野生のおじさんがセイロンさんに出会った
『ど正論ヒーロー セイロンガー』のスピンオフ作品。
真由美とセイロンガーの登下校を中心に日常を描きます。
セイロンガー本編はこちらから
ど正論ヒーロー セイロンガー
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真由美です!
野生の動物みたいなおじさんが、たばこの煙を残して通り過ぎていきました。護衛のナインさん、まだ緊張が抜けてないようです。
「真由美お嬢様、別冊マリーゴールドは私が買ってくるので、自宅に戻っていてくれますか?」
「え!? でも少女マンガ雑誌ですよ?」
「大丈夫です。自分は子供の頃、3つ上の姉貴に『せぼん』とかを買いに行かされてたので」
『せぼん』は小中学生が大好きな可愛い少女マンガ雑誌です。私も前は毎月買っていました。
「でも、どうして……」
「あの男、私の予想が外れてなければ危険な男です。VVEIに加入すれば大きな脅威となるでしょう。それに、あちらの方向は……」
「セイロンさんのマンション!」
日曜日だからセイロンさんはお出掛けしているか、お家でリラックスしているはず。だから野生のおじさんと遭遇はしないはず……って、いたーー!
遠目に見てもわかるあの長身に赤いヒーローマスク。薄緑色の作業着と揃いのキャップを被っているけど、間違いない。セイロンさんだ!
ちりとりと箒を手にマンション周りの清掃中なんだ。今日、日曜日ですよ? ゆっくりして下さいセイロンさん。
ナインさんは足音を立てずに野生のおじさんの後を追い、私もこっそり後ろに続きます!
「あの、お嬢様。なんで付いて来ちゃいました?」
もうバレちゃった。
「それよりナインさん、ほら。おじさんがセイロンさんに向かっていきますよ?」
⸻
野生のおじさんが清掃中のセイロンさんに声を掛けました。
「あんちゃん、掃除ご苦労さん。ちょいと聞きてぇんだが」
「何でしょう」
「お、流行ってんのか? それ」
「それ、とは」
「お面だよ。さっきのあんちゃんも被ってたからよ」
「……流行っているという話は聞かないが。それで、聞きたい事とは?」
「あぁ、VVEIってぇ会社に行きてぇんだが、知ってるかい?」
「……よく知っているが、ここからだと車で20分ほどかかるが? 一体何を頼りにここまで来たんだ?」
「……勘だ」
「迷ったんだな? 今、地図を書いてきてやるから待っていろ」
マンションに入ったセイロンさん。しばらくしてメモを持って戻ってきました。相手が誰だろうと優しいセイロンさんです。
「ここを真っ直ぐ行くと大通りに出る。そこでタクシーでも拾って行くといい」
「タクシーか。今、金がねぇから、歩いていくわ」
「ちょっと待て。見たところ、若くもないようだし無理をするな。……これだけあれば足りるだろう」
セイロンさんはポケットからいくらかわからないけど、お札らしきものを渡しました。前もイカの怪人さんにお金あげたりしていたっけ。
「お、悪いなあんちゃん」
「その金でパチンコ屋に入るなよ?」
「……何でわかった?」
「勘だ」
「ちっ、おきゃあがれ」
そう言って野生のおじさんは大通りに向かって歩いて行きました。また何か歌いながら。
ナインさんと私はセイロンさんに挨拶して、何でお金まで渡してまで行かせたのか尋ねると、こう言いました。
「別に。赤の他人がどこで働こうが構わない。それにあのおっさん、強そうだが悪党って感じでもなかった」
その後、ナインさんが言うにはセイロンさんとおじさんの会話中、一触即発のとんでもない緊張感があったそうです。私には全然わかりませんでしたけど。
あ、そうそう。最後におじさんが言った『おきゃあがれ』の意味がわからなかったので、お父さんに聞いたら江戸言葉で『やめろ』とか『いいかげんにしろ』って意味だそうです。勉強になりました!




