786 バリケードを壊す武器を作るの、思ったより大変かも
お母さんに、ゴブリンをやっつけに行っちゃダメって言われてちょっぴりしょんぼり。
でもゴブリンをやっつける武器は作ってもいいって言われたでしょ。
だからそっちで頑張ろうって、僕はふんすと気合を入れたんだ。
「お父さん。僕、どんなのを作ればいいの?」
「そうだなぁ。ギルマスの爺さんも言っていたが、車輪の付いた大きな丸太のようなものを作ったらいいんじゃないか?」
お父さんはそう言いながら、左の手のひらに右手のグーをドーンって当てるような仕草をしておっきな丸太の使い方を見せてくれたんだよ。
でもね、それを見た僕は頭をこてんって倒したんだ。
「ゴブリンの村があるのって森の中にある洞窟なんだよね?」
「ああ、そうだが。それがどうかしたのか?」
「あのね、森の中にあるなら根っこがあったり、道と違っておっきなデコボコがあったりするんでしょ。それだと輪っかがあってもまっすぐ行かないんじゃないかなぁ」
冒険者ギルドでお爺さんが話してた時から思ってたんだけど、道みたいに平らになってるとこじゃないと輪っかの付いたのを転がしても絶対曲がっちゃうと思うんだ。
お父さんやギルドマスターのお爺さんが言ってるおっきな丸太は、入口のところにあるのをバーンてするのに使うんでしょ。
なら輪っかを付けたりしたら、逆に使いにくくなっちゃうんじゃないかなぁ。
「言われてみると、その通りだな」
「ハンス。それにその車輪を付けた丸太は別の場所でルディーンが作るんでしょ。それを集落前までどうやって運ぶつもりなの?」
重い上にじゃまな車輪までついていて、本当に運べるのかしらって頭をこてんって倒すお母さん。
そう言えばお兄ちゃんたちも、他からおっきな丸太を持ってくのは大変だって言ってたもん。
それなら輪っかの付いた丸太はダメなんじゃないかな。
「そうか。となるとあまり大きなものはダメってことか」
お父さんはね、僕が作ったものをゴブリンの村まで運ぶことは全然考えてなかったみたい。
だからどんなのを作ったらいいのか、解んなくなっちゃったんだって。
「攻城兵器のことなんてまるで知らないからなぁ。そんな俺がいくら考えても、いい考えなんか浮かばないんじゃないか?」
「それじゃあ、ギルドマスターのお爺さんに聞くの?」
「いや、車輪の付いた丸太は元々、ギルマスの爺さんが言いだしたことだろ。ってことは、冒険者ギルド側もそれほどいい案は持っていないんじゃないか?」
そういえばそっか。
あとは力持ちの人が振り回すおっきな武器を作るとか言ってたけど、丸太でドーンてやらないとダメなとこなんでしょ。
おっきなハンマーとかを作っても、そんなんじゃいっぱいどんどんしても壊れないんじゃないかな?
「冒険者ギルドに聞きに行ってもダメかも」
「ルディーンもそう思うか」
お父さんはそう言うとね、腕を組みながらう~んって上を向いちゃったんだ。
「何を作ったらいいのかを知ってる人、誰かいないの?」
だから僕、お父さんにそう聞いたんだよ。
そしたら別のところから答えが返ってきたんだ。
「元々の発案者に聞いてみたらいいんじゃないかな?」
「テオドル兄ちゃん。元々のって誰のこと?」
「ロルフさんだよ。ギルドマスターが言ってたじゃないか。ロルフさんから、ルディーンに魔法で手伝ってもらえばいいと言われたって」
そう言えばギルドマスターのお爺さんがそんなこと言ってたっけ。
「なるほど。助言をしたってことは、それなりの案があるってことだからな」
「お父さん。明日になったら錬金術ギルドに聞きに行こうよ」
ロルフさん、いっつも錬金術ギルドにいるもん。
だから明日みんなで聞きに行こうよって言ったら、お父さんはそうだなって大きく頷いたんだよ。
「冒険者ギルドだってバリケードを突破する武器を作る資材をすぐに用意できるわけじゃないだろうからな。準備ができるまでの間に聞いておいた方がいいだろう」
ってことで次の日の朝、僕たちはロルフさんに会いに錬金術ギルドに向かったんだ。
カランカラン
「こんにちわ! ロルフさん、いる?」
「あら、ルディーン君。いらっしゃい。まだ来てないけど、今日も来るはずよ」
そう答えてくれたのは、いつもロルフさんが座ってるとこにいたペソラさん。
そう言えば錬金術ギルドの受付って、ホントはペソラさんがいるとこだったね。
いっつもロルフさんが座ってるもんだから僕、忘れちゃってたよ。
「そうか。じゃあ、少しの間待たせてもらってもいいか?」
「あっ、今日はご両親と……それにお兄さんたちもいっしょなのね」
「うん。お姉ちゃんたちも来ない? って聞いたんだけど、お店見に行くからヤダって言われちゃったんだ」
お姉ちゃんたち、ゴブリンの村をやっつけに行かないでしょ。
だからほんとは僕たちと一緒に来たそうだったニコラさんたちを連れて、かわいいものが売ってるお店に出かけちゃったんだ。
「それで、今日は皆さんでロルフさんにどんな御用なんですか?」
「あのね。ゴブリンの村にあるばりけーど? ってやつを壊すのに、どんなのを作ったらいいのか聞きに来たんだよ」
「はぁ。バリケードですか」
僕は森の中にあるゴブリンの村におっきなのは持ってけないから、どんなのを作ったらいいのか解んなかっただよって教えてあげたんだ。
そしたらペソラさんは、不思議そうなお顔でこう聞いてきたんだよね。
「バラバラにしたものを持って行って、そこで組み立てちゃダメなんですか?」
「ダメだよ。バラバラのだと、ドーンてした時に壊れっちゃうじゃないか!」
入り口をふさいでるのをドーンて壊さないとダメなんだから、簡単にくっつけたもんだとぶつけた時に耐えられなくてバラバラに壊れちゃうでしょ。
だからそんなのダメだよって言ったんだけど、そしたらペソラさんはそんなことないですよって笑ったんだ。
「そうだなぁ。例えばこのコップだけど、こんな風に重ねたら」
そう言って木のコップを何個か重ねたペソラさんは、それを僕の前に置いてこう言ったんだよ。
「ほら、ちょっとゆすったくらいじゃ外れないでしょ。それにこれをもっと丈夫なもので作ったら上からハンマーで叩いたとしてもバラバラになったりしないじゃないですか」
「ほんとだ! ペソラさん、頭いい!」
職人さんが木を掘ったりして作るのなら大変だけど、僕は魔法で形を変えられるでしょ。
だからこんな風に重ねられるようにしてけば、ばらばらに持ってってもバリケードにドーンってできるおっきな丸太が作れちゃうかも。
「お父さん。ロルフさんに聞かなくっても、ドーンてできる武器、作れちゃうかもしれないよ」
「ああ、そうだな」
そう言って僕とお父さんがよかってねって笑ってると、
カランカラン
「おや、今日は大盛況じゃな」
錬金術ギルドのドアを開けて、ロルフさんとバーリマンさんが一緒に入って来たんだ。




