3.そうだ!!こいつを人質にしてここを切り抜けよう
下種が考えそうな手段である……けど、それがこのざまぁである。
ちなみに、妹ちゃんも巻き添えダメージ食らってるから、割と元ネタに忠実だったりもする(ぇ
「ここだ!伊豆木さんが居たぞ!!」
開けたのは、桜宮小のキャプテン翔太と、数人の野球部員たちだった。驚いたことに、彼らの中には相手チーム・西山小のキャプテン他数名も混ざっていた。
「な、なんだお前ら?!」
男はナイフを構えつつも後ずさりした。目が泳ぎ、動揺しながらもこの状況をどう切り抜けるか──男の頭の中で必死の計算が働いた。
その時、男の視界に縛られたまま唖然としてる優華が入ってピンっときた。
(そうだ!!こいつを人質にしてここを切り抜けよう)
男は迷う事なく優華へと手を伸ばし、それを見た翔太がとっさにグラブを投げる。
バシッ!!
グラブは今まさに優華を引き寄せようとしていた手を弾き飛ばした。
また、優華も黙ったまま捕まれる気はなかったらしく、その手を頭突きで迎撃しようと身構えていた。
目標としていた手は弾かれた事でなくなったけど、代わりにがら空きとなってる鳩尾が目に入り……優華は目をキランっと輝かせながら「そこだ!!」っとばかりに頭突きを叩き込んだ。
ドゴン!!
全体重を乗せての勢いつけた頭突きは男の鳩尾……ではなく股間。身長差等もあって狙いが大きくずれ、見事に男の股間を直撃。その後は勢いをつけ過ぎた事で床にどすんっと身体を強か打ち付ける反動ダメージを負った。対して男の方はというと、一瞬固まった後……
「――――ッッ!!!?」
声にならない悲鳴をあげ、ナイフを落とし、両手で急所を押さえながらその場にうずくまった。顔は真っ青で、目を見開き、苦悶の表情を浮かべはじめる。
「ふぁれぁ~?(あるぇ~?)」
優華としては、股間ではなく鳩尾に頭突きしたつもりだったので、男の予想以上の悶絶ぶりに唖然としていた。
頭突きと倒れた拍子でスカートが大きく捲り上げられてアンスコがモロにみえているのだが、周囲の少年たちは同世代のチアガール少女のスカートの中ではなく、悶絶している男に釘付けだった。男にしかわからない地獄の痛みを味わっている……一部の男にとってはご褒美なのかもしれない……男につい同情の視線を送っていたが、それでも相手は卑怯な誘拐犯。
「と、取り押さえるぞ!」
西山小のキャプテンの号令で西山小の部員達が男を取り押さえた。
「い、伊豆木さん。とりあえず……縄を解こうか」
男を西山小の面々に任せた翔太が、優華のそばに駆け寄った。彼は少し赤面しながらめくれてるスカートを戻し、上体を起こさせてから彼女の後ろ手を縛っている縄の結び目を解き始める。
両手が自由になり、猿轡も外された優華は、両手を摩りながら「ぷはっ」と息をついた。
「ふぅ、ありがとう、大原くん。それより……アレ、大丈夫なの……かな?」
優華は、自分の頭突きが男の急所を直撃させた事を知らない。知らないけど、あの悶絶ぶりから相当に当たり所が悪かったのだと思い、少々の罪悪感が芽生えていた。
その疑問に翔太とその他大勢の桜宮小の面々は「気、気にしなくていい」と、複雑な心境ながらも優華を気遣ってか真実を告げなかった。
優華の周囲になんとも言えない沈黙が続く中、男を連れ出す指示を出し終えた西山小のキャプテンがやってきて、優華に向かって頭を下げた。
「すまない。これは全部、うちの監督のせいだったんだ……」
———
西山小のキャプテンの説明によると、七回に飛びぬけた野球センスを持つ翔太への敬遠の指示を無視しての真っ向勝負を仕掛けた彼の行動に西山小の監督は危機感を覚えたようだ。
桜宮小に負ける可能性を恐れ、裏では万が一のために卑劣な計画。コーチの一人に桜宮小の誰かを誘拐し、人質にして負けるよう脅迫するよう指示を出していたのだ。
実行役のコーチは手ごろな者が居ないか探していたところ、六回裏が終ってすぐの時に一人でトイレへと向かう優華が目に入った事もあり、彼女をターゲットとした。
誘拐は成功し、西山小の監督は桜宮小側に脅迫を開始。倉庫らしき所で縛られてる優華の画像が送られて来た事もあって、桜宮小の山田監督は優華の安全を優先。部員達に事情を話して負けるように指示を出した。
しかし、八回までの桜宮小の面々は「絶対に勝つ!!」といわんばかりな気迫が満ち溢れていたのに、最終回ではいきなり抜け殻のように腑抜けたのだ。それで西山小のキャプテンが「真面目にやれ」っと抗議した。
だが、西山小の監督が「相手はやる気がないんだから、そのまま勝て」と言い出したのだ。
その言葉に、キャプテンは我慢できずに反論した。
「監督、そんな勝ち方でいいんですか?あの桜宮小は、弱小なのに必死の粘りで俺達に食らいついてきたんですよ!!」
他部員達も、強豪だからこそのプライド。野球に関しては真摯に向き合ってきただけあって、桜宮小を認めていた。認めていたからこそ、あの執念染みた気迫を……勝利への執念を真正面から打ち破りたかった事もあって、キャプテン側についた。
討論はヒートアップし、その拍子に監督が「人質作戦をとった」と暴露。
それは事態を収拾つけさせようと近づいていた主審の耳にも届き……状況を察した主審は即座に監督をぶん殴った。
主審はかつて西山小のキャプテンとして全国優勝まで導いた事もあるOBであり、自分達の世代で築き上げた西山小の誇りを汚した監督が許せなかったようだ。
「この卑怯者めが!全てを吐け!!吐かないというなら、背中毛の刑にしてやるぞ!!」
殴った後は鬼のような形相で詰め寄り、監督は観念して全てげろった。
主審は警察に連絡し、部員達は敵も味方も関係なく優華救出に向かうことになり、先ほどの流れに繋がったわけである。
『おまわりさんこっちです』
っと言いたいけど、この場合は『もしもしポリスメン?』の方が似合ってるかも?




