東京武道大学応援団
『ど正論ヒーロー セイロンガー』のスピンオフ作品。
真由美とセイロンガーの登下校を中心に日常を描きます。
セイロンガー本編はこちらから
ど正論ヒーロー セイロンガー
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黒い服の集団、それはいつものイーイーうるさい人たちじゃなくて学ランを着ていました。
真ん中の人だけは黒い羽織袴に下駄を履いています。髭面で体格が良さそうです。その人を先頭に、横には学ランの人が2人ずつ並んで、道を塞ぐようにゆっくりと歩いてきます。
でも……人だから、大丈夫だよね。怪人さんとかじゃないから。セイロンさんは普通の人には手出ししません!
私たちは道の端を歩いていきます。だけど、向こうは避ける気配がありません。
セイロンさんが歩みを止めて静かに言います。
「道を開けてくれるかな?」
真ん中の羽織袴の人が立ち止まって左隣の人に声をかけます。
「副団長!」
すると左隣の人が一歩前へ出て後ろで腕を組み胸を張りました。な、何が始まるの?
「押ーー忍っ! わーれっわーれぇ〜はぁ〜! 東ぅー京ぅ〜武っ道ぅ〜大学ぅーーッ! えぇーいっこぉーあぁる〜応っ援っ団っ! わぁーたっくっしぃはぁー! 副っ団長ぉーをつーとめさせてぇーいっただいてぇ、おりまーすぅ……」
応援団……変な抑揚だし、大きな声だなぁ。でも私、これはまずいと思うんだ。ほら、ウチの塀の上にシャドウズさんが待機を始めたし、そろそろ……。
ガラガラッ
来た。見ないでもわかる、お母さんだ。
黒い影が凄い勢いで副団長さんの前へ。
裸足で、すでに両手にサンダルを持っています。
副団長さんはお母さんと目を合わせずに胸を張って虚空を見つめています。セイロンさんは止めても無駄だと思っているのでしょう、静観しています。
「……」
「わぁーたっくっし……!」
スパンッスパンッスッパァーーン!
ブチッブチブチブチブチ……カランコロンカラーン
パカッ
シャッシャッシャッシャーーシャッシャッ……
「じゃあ、セイロンさん、真由美ちゃん。気をつけて行ってらっしゃい!」
お母さんは何事も無かったように、サンダルを履きながら戻っていきました。
副団長さん、両頬は真っ赤になり、学ランのボタンが取れて、無惨にも地面に散らばっています。
そして、インナーの白地のTシャツには大きくマジックペンでこう書いてあります。
『五月蝿い』
「くくっ、見事な早業だ、真佐江さん……」
セイロンさんが口を手で押さえて笑いを堪えています。
「真由美さん、気づいたかな? 真佐江さんのサンダルが樹脂製の穴あきサンダルであったこと」
あっ、たしかに前に虎の怪人さんにサンダルアタックした時は裏が木製だった。わざわざ、柔らかい素材のサンダルに履き替えた……?
「副団長、ボタンを拾え。学章ボタンは我らの誇りだ」
「押忍……」
Tシャツを引っ張って、書かれた文字を見ながら「ごがつ、ばえい……」と呟いていた副団長さんは急いで辺りに散らばったボタンを拾いました。
この人「うるさい」って読めないんだ……。
団長さんは腕を組み大股を開いたまま、心なしか小さくなった声で言いました。
「本来であれば、副団長挨拶から団長紹介、そして東京武道大名物長ネギ音頭に繋がるのだが、今回は割愛させてもらう」
「そうか、それは助かる。では、急いでいるのでそろそろ道を開けてくれるかな?」
「最近、朝と夕方、珍妙な覆面を被りスーツ姿のサラリーマンが女子高生を連れ回しているという情報があるが、それはあんたか?」
セイロンさんを珍妙だなんて、失礼極まりないよ! どこからどう見ても素敵な紳士じゃない!
「珍妙な覆面を被ったサラリーマンとは、俺のことか?」
「あんた以外で見たことあるか? 覆面を被ったサラリーマン」
「……無い。だが、大学の応援団にどうこう言われる筋合いも無いと思うが?」
「我々は自警団として大学周辺をパトロールしているのだ。最近、怪人の目撃例も増えている」
「そうか、それはご苦労様だな。そうだ、ちょうどいい、あの怪人を退治してもらおう」
えっ、怪人? 後ろを振り向き、セイロンさんが指差した方を見ると、電柱の上にタコの怪人さんがヌメヌメと絡みついていました。
名前なんだっけ、あ、セイロンさんに80万円借金しているタコ怪人キューバンさんだ!




