787 重いものをぶつけた方が強いドーンになるんだよ
「なるほど、考えたのぉ」
ペソラさんが言いだした、短い木をつないでおっきな丸太にする案。
それを聞いたロルフさんは、長いあごのお髭をなでながら感心したんだよ。
「その方法なら、かなり長い物も作れそうですわね」
「うむ。横からの衝撃には弱いが、今回はバリケードを壊すために使うものじゃからのぉ。形をもう少し工夫すればかなり有用じゃろう」
「えへへっ、そうですかぁ」
それにね、バーリマンさんもいい考えだって言ってくれたもんだから、ペソラさんはさっきから照れまくってるんだ。
そんな3人を見てたお父さんは、ロルフさんに聞いたんだよ。
「ルディーンが作るものは、この形でいいんですか?」
「うむ。悪くはないが、他の案もあるのであれば決めてしまうのはまだ早いかもしれぬな」
もしこれでドーンてしてもバリケードは壊れないかもしれないでしょ。
だからロルフさんは、もし他にいい考えがあれば教えてって言ったんだよ。
でもお父さんは、何にもいい考えが浮かばなかったからロルフさんに聞きに来たんだもん。
そう言われて困っちゃったんだよね。
「あのね、お父さんはどんなのを作ったらいいのか知らないんだって。だからロルフさんに聞こうと思ってきたんだよ。」
だから僕がロルフさんに教えてあげると、そう言えばそうじゃったって笑ったんだ。
「バリケードを打ち破るような兵器は、狩人であるグランリルの者たちからすれば縁遠いじゃろうからな。思いつかぬのも仕方なかろう」
「じゃあロルフさんは、なんかいい考えがあるの?」
「ん、わしか?」
ロルフさんはそうじゃなぁって言いながらちょっと考えると、どんなのがいいか教えてくれたんだ。
「わしが冒険者ギルドにルディーン君を推挙した時は、とにかく重いものを作ってもらってそれをぶつけてみてはと思ったのじゃよ」
「そう言えばギルマスも、大きなハンマーのようなものを作ってそれでぶっ叩くみたいなことを言っていたなぁ」
お父さんが思い出したようにそう言うと、ロルフさんはそれじゃダメだよって。
「人の持てる程度の大きさのものでは、スタンピートを押さえるために作ったバリケードが相手では意味をなさぬじゃろうな」
「でも、重たい物ってそれ以外ないんじゃないの?」
僕がそう聞くと、ロルフさんはいくらでもあるじゃないかって言うんだよ。
「例えば街を守る防護壁に使われておる石垣の石。あれなど、人が持てるハンマーなどとは比べ物にならないほど重いではないか」
「そうだけど、そんなの持てないじゃないか!」
僕が両手をあげながらそう言うと、ロルフさんは本当にそうかの? って笑うんだよ。
「カールフェルトさん。グランリルで獲れるブラウンボアと石垣に使われておる石、どちらが重いと思うかな?」
「ブラウンボアとか? そりゃあ、ブラウンボアだろう」
お父さんがそう答えると、ロルフさんは僕にほらねって。
「狩ったものを村に持ち帰っておるということは、人の手で持てるということではないか」
「あっ、そっか。魔法の道具で軽くすればいいんだね」
重いもんでも、軽くする魔道具を使えば簡単に運べるもん。
だから僕、おっきなのを軽くして使えばいいんだねって思ったんだよ。
でもね、
「ただ、軽くしてしまうとバリケードを突破することができなくなるがな」
ロルフさんがこんなこと言いだしたもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだ。
「軽くしたらダメなら、重いのを作ってもダメじゃないか!」
「何を言っておるのだ。だからこそ、君の魔法が必要なのではないか」
「僕の魔法?」
何のことだろう?
僕は解んなくって、頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらロルフさんが、ちゃんと教えてくれたんだ。
「ルディーン君はフロートボートの魔法を魔石に刻んで、それを使った馬車を作ったことがあるではないか。それを使えば、かなり大きな石でも軽々と動かすことができるとは思わぬか?」
そう言えば村でも、おっきな石の下にフロートボードを出してすーって動かしたことがあったっけ。
あれを使えば、ロルフさんの言う通りおっきな石をぶつけることができるかも。
僕はそう思ったんだけど、そこでお父さんがそれじゃダメなんじゃないかなぁって言いだしたんだ。
「さっき、岩を軽くしたらぶつけても意味は無いと言ったのはじいさんじゃないか。そのふろーとぼーどとかいう魔法で岩を浮かせても同じことなんじゃないか?」
「いやいや、それは違う。なぜならフロートボードは岩を浮かせているだけで、その質量は変わっておらぬからじゃ」
ロルフさんがそう教えてくれたんだけど、僕もお父さんもそれが何で軽くする魔道具と違うのか解んなかったんだよね。
だから頭をこてんって倒してたんだけど、そしたらロルフさんが笑いながら教えてくれたんだ。
「例えば同じ大きさの鉄の玉があるとして、その片方は中が空洞だった場合、ぶつけられたら衝撃が大きいのはどちらかな?」
「そりゃあ、中までしっかりと詰まっている鉄の玉の方だろう」
お父さんがそう答えると、ロルフさんは満足そうに頷きながらこう言ったんだよ。
「その通り。中が空洞の方が軽いのだから、当たった時の衝撃は小さい。だがこの場合、ルディーン君の使うフロートボードは簡単に動かせるようになっておるだけで、その重さは変わっておらぬじゃろう。質量が変わっておらぬのだから、ぶつかった時の衝撃もほとんど変わらぬのじゃよ」
輪っかが付いてて簡単に動かせる荷車でも、荷物をいっぱい載っけてるとぶつかった時にドーンってなるでしょ。
それとおんなじで、フロートボードに載っけててもおっきくて重い石だとぶつかった時にドーンってなるんだってさ。
「軽々と動かせる分、ぶつかった時の跳ね返りも大きいから同じとまではいわぬ。じゃが動かすのが容易な分、速さも加わるからのぉ。ぶつかった時、かなりの衝撃が加わるのは間違いないじゃろうな」
「なるほどなぁ」
ロルフさんのお話を聞いて、お父さんはすっごく感心してるんだよ。
でもね、そこでお母さんがこんなこと言いだしたんだ。
「理屈は解りました。でもそんな魔道具をどこから持ってきたのかという疑問が、冒険者たちから出るんじゃないですか?」
そこから僕が魔法を使えるって解ったら大変じゃないかって言うお母さん。
でもね、ロルフさんはその心配はないよって笑うんだ。
「岩を浮かすフロートボードの魔法は、この街にも使える者がたくさんおるからのぉ。その魔法だけで、術者を探ろうなどと考えるものはおるまいて」
「でも、それならルディーンじゃなくてもいいのではないですか?」
お母さんはね、ちっちゃな僕が行かなくても他の人でいいじゃないかって言うんだよ。
でもロルフさんは、それは違うよって。
「確かにフロートボードを使える者が多い。しかしフロートボードの魔法を魔石に刻んだことのある者はほとんどおらぬのだ。この差は大きいが、その違いを知るものは魔法に精通しておる者だけ。それ故にルディーン君が適任であるにもかかわらず、現場にいる冒険者たちにその出所を怪しまれる心配がないのじゃよ」
ロルフさんはそう言った後、長いあごのお髭を一なで。
「そしてもう一つ、ルディーン君でなければならぬ理由があるのじゃ」
「その理由って」
お母さんが真剣なお顔で聞くと、ロルフさんはニカッて笑ってこう言ったんだ。
「砂や土から岩を作ったり鉄を加工したり、その上木まで加工できるクリエイト魔法を使える魔法使いなどわしでもルディーン君くらいしか知らぬ。そうでなければ流石にルディーン君を推挙などせぬわ」
そう言えば、クリエイト魔法は形を変えるものをよく知って無いと使えないんだっけ。
ペソラさんが言ってた木を何個か繋げたのも、ロルフさんが言ってたおっきな石も、バリケードをどーんてする道具はクリエイト魔法じゃないと作れないでしょ。
僕がいなかったら作れないものばっかりだから、もしいなかったらゴブリンの村のバリケードを壊すのはすっごく大変だったろうなぁってロルフさんは笑ったんだ。




