、眉を八の字にして、優子ちゃんとよく似た悲しそうな表情を浮かべた。
「赤ちゃん、かわいそうだよ。恵理奈もパパとママとはなれたときさみしかったもん。恭平おにいちゃんの赤ちゃんもさみしがってるよ。はやくいってあげて」
「そうだな……。はやく行かないとな。ありがとね、恵理奈ちゃん」
「うん!」
「お兄さん、行ってらっしゃい……」
「ああ、行ってくるね」
きっと俺と美香の子が俺たちを待っている。
なにがあろうと救い出す。
どうなろうと取り戻す。
絶対に、絶対に助ける。
そう決意すると体の奥から力が沸いてくるようだった。
「よし、皆、行こうか」
俺の言葉に全員が返事をくれた。
気合は十分、覚悟もある。
武器も用意した。情報もある。
あとは行くだけだ。
俺たちは駅ビルへ向けて、足を踏み出した。




