788 ドーンとするとすっごい力がかかるから、うまくつながないと壊れちゃうんだって
僕が魔法でバリケードをドーンてするのを作ることになったでしょ。
でもどんなのを作ったらいいのか、お話を聞いても形がよく解んなかったんだ。
そのことをみんなに話すと、ロルフさんがこう言ったんだよ。
「それならば実際に絵に描いてみればよいではないか」
「そうですわね。それでは石筆と黒石板を出しますわ」
バーリマンさんがカウンターの裏から出してきたのはおっきめの黒い石の板と白い棒。
「これ、なに?」
「ほら、この白い棒で黒い石の板をなぞると」
そう言ってバーリマンさんが石の上に白い棒を載せて横にすーって動かすと、そこに白い線が出てきたんだ。
「あっ、僕これどっかで見たことある」
「前にルルモアさんが貸してくれた石筆板ね」
そうだ! これって書いたのをおててや布で拭くと簡単に消せて、何度も使える不思議な板だよね。
「これを使えば、伯爵やペソラが考えたものを絵にして確認することができるでしょ」
そう言って笑うバーリマンさんは、その黒い板と白い棒をロルフさんに渡したんだ。
「まずはペソラ嬢が考えた、繋げて使う破城槌じゃな」
「はじょつい?」
「はじょ”う”つい、要はバリケードにぶつける丸太じゃよ」
ロルフさんはそう教えてくれるとね、黒い石の板にサラサラって絵を描いて行ったんだ。
「コップを重ねたものを見せたということは、ペソラ嬢はこういう形のものを想像したのではないか?」
「はい。先を尖らせて後ろに穴を空けたものを作ればつながると思ったんです」
ロルフさんが描いたのは、お尻に穴の開いてる短くて先が丸くとがった棒なんだよ。
それを見たペソラさんは、その穴に尖ったのを入れたら棒になりますよねって言ったんだけど……。
「ふむ。しかし、残念ながらこれでは役に立たぬ」
「えー、何でですか?」
「よほどしっかりと噛みあうものでなければ、衝突した時に結合部分が衝撃を吸収してしまうからじゃよ」
お尻の穴のところに丸い尖ったとこを入れると、ペソラさんの言う通り棒にはなるんだよ。
でも尖ったとこと穴にちょびっとでも隙間があったら、ドーンてした時にそこがグッて締まるからその分力が逃げちゃうんだって。
「それに木の先が穴より少しでも大きかった場合、そこから裂けてしまう可能性もある。そんなことになれば、この破城槌を使っておる者も危険になるであろうな」
「それじゃあ、これは使えないってことですか?」
「いや、そうは言っておらぬ。形を工夫すべきだとは思うがな」
ロルフさんはそう言うと、またなんかを描きだしたんだよ。
「これもそのままでは使えぬが、こういう形にすれば少しはましになるのではないかな」
そう言ってロルフさんが見せてくれたのは、先っぽを平らにしてその真ん中から細い丸棒が出てる絵。
この形なら細い丸棒が入る穴をお尻に開ければ繋がるし、先っぽが平らだからドーンてぶつけた時もお尻の平らなところにあたって力が逃げないんだって。
「ただこの形じゃと連結部分が弱いから、バリケード相手に使うとなるとあてた時に壊れてしまうかもしれぬがな」
「そっか。ほっそい棒だと簡単に折れちゃうもんね」
まっすぐドーンてできればいいけど、柵みたいな形をしてるバリケードだと変な風に当たっちゃうかもしれないでしょ。
そしたら丸太にも変な風に力がかかるから、繋ぐとこに使ってる細い棒が折れちゃうかもしれないんだって。
「じゃあ、これもダメなんだね」
僕がそう言うと、お父さんが頭をこてんって倒しながらそうかなぁって言うんだよ。
「木の棒で作ろうと考えると折れる心配があるけど、その部品を鉄の棒に変えたら簡単に折れなくなるんじゃないか?」
「そっか! 鉄の棒だったらドーンってしても折れないかも」
鉄はすっごく硬いもん!
だからお父さんの言う通り、鉄を使ったら大丈夫なんじゃないかなって思ったんだよ。
でもね、ロルフさんはそれはどうかなぁって頭をこてんって倒したんだ。
「確かに鉄は硬いが、冒険者たちが振るう剣はよく折れると聞く。それを芯に使ったとて木製の物と大差ないのではないか?」
「ん? ああ、爺さんが言っているのは鋳造した安物の剣の話だな。鋳物ではなく、鋼を使えばそう簡単に折れたりはしないぞ」
やっすい剣は、溶かした鉄を型に流して固めたのを磨いて作るんだって。
だから簡単に折れちゃうけど、鋼は職人さんがカンカンして作るでしょ。
その時中に入ってるいらないものが出てったり、鉄がぎゅっと締まったりするからそう簡単に折れちゃったりしないんだってさ。
「なるほど、鋼か。しかし必要な分の丸棒をそろえようと考えると、かなりの時間がかかるのではないか?」
「いやいや、イーノックカウほど大きな街なら鍛冶屋も多いだろうから、鋼のインゴットくらいは持ってるだろ」
お父さんがそう言うとね、ロルフさんは何を言ってるの? ってお顔になったんだよ。
「いや、そのインゴットを丸棒にするのに時間がかかると……」
と、そこまで言ったところでロルフさんはおててをパンってならしたんだ。
「おお、そうじゃった。ルディーン君は、鋼の形も変えられるのじゃったな」
「うん。僕ね、いっつも鋼の玉でいろんなのを作ってるから、どんな形でも簡単に作れちゃうんだよ」
僕が腰に手を当ててエッヘンってすると、ロルフさんはニコニコしながらそうじゃったそうじゃったって。
「ふむ。一番の難題が解決したのじゃから、あとはどのようなパーツを作るのかを考えるだけじゃな」
その後ロルフさんはまた黒い石の板に向かってああでもないこうでもないって言いながら、何かを描きはじめちゃったんだ。




